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狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 第三章 狂犬病発生時の措置(届出義務)第八条

今のではなく、昭和25年に出来た時の狂犬病予防法を読み続けています。

狂犬病発生時の措置としての「届出義務」。狂犬病の犬(疑いがるものも含む、それらの死体も含む)と診断または検案したら届け出なければならない。その届出あった場合、行政はまず何をすべきかが書かれています。
 


(※條を条に直したり、当時の文字と違う書き方をしています)

第三章 狂犬病発生時の措置
(届出義務)
第八条 狂犬病にかかつた犬若しくは狂犬病にかかつた疑いのある犬又はこれらの犬に犬にかまれた犬については、これを診断し、又はその死体を検案した獣医師は、厚生省令の定めるところにより、直ちに、その犬の所在地を管轄する市町村長にその旨を届け出なければならない。但し、獣医師の診断又は検案を受けない場合においては、その犬の所有者がこれをしなければならない。
2 市町村長は、前項の届出があつたときは、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生大臣に報告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない。

国立公文書館デジタルアーカイブ 狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号


概要

・狂犬病はまず予防。それでも発生してしまった場合、出来るだけ早く撲滅を目指します。そのために狂犬病である、またはその疑いのある犬を診断または検案した場合は届ける義務がある。
・その届が出されたら、市町村長は都道府県知事に報告
都道府県知事は厚生大臣に報告し、近隣都道府県知事に通報

診断と検案(一般向け)

生きている場合「診断」、死後は「検案」。
「診断」の実情ですが、狂犬病であるかの検査方法は後ろの方に書きますが、現在でさえ(犬の場合)症状が出る前の臨床診断は難しいし、症状が出た犬に触れるリスクはとても大きいので、診断は(狂犬病の犬に噛まれたなどの)状況や症状によるものになりそうです。

現在の検査方法に付いて、ネットで検索をしてみました。
専門的なものもありましたが(飼い主向けではないので)それは文末に参考程度に書きます(※読まないことをお勧めします)。

現在の話として(一般向けの資料として)まず以下のページをご覧ください。
「診断」の項目に「発症前に狂犬病の感染を診断できる検査法はありません」と書かれています。
狂犬病について(ファクトシート)@ FORTH|厚生労働省検疫所
このページでは、続けて「恐水症状や恐風症状のような狂犬病に特有の症状が出現するまでは、臨床診断が困難です」とあります。
他にもネットで「狂犬病の検査」などで検索をかけると、何度か「観察の継続又は病性鑑定のための致死処分」というフレーズを目にします。

現状でさえこうなのですから(何かつけて人間の方が医療が進んでいることを考えると)当時は症状から判断していたはずです。
検案は可能だったと思いますが(時間がかかるので)、迅速な感染拡大阻止を考えると、獣医師や飼い主が症状から判断し、届出を出し、行政が動く必要があるはずです(それは現在も同じ)。

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現在の人間の話
になりますが、以下のページの「病原診断」という項目を「生前診断として…」と「死後の診断として…」を分けて読んでいただきたい。
狂犬病とは @ 国立感染症研究所, 感染研, NIID
現在の人間の場合でも、生前の診断は(その人の診断よりも)「接触した動物の脳材料の検査が重要である」と書かれています。その前に(生前診断は)「診断的価値は低い」とも書かれています。
このページの中にも書かれていますが感染の可能性がある場合は(検査結果を待つよりも)「狂犬病ワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリンを投与」することになる(日本では「抗狂犬病ガンマグロブリン」は承認されていない)。これ以上のことは何も出来ないので検査結果の意味は低い(検査結果を待つよりも暴露後予防(PEP=post exposure prophylaxis)接種を行うことで致死を回避できることが確実になる。
昔は暴露後予防ワクチンによる後遺症の問題があったと聞いたことがあるが、最近では改善されたのではないでしょうか。
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届出は誰がする?

診断または検案した獣医師。但し、それらを受けていない場合は所有者。
所有者が届出るのは、どの様なケースなのか考えてみた。状況から考える場合だと思われる。
犬が家族を噛んだ ~ 犬は狂犬病の症状になり死んだ ~ 噛まれた家族が狂犬病の症状で亡くなり検案で狂犬病とされた。
以上、素人の私が考えてみました。
   

-- 以下、一般向けではありません --

検査方法(専門的な内容)

先に書きましたが、具体的な検査方法が書かれたガイドラインを紹介します。
専門的でページ数も多いですし、ショッキングな内容もあるので一般的な飼い主には必要のない知識なので読まないことをお勧めします

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狂犬病対応ガイドライン2013
-日本国内において狂犬病を発症した犬が認められた場合の危機管理対応-(狂犬病対応ガイドライン2001 追補版)

@ 厚生労働省
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この中の Ⅴ.狂犬病発症犬等との接触犬への対応(目次上=ページヘッダーに記されているページ数は21ページ、PDFの24ページ)に国内発症犬が発見された場合、どの範囲まで隔離するべきかを考える上での参考になる考えが書かれている(図があり分かり易い)。
元となるガイドラインは以下ですが「確定診断のための検査方法」等は興味本位でご覧にならないでください
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狂犬病対応ガイドライン2001
―狂犬病発生の疑いがある場合の対応手引書―

@ 厚生労働省
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この中(目次上=ページフッダーに記されているページ数は106ページ、PDFの104ページ)にタイトル「付属書11.確定診断のための検査方法」があり、その中に以下の記述があります。
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「動物に狂犬病が疑われた場合には速やかに致死処分を行い、中枢神経組織に対する狂犬病検査を行う。」
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この検査をしなければ確定診断は出来ない、つまり生前に確定診断は出来ないことになります。

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