demo tape


「君の曲を書きたい」
徐につぶやいて
弦を弾く長い指
さらりと乾いた声が
今も耳に心地いい

埃が燃える匂いと
コーヒーの香りが
こんなにもギターの音色に
合うことを教えてくれた
あなたはいつも
私の前から突然いなくなる

飲みかけのマグカップがふたつ
置き去りのワンルームに
私は今でも取り残されている

未完成のデモテープ
深い青のメロディが
白に溶ける午後
あの日の体温が
ゆらゆらと匂い立つ

まるでまだ隣に居るみたいだ

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