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M&A株式1-5名義株主がいる場合はどうする?

名義株主がいる場合には、事実関係を確認したうえで、真の株主に名義変更します。


経緯の確認

 名義株とは、他人名義を借用して、株式の引受、払込みがなされた株式で、結果として、株主名簿上の名義人である株主と、その株式の真の株主とが異なる状態となった株式をいいます。
 名義株が生じた経緯は、事案によりそれぞれですので、よくヒアリングします。平成2年の商法改正前までは、株式会社を設立するには、最低7名の発起人が必要でしたので、7名を集めるために、親族や知人の名義を借り、その人が出資をしたことにする場合がありました。原始定款に記載された発起人の引受株数と発行した株数が異なる場合には、発起人だけでなく外部から株式の引受人を募集し設立したと推測され、当該外部の株式引受人が名義株となっていることがあります。このほかにも、設立後、従業員に持たせたことにしているなど、名義のみを入れていることもあります。
 名義貸しをする際に、名義貸しに関する確認書などが作成されているとよいのですが、実際はなんの資料も残っていないことが多く、年月が経つと、名義株主なのか真の株主なのかさえわからなくなります。現存する資料とヒアリングにより事実関係を整理したうえで、出資したのは誰か、株主総会で議決権を行使しているのは誰か、配当を受け取っているのは誰か、という点を確認し、該当する人が真の株主と判断することになります。

<名義株の判断基準>
・出資したのは誰か
・株主総会で議決権を行使しているのは誰か
・配当を受け取っているのは誰か
・名義借の理由の合理性
・名義貸与者と名義借用者との関係およびその間の合意内容

 名義株は、放っておくと名義株主から権利を主張されたり、買取りを請求されたりするおそれがあるため、名義株に関する文書を作成し、早めの整理が必要です。

確認書等の取得

 名義株であることが確認できれば、名義株主から、名義株式であることの確認および株式の名義変更についての承諾を得る必要があります。当該書面は、本人に自署および実印の押印(印鑑証明書付)をしてもらいます。名義株主からの書面の取得時において、これまでの名義使用料などとしてなんらかの金銭の交付が必要となることもあります。
 名義株主が、既に亡くなっている場合には、相続人全員から当該書面を取得することが望ましいといえます。実際には、相続人を代表して、相続人の一人から取得することもあります。また、譲受企業から確認書の内容を指定されることもあります。

          名義株及び名義変更に係る確認書
株式会社○○ 御中
A(真の株主)殿
 私は、私が名義人となっている株式会社○○の普通株式○株について、当該株式の出資払込みを行った事実、これまで配当を受領した事実、株主総会において議決権を行使した事実はありません。
当該株式については、A氏に対して、株主としての名義貸しを容認したものに過ぎず、株式会社○○に対し、出資払込みを行ったのは、A氏です。
したがって、私名義の当該株式の実質的所有者は、A氏ですので、私は、本確認書をもって、株式会社○○に対して何ら株主としての権利義務を有していないことを確認するとともに、当該株式について実質的所有者であるA氏に名義変更を行うことを了承します。
よって、今後株式会社○○、A氏及び第三者に対し、株式会社○○の株主としてのいかなる権利の主張も一切行わないことを確約いたします。
   年  月  日
住所                 
氏名                印

名義書換

 株式会社は、名義株主から、名義株に係る確認書等をもって株式名義書換請求書が提出された場合には、株主名簿の名義書換手続を行います。譲渡制限株式の名義書換を行う際には、取締役会設置会社においては取締役会で、取締役会設置会社でない会社においては、株主総会で譲渡承認決議をします。

<議案の例>
議案 当社株主確認及び譲渡承認の件
議長は、現在当社株主名簿には、○○氏が株主であり、その持株数は○株である旨が登録されているが、○○氏から、同人はこれまで当社株式に対して出資払込をした事実がなく、同人が所有する株式はいわゆる名義株式であり、実質的な所有者であり株主はAであるとの申し出を受け、当社内部でも調査した結果、○○氏が申し出たとおり、その所有する株式の実質的な株主は、A氏であることが認められた。これを受け、このたび、○○氏からA氏への真正な株主名義にもどすため、その譲渡承認を行うとともに、当社株主名簿の記載を変更したい旨を述べた。
議長は、これらのことにつき、その可否を議場に諮ったところ全員異議なくこれを承認可決した。

 また、法人税申告書別表二の記載も変更します。
 株主名簿の名義書換および法人税申告書別表二の記載変更にあたっては、譲渡や贈与での異動ではなく、名義株の解消によるものであることがわかる上記確認書、議事録等の書面を整えておきます。

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