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私が声を張り上げて言ったからなのか、彼はビックリしていた。ちょっと言いすぎたかなとは思うが良い機会やから言ってやった。

すると彼が静かに喋り出した。

10年待たせてすまなかった。芸人という夢叶えて売れて迎えに行くはずやったのに、考えてることと心が一致しなくて穴埋めする為と言っては失礼やけど本当にそうで。罪悪感はあった。自分で言っといて何しとるんやって。後悔してからじゃ遅いのは分かってたんやけどさ。だからあん時に迎えに行くべきやった。許してとは言わない。俺のせいやって分かってるから。まだ安定した給料やなくて散財もしてるけど、少しずつテレビにも出して貰えるようになって。漫才の大会とかはなかなか上に行けないけど。色々大変でさ。やっぱ傍にいて欲しいんだ。すぐに返事は求めないから。

私は残り少ないカフェオレを飲み干し、彼に言った。

芸人さんの世界は厳しいものだって知ってる。苦労もあると思う。でも待たせておいた上に罪悪感もありながら他の女の子と遊ぶとかやっぱりありえない。私はあなたが好きで10年待ってたの。長かったよ。雰囲気良い男の子だって居た。でもあなたが待ってろ迎えに行くって言ったから付き合わなかったし。私のワガママかもしれないけど、あなたが言ったのよ?申し訳ないけど、付き合うとか考えられないよ。だってまたする可能性あるじゃない。信用出来ないよ。

私は断った。苦渋の決断。好きでもこればかりは許せなかった。だって寂しかったら罪悪感ありながら遊ぶ可能性もある。全員ではないけど芸人さんは遊ぶのが好きだから。知ってるけど、彼がすると思ってなかったからショックが大きかった。