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はなす

イラストレーター・三好愛さんの個展「さみしくはないけれど」に行ってきました。
三好愛さんの絵は、どれも柔らかく可愛らしいものばかりだけど、彼らはいつも無表情で暗くて寒そうで音のしなさそうなところにいることが多くって、たとえば暑い夏の日に床のひんやりしたところを探し見つけ、その安心感と虚無感を抱きながら眠ってしまいたくなるような、そんな感じがいつもする。

今回展示された絵の中のひとつ「ほんとのところ」という作品を見て、なんだか格好つけたことを言うようで照れくさいけれど、これは俺の絵だ!と思った。人らしきものと人らしきものが対峙して、その片方は口から煮え切らない色んな感情のようなものを吐き出している、そんな絵。

何をしていてもいつも自分と数十センチ離れたところからもう一人の自分が自分を見ているような、そんな気がしている。俯瞰しているとか客観視しているとか、いろんな言い方ができそうだけれど、これが実はなかなかに厄介である。一見、自分のことを冷静に感じることができて良さそうだけれど、たとえば人と話すとき。無駄な前置きをしたり、相手が思うであろうことを先回りして話しすぎてしまったり。なんとも言い訳じみた感じになってしまって情けない。たとえばラジオの仕事。ラジオはパーソナリティの素が見える、本音が聞ける、ということを言う人がいるけれど、それは半分正しくて半分間違っている気がする。マイクの前で話す以上、口から出た言葉たちはその途端に「表現」となって、それは無意識に編集され演出される。いや、マイクの前じゃなくっても、言葉を発するというのはそういうものなんじゃないだろうか。だからいつも言葉を選び、悩む。ラジオの収録帰りの新幹線でいつも反省と後悔ばかりを抱えて眠る。

僕の思う言葉を話すことがそのまんま一枚の絵になったような三好さんの作品。実際に展示で見た原画、少しざらっとした質感でとても素敵でした。実はこの絵に惚れた僕は、この日人生で初めて絵を買おう!と心に決めていたのですが、直前に他の買い手さんがついてしまって、残念ながら購入することはできませんでした。でもまた僕と同じようにこの絵に何かを感じて購入された方がいると思うとときめきますね。
三好愛さん、素敵な出会いをありがとうございました。


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