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冷たいポテト

小学生のころ、仲の良かったクラスメイトのあきくん。そのあきくんがある日突然クラスのみんなから仲間はずれにされたり無視されたりするようになった。それはほんとうに突然のことで、たぶん何か明確な理由や文脈のあるものではなかったと思うし、もしかするとこういったことは気まぐれでそれ故に残酷な子供同士の世界ではよく起こりうることなのかもしれない。実際、その数週間後にはまた何もなかったようにあきくんはクラスのみんなと話すようになっていた。

だけれど、その数週間はあきくんにとって地獄のように長い数週間であっただろう。
あきくんが辛い気持ちで過ごしていたであろうとき、僕はあきくんのお母さんの運転であきくんと一緒に少し離れた町の祭に行った。祭に行くことは、あきくんがみんなに無視されるようになる前から約束していた予定だった。気まずかった。僕もまたクラスのみんなに空気を合わせるようにあきくんにそっけない態度を取るようになってしまっていたからだ。あまり話の弾まない車内であきくんのお母さんが「あきは大貴くんのこと、ほんとうに大切な友達だと思ってるから仲良くしてやってね」と言った。僕はとても曖昧な返事をした。あきくんはお母さんに相談したんだろうな、と思った。
祭で賑わう商店街を少し歩き、途中マクドナルドに入って昼食をとった。あきくんのお母さんが買ってくれたポテトが少し冷たかった。

そのあとあれは一体なんだったんだろう、と思うくらいまたごく当たり前にあきくんはみんなと話すようになったけど、僕は祭の日以来、あきくんと妙な距離感ができてしまって、学校で会えば普通に話すけど、前みたいに二人で遊んだりするようなことはなくなっていった。

あれから何年も経ったけれど、マクドナルドで冷えたポテトに当たるたび、あの日のことを思い出す。

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