『藍染め』は『お酒』だ。



※すくも(蒅)=原料となるタデアイを刈り取り、乾燥・発酵させたもの。



藍染めをファシリテーションするとか言って、うまくまとめようと考えてたら、だんだんどこから説明したらいいかわからなくなりそうになりました。

おそらく

「すべての人にわかるように説明しようとしたからなのかな」と思ったので

とりあえず自分が共通すると思ったやつで例えられる限り例え、伝えていくことにしました。伝わらなかったら自分の力不足。

で、第1の門。

Q. 「結局藍染めって何なのか」

藍染めって日本の伝統文化だとかジャパンブルーだとか何だとか言うけど結局何なのかという疑問をお持ちの方多いと思います。


A. 「 藍染めはお酒のようなもの」

  「藍=お酒造り,藍染め=お酒の味」

以前のnoteでざっくりとは書きましたが、

これがあくまで一番目の前提です。

その上で、お酒としての例えを

(1)種類 (2)原材料 (3)味 (4)プロセス (5)味わい方

の順番で考えてもらえたらと思います。


(1)種類

日本にはいろんなお酒があります。日本酒・焼酎・地ビール・ウイスキー・ワイン・口噛み酒etc...

藍もそうです。日本で天然藍染めをしている方も、すくもを使う方、沈殿藍を使う方、インド藍を使う方がいらっしゃいます。


(2)原材料

中心となる原材料は、日本酒なら米、焼酎なら芋や麦、ビールは小麦など、それぞれのお酒によって基本となる原料があります。

藍染めも原材料はすくもならタデアイ、沈殿藍(泥藍)ならリュウキュウアイ、インド藍ならナンバンコマツナギなど、それぞれに用いる原料があります。


(3)味〜杜氏の存在〜

でも、日本酒の原材料で同じ米(例えば山田錦100%)とか、焼酎で同じ種類の芋を使っていたとしても味が違いますよね。なぜでしょうか?

杜氏がいるからです。仕込み方が違うからです。

藍も原材料となるすくもに関して言えば原料の9割は徳島の数件の農家さん、藍師さん(タデアイから、すくもを作る人)から供給されています。ですが、日本全国にある藍染めをするところで話を聞くとそれぞれ違いがあります。なぜでしょうか。

藍染めの液を仕込む人、管理をする人の違いです。お酒でいう杜氏です。

杜氏が違えば、製法が違います。つまり味が変わってきます。


(4)プロセス

日本酒で言えば、どれだけ米を削るのか(精米歩合)、醸造アルコールを添加するのか、無濾過なのか、最後に加熱するのかなど、プロセスが異なります。

それによって本醸造や純米酒、吟醸、大吟醸、秋あがり、ひやおろし、生酛など変化が生まれ、同じ部類でも酒蔵によって味わいが変化します。


藍染めもすぐに染められるのではなく、「仕込み」のプロセスが存在します。

容量はどのくらいか、すくもをどれくらい入れるのか。

灰汁を使うのか、ソーダ灰(苛性ソーダ)を混ぜるのか。

日本酒を入れるのか、焼酎を入れるのか、そもそも入れないのか。

ふすま(麦の皮)を入れるのか、ブドウ糖なのか、灰汁で溶いた水飴なのか。

どう攪拌するのか。混ぜ方によって藍の華を作るのか、作らないのか。

どのタイミングでどのような対応をとるかは、杜氏によって違います。

また仕込んだ後、どこに重点を置くのか。どう管理していくのか、

絹糸をメインに染めるのか、綿糸なのか。生地なのか、製品染めなのか。着物に使うのか、洋服なのか、インテリアなのか剣道着なのか刺し子なのかなど。


酒蔵が多く存在し、多様な味わいがあるように、藍にもそれがあるんです。


(5)味わい方

これから藍染めに、藍に触れる機会のある方には、是非

「この酒蔵はこういうタイプの方なんだ」と、多様性があることを前提に受け止めていただき、

逆に現場の私たちは

「うちが正しい、あちらは偽物」ではなく

「うちはうちの藍、あちらはあちらの藍」という感覚が理想的ですね。


もちろん、看板に偽りは無しで。

多分、漆器も同じかなーって。最近思います。


いろんな味を知って、お気に入りを見つけて欲しいと思います。

その中で、綾の手紬の藍を選んでもらえたら僕は幸せです。

藍、ワクワクします。



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