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遺された人として

2023年の3月18日、叔父が亡くなりました。

叔父とは親戚間の中では結構仲がいいほうで、叔父の感性が結構若かったのもあって、幼いころから仲良くしていました。父親がどちらかといえば習うより慣れろタイプの人だったので、かわりにいろんなことを教わった記憶もあります。ちょっとやんちゃだったので親戚間の評価があまり高くなかったのですが、個人的には好きでした。

叔父は写真が好きな人で、特に野鳥の写真を撮っていました。私には野鳥の写真はよくわからないのですが、魅力を熱く語っていたような気がします。ただ私の写真にも理解がないわけではなく、ほめられたことも多かったような気がします。

叔父が亡くなって、いとこから私に、カメラを譲り受けてくれないかというお話がありました。いわく、私たちはまったくカメラのことがわからないし、叔父は生前全部キタムラに売れと言っていたけど、それではもったいないので、写真を撮る人にもらってほしい、と。そういうわけで、カメラを見に行くこととなりました。

カメラを見ていて、叔父が最後に買ったカメラが目に留まりました。
オリンパスのOM-D E-M1Xです。
E-M1Xはマイクロフォーサーズと呼ばれる規格のセンサーで、レンズの焦点距離がフルサイズ換算すると倍になるシステムです。つまり、100㎜のレンズであれば、フルサイズ換算で200mmの焦点距離になります。望遠に強いといわれ、野鳥など超望遠が必要な場面では重宝されるシステムなので、叔父が持っているのも納得だなと思っていました。ついているレンズを見るまでは。

ついていたレンズは、25mmだったのです。

25mmのレンズ、つまりフルサイズ換算50mmの焦点距離というのは、一般的には人間の視野に最も近い焦点距離といわれています。見たままが写ると考えてもらえればいいかなと思います。つまりどういうことかというと、野鳥なんか写るはずないのです。なぜこんなレンズをつけていたのか。訝しがりながらカメラの入っていた箱を見ると、中にはレンズのレシートが入っていました。

2019年2月22日
亡くなる4年前でした。

なぜ野鳥しか撮らない叔父がこのレンズを買ったのか。
もしかして、何かを察知して日常を残しておこうとしていたのか。
4年後のことを、見越していたのか。

いとこはカメラのことを全く知らないので、レンズは軽い重いしかわかりません。そして、叔父のE-M1Xには、32GBの安いSDカードが1枚入っていました。カメラ本来の性能が発揮できないので通常使わないカードです。おそらく、中には日常風景が入っているのでしょう。中は見ずに、そのままいとこに渡しました。

叔父は2020年から体調を崩しました。
2019年の1年間、叔父はおそらく、日常を撮っていました。
そして、そのカメラとレンズは、私が引き取ることとなりました。
何をとるかはまだ決めていませんが、スナップを撮ろうかなと思っています。
叔父が取りたかった景色がとれたらいいなと、思っています。

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