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Little Diamond 第6話

第6話 背中を預ける

6-1

……どれくらい経っただろうか。
ユウトが芝生の上で昼寝を始めてから、たぶん1~2時間ほど?
依然として死んだように眠っている。

不安になって、耳を近づけて呼吸を確認する。

……うん、大丈夫。
ちゃんと生きてる。

日も傾いた午後。
少し高台に陣取ったおかげで、3つの闘技場の様子が遠目にだがよく見える。

4回戦目に私が出場予定の第3闘技場では、3回戦目が始まっている。
そろそろユウトを起こさないと。

軽く肩をたたく。
「ユウトー、そろそろ起きてー」

反応がない。
強くゆすってみる。

「んがぁ……!」
とユウトは吼えた。

……完全に夢の中かッ。

試合に遅れるわけにはいかないので、ジュリアは両肩を掴んで渾身の力で揺さぶった。

「もう!起きて!!ユウトーッ!?」

「……ぅん、もう一杯……むにゃ」
何かを咀嚼しながら、幸せそうな笑みを浮かべている。

……もう置いていこうかと思った。

が、最終通告として、鼻をつまんでやった。
しばらく沈黙ののち……。

「ぐ……ふがッ!」

がばっ、とユウトは上体を起こした。
肩で息をしてる。ちょっとやりすぎた?

「おはよう」と声をかける。
寝ぼけた目で、それでも彼は微笑む。

「あ、おはよジュリちゃん」

よし。起きた。
「そろそろ私、試合だから行くね。眠かったら寝てていいけど」

「や、大丈夫。もう十分回復したぜ。ジュリちゃんが戦うってのにオレが応援しないわけにゃいかないだろ」
そういって、彼はスッと立ち上がる。

動きは機敏だった。

見た感じ、回復した様子。
大丈夫そうかな……?

そうして次の戦いの場、第3闘技場へ向かった。

到着すると、ちょうど3回戦目の決着がついたみたいで、テント内はなにやらバタバタしていた。

「もうちょっと待ってようか、邪魔になってもアレだしね」とユウトが言うので、テントの横で待つことにした。

隣の闘技場では、すでに4回戦目が始まっているようだった。武闘家らしき人たちが戦っているのが見える。

反対側のもう一つの闘技場は……?
背伸びして目を凝らす。
うぅん……、たぶん準備中かな……。

すると、背後にぞくっとする殺気を感じた。
とっさに振り返る。

瞬間、目をそらす覆面の男。

それほど体格は大きくない。
小柄な、黒い忍者装束を身にまとった男だった。

この大会は異業種戦だけに、会場内には色んな格好の人がうろついてはいるが、よく晴れたこの真昼間に「全身真っ黒で覆面」というのはかなり目立つ。

それでも彼はすぐに人混みの中にまぎれ、見えなくなった。

……何なの? 次から次へと……
不安な気持を打ち消すように、いらだちが湧き上がる。

騎士団長の出現のしかたも、無駄に怪しかったし。
またか……と思わざるを得ない。

「第4試合出場の『ゆりあ』さーん!いますかー?」

テントから係員の呼ぶ声が、現実に引き戻してくれた。

「はーい!今行きます!」
手を振って応えてから、ユウトに向き直る。

「じゃあ、行ってくるね」
「ん!がんばれ!ちゃんと見てるからな!」
拳をつき合わせた。

手を振って、テントへ入る。

ユウトはすでに2回戦目を勝ち上がった。
次は、私の番だ。

6-2


控えのテントに入ってから、少しだけ待たされた。
その間に精神統一をする。

今日はもうすでにいろんなことがあって、心が少しざわついていて。
集中するために、しばし目を閉じた。

目的は……?
経験を積むこと、自分の力を試すこと。

勝つ理由は……?
自分がレベルアップしたいから。

この対戦に負けられないのは……?
もっと強い奴と戦ってみたいから。

……よし。絶対勝つ。
こんなところで負けるわけにいかないんだ。

心がどっしりと地に足をつけるような感覚。
闘志がますますみなぎるのを感じた。

ちょうどいいタイミングで、係員が声をかけてくる。
「OKです。どうぞ、入場してください!」

私は堂々と胸を張って舞台に上がった……!

轟く歓声。観客席にはユウトの姿も。
相手は……。

「……!」

真っ黒い、忍者のような姿。
さっきテント脇でチラッと見かけた人物……?

なるほどね。

かなりの殺気を発していたから気になってはいた。
威嚇していたのか、隠しきれなかったのか。

おそらく私が次の対戦相手であることを知っていたのだろう。

見た目は小柄な、どちらかというと少年のような体躯。
忍者装束に身を包み、覆面のため顔はよくわからない。
若いのか年配なのかすらも判別できない。

「用意……始めッ!」
審判の号令によって試合が開始されると、相手はフットワーク軽くシャカシャカと動き始めた。まさに忍者さながらだ。

攻撃動作を警戒しながら、様子をうかがう。
すると急に彼は静止し、そこで初めて口を開いた。

「警告する。この試合に、場外はない」

彼はそういうと「バッ」と大きく両腕を広げた。

「――!?」

すると四角い闘技場舞台の端から、オーロラのような光の幕がぶわッと立ち上がり、舞台を立方形に囲った。

え……魔法を……?!

そして。
スウゥゥ……と、だんだん暗くなる。
昼夜が反転したみたいに。

これも魔法の効果なのだろうか。

舞台の外、観客席だけがうっすらと明るい。
まるでサングラスをかけたような景色だ。

男は抑揚のない声で言う。

「物理バリアを内向きに張った、いわば「結界」だ。
もうここから『何も』外に出すことはできない。
……どういうことかわかるか?」

閉鎖された空間に反響しているようで、声がどこから聞こえているのか分かりづらい。

彼の黒い姿は、闇になじむように存在感が薄くなった。

「お前はもう、カゴの鳥ということだ」

いつの間に取り出したのか、その両手にはたくさんの刃物が握られている。
彼が両腕を振るうと、切っ先がギラリと光った――!

投げた……!?

危険を感じ、とっさにかわす。

カキン、カラン……と金属が落ちる音。
後ろを見ると、細身の短刀のような刃物が8本。
バリアの壁にぶつかったのか、舞台の端の床に転がっていた。

間髪入れず、すぐにまた彼の手元から鈍く光る何かが放たれた!

しかし暗くて軌跡が見えない……!
「ーー!」

よけきれず両腕で頭をかばったが。

両腕に複数の小さな衝撃。
幸い、ラバープロテクタによって弾かれたのでダメージはない。

足元にたくさん転がっているのは飴玉ほどの大きさの、鋭いトゲのついた金属の球。

プロテクタがなければ簡単に刺さっていただろう。
背筋がゾワゾワッとした。

なるほど……飛び道具ね。
相手は飛び道具を使うんだ。

飛び道具はルールで禁止されてはいるが、あくまで「観客に危害を及ぼすような飛び道具」が禁止されているに過ぎない。

よく考えたものだ。
物理バリアを張っていれば、その外に何かが出ていくことはない。つまり観客に被害が及ばないので飛び道具もアリということか。

しかも範囲を暗くすれば見切ることも当然難しくなり、かといって武舞台の広さは決まっているから、間合いを取って射程から逃れることもできない。

……やるじゃない

ヤバい。これはピンチだ。
でもなぜか、ワクワクしている自分に気づく。

彼は飛び道具という武器を活かすために。
自分が有利に戦えるフィールドを自ら作っているのだ。

敵ながら尊敬せざるを得ない。
大会ルールを逆手に取った良策である。

しかし、そんなに楽しんでいる余裕はなさそうだ。

さらに刃物が飛んでくる。
続けざまに4つ。

空間に弧を描くような風切り音。
ギリギリで避ける。

今度は……手裏剣のような武器だった。

その後はまたトゲの礫がバラバラと飛んでくる。

脚にひっかいたような痛みがあった。
……いくつか食らったようだ。
数が多くて避けきれない。

執拗な波状攻撃。
反撃しようにも避ける方に意識を集中させているので、闇にまぎれて動き回る彼の正確な位置をつかむことができないのだ。

だが、飛び道具である以上は数に限りがあるはずだ。
全部投げ切ったら飛び道具での攻撃はひと段落し、そこで近接戦闘に持ち込んでくるだろう。その時がチャンス。

彼が最初に見せた素早いフットワークなら、格闘も得意なはずだ。
忍者だったら、刀かも知れないけど。

そう考えた私は、ひたすら避ける、ガードすることに専念することにした。
闇に目を慣らしながら攻撃のチャンスをうかがう。

そんな中。
ふ……と攻撃がやんだ。

ん、ついに弾切れ……?

……かと思ったら。
キィ――ンと微かな耳鳴りがした。

そのとたん舞台の端に落ちて散らばっていたたくさんの飛び道具が、カタカタカタ……と振動したかと思うと、スウゥ……と地面を滑るようにして移動する。

「……え?」

その先には、敵の姿が。

最後には彼のポケットやポーチ、手元に収まった。

まるで「自分の帰る場所」を知っているかのように、武器がひとりでに元の場所に戻っていったのだ。

え……そんな……!

愕然とした。

闇の中、忍者の気配

闇の中に、残忍な光を湛えた目が光る。
「残念ながらオレに弾切れはない。さあ選べ。どこを切り刻まれたい?」

「……ズルくない……?」

乱れた呼吸を落ち着かせながら、私は頭をフル回転させて打開策を考えていた……。

6‐3

敵の武器は、短刀、くない、手裏剣、トゲの礫。
それと、よくわからない無数の細かい金属片。

投げの技術はハッキリ言ってイマイチだ。
そこは幸いと言えるかもしれない。

しかしスタミナを消耗させるには十分だった。

動体視力とすばしっこさには自信があったが、暗さのせいで視認できる距離が短い上に、数が多すぎてさすがにしんどい。

短刀の、風切り音。
ギリギリで避けた先に手裏剣が飛んでくる――!
とっさに左腕でガードする。

「ぐ……ッ!?」
鋭い痛みが走る。
ラバープロテクタに深々と刺さった手裏剣の刃は鋭く、貫通していた。

細かい金属片はもはや避けきれず、プロテクタのない素肌にヒットしていた。ダメージは地味に蓄積し、確実に体力は削られている。

必死で避けても息が整う前に回収され、また次がくる。
そう思うと戦意が萎えてくる。

……もう何巡目だろうか。
無限ループだ。

額から流れる血が目に入る前に、手の甲でぬぐう。
どうにかして、攻撃できる間合いに入らなければ……。

……でも一体、どうすれば……?

素手での格闘試合に慣れていたせいか、切れ味の鋭い刃物に少なからず恐怖を感じる。
刺さったら、と思うと怖くて近づけない。

小さな金属片ならまだ良いが、くないや短刀ならば痛いだけでは済まないだろう。現に、何度かプロテクターを貫通した傷からは、外からわかるほど出血していた。

また「キィ――ン」と高音がし、投げ切った無数の武器は彼の手元へ戻っていく。覆面で見えないが、きっと余裕の表情を浮かべているに違いない。

闇の中から男の声が聞こえる。
「さて、そろそろ疲れたろう。終わりにしようか……降参するなら今のうちだぞ」

降参……?

降参すれば、このしんどい試合は終わる。
けれどそれは、自分で負けを認めるということ――。

つまり自分に負けるっていうことだ。

今朝、ユウトと一緒に「やるぞ!」って言ったとこなのに。
勝つ気満々でいたのに――。

ちら、と観客席を見る。
煙幕を張ったように暗いが、武舞台の外側はなんとなく見える。

ユウトは立ち上がり、切羽詰まった様子でこっちを見ている。何か叫んでいる様子でもあるが、結界が張ってあるせいか全く聞こえない。

ユウト……心配してるかな……。

あんなに私が出場することに反対していたし。

血が苦手だって言ってたのに。
あぁ……こんなに出血しちゃって。

ふいに、この会場にエントリーしに来た日のことを思い出した。

あまりに酷く心配するユウトを見かねて言った、冗談。

−−−−−−−

「大丈夫だって。
万が一怪我しても、ほら。
治癒魔法を使える人がここにいるじゃない」

「いや……まぁそうだけど。
って、そういうことじゃないっしょ!」

「もしもの時は頼んだわよ」

−−−−−−−

そうだ……そうだった。
確かにそんなこと言ってたのに、私。

「背中はすでに預けた」はずだ。

怪我したって、ユウトが治してくれるじゃない――!

大丈夫。怖くない。
死なない限りは、大丈夫。

私は覚悟を決めた。

心さえ固まれば作戦を組み立てるのは一瞬だった。
次の武器回収の時、勝負を決める――。

相手の攻撃が止むまでは今までと同じように避けながら、こっそりと舞台の床にに転がる相手の武器をいくつか拾って、手の中に忍ばせた。

そろそろかな……?
そろそろ、手持ちの飛び道具は底をつくはず。

――。
攻撃が止んだ。
だが警戒する。フェイントの可能性もあるからだ。

合図はあの、頭に響く高音のノイズ。

とっくに息は上がっていた。
肩で息をしながらも、必死で意識を耳に集中する。

その時だった。
キィィィィ――――ン……!

来た。回収が始まった。

耳鳴りのような高音を無視して、今度は相手の気配に集中する。もちろん見えない。

見えないから、気配を探る。

金属が地面を引きずる音。

ほんのわずかな衣擦れの音。

息遣い。

……捉えた。

さっき拾っておいた飛び道具を、気配の方向にまとめて投げた。
同時に地面を蹴って、間合いを詰める。

進行方向の少し先で「ガギイイン!!」という金属をはじく音。

私が投げた武器をとっさに防いだのだろう。

思った通りだ。
彼は刀のようなものを持っている。

強い殺気があらわになったことで相手の姿が視界に入った。

5メートル先。
充分、射程範囲内だ。

彼が刀を再び構える。
切っ先がギラリと光る。

もう迷わない。
……あとは任せた。

思い切って、切られるのを覚悟でさらに踏み込んだ……!

一瞬、こちらの方が速かった。

しっかりと相手の懐に飛び込んでからの、みぞおちへの渾身のアタック。
スピードと体重を十分にかけた掌底がヒットした――!

相手は「ぐぼぉッ……!」っと内臓から逆流するような低い悲鳴を上げる。
そのまま飛んでいき、結界の壁にぶつかって倒れた。

そのとたん。
視界は晴れ、武舞台を覆っていた結界は音もなく消えた。

久しぶりの日の光が眩しくて、思わず目を細める。

一旦大きく息を吐いてから、相手のそばまで行く。

まだ勝負はついていないようだ。
審判の声は聞こえない。

相手は「ううぅ……」とうめいて丸まっている。
しばらくは起き上がれないはずだ。
まともに入ったから。

けれど息を吹き返してまた結界を張られても厄介だ。
彼のあの殺気からいって、十分やりかねない。

念のため場外に落とすことにする。

……悪いけど、もうこれ以上、ほんっと無理。
もう勘弁してほしい。

傷だらけで重たくなった身体を引きずり、彼の傍らにしゃがみ込んでから。

「よいしょッ……と」

丸まってる彼を、ゴロン、と転がして場外に落とした。

「勝負あり!」
もう聞きなれた、審判の声。

「はぁ……!! た……倒したぁ……!」

ああぁ、疲れた……。
もう、もう無理ぃ……。

終わったと思ったら急に気が抜けて、脚に力が入らない。とにかくもう、横になりたい。

その衝動に身を任せるように、その場に倒れ込んだ。

さっきまで忘れていた傷の痛みが戻ってきた。
大げさでなく腕とか、取れそうに痛い。

ユウトの呼ぶ声が聞こえた。
担ぎあげられる感覚。
でももう目を開けることすら面倒くさいほど疲れていた。

勝った。勝ったのよね?
そこだけはちゃんと記憶に刻んでから、意識を手放した。

6‐4

目が覚めるとユウトがいた。

「おお!ジュリちゃん!!」

起きるなり、騒々しい。
何よ、何があったのよ。

ゆっくりと頭が回転し始める。
そして記憶をたどる。

え――と。

……!

思い出した。
試合してたんだ。で、勝って。

それで……倒れたんだった。

「よかったぁぁぁ~!
ジュリちゃん、心配したんだよぉぉぉ!」
ユウトが泣きそうな勢いでハグした。

「もうさ、心配で見てらんなかったよぉぉ!
てか真っ暗で何も見えなかったけど!」

そうか。心配かけたんだ……。

普段なら馴れ馴れしくくっつくな――ってぶっ飛ばすところだけれど。

今回ばかりは、ユウトの存在なくして乗り切ることはできなかった。
初めこそ頼りない印象だった彼がいつの間にか、背中を預けられる相手になっていた。

「ありがとう、ユウト」
ごめんね、よりもありがとうの方が大きかった。

彼がいるからあきらめずに戦えた。
支えてくれるから、恐れずに前に進めた。

私が自分らしくあるために必要なんだ。もしかしたら、これが「仲間」っていうのかもしれない。

あったかくて心地よいこの感覚が、嬉しくて。
しばらくそのまま、騒々しいハグに身をゆだねた。

6‐5

試合後の処理は淡々と行われた。

波形審査は問題なし。
魔法の残留も特になし。
外傷の応急処置と体力はユウトによって治療済み。

「いやぁ、ビックリしましたよ~、こんなに手際よく応急処置できる人がいるなんて!素晴らしい手際でした。医療班に入って手伝ってくださいよぉ~!……なんてね。あはは!!」

係員のテンションが異様に高いのは、ユウトが焦って治癒魔法と回復魔法を同時に掛けたせいらしい。

本来なら応急手当は医療スタッフに任せるべきところを、審判の声とほぼ同時に出て行って、テントに運ぶ前にその場でほとんど治癒したらしい。

「おかげでオレはまた眠くなってきたわ……。
あぁ、もう帰ろ帰ろ。ね、ジュリちゃん」

せっかく昼寝で回復した分のMPを、また使い切ったみたいだ。

「そうね。今日はもう帰って早めに……あ、ご飯も食べてなかった」
今日は朝も昼も食べていないことに気がついた。

「それよりオレは眠い……」
そんなにか……!

しょうがない。
今日はユウトの分まで、私がお店の手伝い頑張ろう。

まだほかの闘技場は試合が続いているようだが、もう観戦せずにそのまま闘技場を後にした。今日は色々ありすぎて疲れた。

夕焼けに赤く染まり始めた風景の中を、2人でてくてくと歩く。

明日は試合がない。

これまでは朝の抽選で対戦相手を決めていたが、これからはブロックに分かれてのトーナメント戦となる。

その前に1日、休日が設けられている。

この2日間で出場者もだいぶ絞り込まれ、この後は激戦となるだろう。
体調を整えて臨むことができるよう、配慮されているようだ。

大会の間の休日。
何をしようか……。
疲れたからってゴロゴロして過ごすなんてもったいない。

王都の外に出てきてからずっと、私は魔法に興味を惹かれてきた。そして自分が魔法に関して何の知識もないことに気づいた。

小さなころ、もちろん魔法適性の検査を受けたが「ほとんどない」の判定。

でも「ほとんどない」ってことは「ゼロではない」ってことじゃない?

つまり、もしかしたら魔法を使える可能性もあるかもってことじゃない?

ということに思い至ったので、ユウトに聞いてみることにした。
「ユウト、私に魔法を教えてくれないかな?」

歩きながら半分寝かけていたらしいユウトは「ふぁ?」と返事をする。

「え、ジュリちゃんが魔法?ほんとに?」
「うん、もしかしたらできるかもだし」

半分以上無茶振りだったけれど、ユウトはちゃんと受け止めてくれた。
「もちろんいいよ!おーけーおーけー。なんか考えとく」

ユウトはにっこり笑う。なんだか嬉しそう。
もしかしたら本当に、魔法使えるようになるかもしれない。

そう思うとワクワクした。
「ありがとう!楽しみにしてる!」

ユウトは顔は半分寝ていたが、軽やかにスキップしながら宿まで帰った。

とにかく、明日が楽しみだった。

◆◆第6話 背中を預ける 終わり


あとがき


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!もし面白いなっと思ったら、スキ、フォローをお願いします!

ご意見やご感想は本当に励みになります。
面白かった点、気になった点があればコメント又はツイートいただけたら嬉しいです。

TwitterDMでもOKです。
今後の創作の参考にさせていただきます!

……はい!
今回はがっつりバトルシーンがメインでした。

当初の予定では「忍者」しか決まってなかったのですが、忍者と戦うとしたらどうなるんだろう……。と考察を重ねていった結果ここまで膨らみました。

投げた武器が自動的に戻るとか、めっちゃイヤらしいですよね……。


知恵と根性と仲間の存在で、これからもっと強くなるジュリアにご期待くださいませ!

次回は予選3日目。
ここからは3ブロックに分かれて、トーナメント戦。
各ブロックで勝ち残った3人が首都で行われる本戦に出場となります。

トーナメント表

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