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小説【 Little Diamond 】

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ファンタジー小説です。科学と魔法が混在する世界。人生を自らの手で切り開いていく若者たちの、挑戦と成長を描きます。 頼りなくて繊細で、それでいて柔軟で軽率な登場人物たちにワクワクし…
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2022年12月の記事一覧

Little Diamond 第1話

プロローグ この世界では、魔法と科学が共存しながら文明を築いてきた。 念のため、魔法に関して馴染みのない方々へ解説すると、魔法への適性は生まれ持った感性であり個性であり、運動神経やコミュ力などと同じように個人差が大きい。 魔法が使えるかどうかは、遺伝的な要素が強いのである。 さらに細かく言えば、魔法力や魔法力容量、持続力やアレンジ能力なども違うので、ひとくちに「魔法使える」と言っても得意分野は人それぞれだ。 魔法適性のある者は全人口の1/3程度ではあるが、科学技術によ

Little Diamond 第2話

第2話 ユウトとふたりで2-1 私やユウトの滞在している宿屋は1階が酒場になっている。 町の中心から外れているせいで、周囲の人通りもそれほど多くない。 でもそのわりに、夜は常連客の集まる人気の店だ。 ただし酒場のお客が増えてくるのは、陽が落ちてから。 昼間は店を開けてはいるものの、お茶を飲みに来るお客がたまに来るくらいで、基本はヒマだ。 マスターは買い付けに出かけたり仕込みをしたり。 おかみさんは、お店や宿の部屋の掃除をしながらの店番。 酒場の忙しくなる夕方までは

Little Diamond 第3話

第3話 初戦!3-1 今朝は早起きして、すでに準備を整えて朝食をいただいていた。 「あーい!みんな~おっはよ~う!」 ユウトの間延びしたようなのんきな声が、2階から降りてきた。 緊張感のなさが、彼の持ち味だ。 今日は武術大会の予選、初日。 近隣の小さな町や村から見物客が訪れ、ククルの町はいつにない賑わいを見せていた。きっと今日はお店も昼間から忙しくなるだろう。 マスターも仕込みに余念がない。 私とユウトはもちろん、大会に参戦予定だ。 おかみさんがお店のテーブルを拭

Little Diamond 第4話

第4話 ユウトの作戦4-1 第3闘技場の近くまで行くと、係員の声が聞こえた。 「ユウトさーん!次の試合に出場予定のユウトさんはいませんか~?」 すぐに気付き、ユウトは手を挙げて小走りで駆け寄った。 「はいはーい!ここです、ここでーす」 「ユウトさん?もうそろそろ始まるので、テントにいてくださいね」 係員もそれほど切羽詰まった様子ではない。 よかった。遅刻したわけではなかったようだ。 「うい!了解ッす!」 ユウトもリラックスした様子だ。 「じゃあ、私は観客席から見て

Little Diamond 第4.5話

第4.5話(Side story) 魔法の作り方4.5-1 目覚まし時計と同時に起き、二度寝しないように窓を大きく開け放つ。 ああ。 今日もいい天気だ。 ……寒いけど。 布団で温まった体が冷え切らないうちにうちに着替えを済ます。 テキパキと魔法装備をピックアップし、持ち物を確認する。 今日は「仕事の日」だから。 普段ならギリギリまで寝てるし、自慢じゃないがオレは二度寝肯定派だ。 つまり、今日は特別に気合が入ってるってこと。 なんせ「魔法使い」としての仕事だ。