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『予想で泣かなくてもいいよ』パート4(戯曲)

火曜日

想像の廊下を歩いている
現実のわたしはデータ入力をしているだけだけど
あまりにも考えることのない
ただひたすら速く入力すればいいだけの単純作業なので
わたしはわたしを現実に置き去りにして
心置きなく想像の廊下を歩くことが出来る
そこにはわたしの想像の残骸が散らばっていて
撫で回したり
たまに蹴っ飛ばしたりする
想像の廊下の先は鋭く光っていて
永遠に辿り着くことは出来ない
わたしのすべての欲望を満たしてくれる
完璧な想像がそこには鎮座しているのに
これは想像ではない
事実だ
昔からずっと見つめてきた
廊下の先
濁った想像の山はむしろ
あの光を遠ざけてしまう
無心で廊下を歩けば
あの鋭い光はきっと
わたしの心臓を貫いてくれる
その瞬間に
わたしの体は蒸発して
ただの光になる
完璧な想像になる
想像をするのではなく
想像になる日のこと

○参考文献

太宰治『二十世紀旗手』(新潮文庫、2003年)
中村大地『二十一世紀旗手』(2015年)
中島みゆき『中島みゆき全歌集 1987-2003』(朝日文庫、2015年)
スピノザ(吉田量彦・訳)『神学・政治論(上)』 (光文社古典新訳文庫、2014年)

basso『クマとインテリ』(茜新社、2005年)
『web opera』vol.3(茜新社、2018年)

『予想で泣かなくてもいいよ』パート5(戯曲)

https://note.mu/ayatoyuuki/n/n85d71208de58

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