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日本の地方から、方言が消えつつある。~僕の故郷・山形県庄内地方の方言「庄内弁」の話。

僕は、山形県酒田市に生まれました。酒田市は山形県の日本海沿岸地域に位置し、隣町の鶴岡市などを含む庄内地方にあります。

酒田には高校3年までの18年間住んでいましたが、住んでいた頃は、遊ぶ所も無い寂れた田舎でしかないと思っていた故郷を早く出たくてたまりませんでした。そして、大学進学とともに念願かなって東京に出てきました。
でも、一度故郷から離れてみて大学1年の夏休みに酒田に帰った時に、鳥海山や庄内平野の田んぼの美しさとか、庄内の「んめもの」の豊かさなど、故郷である庄内の素晴らしさを初めて認識したわけです。

しかし、酒田駅前にあったジャスコは潰れて、その跡地には何も建たず、他に新しい建物が出来てもパチンコ屋ばかりだったり、故郷の寂れっぷりには拍車がかかるばかりでした。これはどうにかしなければならないと、東京在住でサラリーマンをやりながら、プライベートな活動ではありましたが、2008年より庄内地方発の地域おこしフェス「もっけだフェスティバル」を実行委員長として酒田や東京で主催しました。

2013年11月に渋谷O-nestで「山形・庄内もっけだフェスティバル2013 in 渋谷~大音楽芋煮会~」を開催した時には、庄内弁ドラマ「んめちゃ!」という作品を山形県酒田市ロケで制作して、イベント当日に上映しました。

この庄内弁ドラマ「んめちゃ!」には酒田出身で上々颱風ヴォーカルの白崎映美さんにも友情出演していただきまして、YouTubeにて動画を公開しております。

▼【庄内弁ドラマ】「んめちゃ!」
(ロケ地:山形県酒田市など、制作:もっけだフェスティバル実行委員会)
https://www.youtube.com/watch?v=LoXsL1wrT-4

僕が何故この庄内弁ドラマを制作しようと思ったかについて、ここでお話ししたいと思います。大変もっけだんども(=恐縮ですが)、少々長くなると思います。

僕は、世界で庄内弁にしかない「もっけだ」という方言が大好きで、自ら主催するフェスやイベントのタイトルにも使っています。「もっけだ」は、簡単に言うと「ありがとう」と「すみません」が合わさったような恐縮と感謝の言葉です。「もっけ」には、「もっけの幸い」(思いがけない幸運)という言葉でも使われてもいるように、「稀有」という意味があります。
この「もっけ」という言葉に、「だ」や「だの~」や「です」などの語尾が付いて、親しい人には「もっけだの~」「あいや、もっけだちゃ~」「もっけだごど~!」、相手が目上の時は丁寧に「もっけです~」などという風に使われます。

酒田市出身・庄内拓明さんのblogでの「もっけだ」解説によると、

『「ありがとう」 という言葉が、自分が主体となって相手に感謝の意を表すというニュアンスが強いのに対して、「もっけだ」 は、あくまでも相手が主体で、まず相手側の「もっけ(希有)」であるところの好意を立てる。その好意に対するねぎらいという意味合いが勝っているのだ。庄内人はまず第一に、「もっけだ、もっけだ」 と言うことで相手をねぎらい、その次に、「ありがとう」 と言って、自分側からの感謝を表すという態度表明をするのだ。先に相手があり、次に自分を出す。なんと控えめで奥ゆかしいことであろう。』

とのことなのです。庄内弁にしかない言葉であり、「もっけだ」は庄内地方の人々の素晴らしい精神性を最も良く表している言葉だと思っています。

▼方言ブームと 「もっけだ」 の意味:
tak shonai's "Today's Crack"(今日の一撃)
http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2005/11/post_3b76.html

その他にも、庄内弁には「じょさね」(簡単だ)、「やばち」(水に濡れて冷たくて気持ち悪い)、「めじょけね」(可哀想だ)とか、面白い言葉がたくさんありますが、ここではその紹介は割愛します。

で、昨年、白崎映美さんと話した時に、白崎さんが酒田の幼稚園に行った時のお話をお聞きしました。今のお子さん達は庄内弁をほとんど喋らないそうで、みんな標準語で話すそうです。僕は、そのお話を聞いて、少しびっくりしてしまいました。

そして先日、神田の庄内料理屋「このじょ」に行った時に鶴岡出身の店主・ともさんから聞いたお話によると、まず、庄内の親世代が子どもと標準語で会話する家庭が多いとのことで、核家族化が進む昨今、他の家に住むおじいちゃんやおばあちゃんが孫に庄内弁で話しかけたりすると、親が「そんな言葉は子どもに教えないでくれ」と怒るそうです。その話を聞いて、僕は愕然とするとともに、どうしようもない怒りと危機感がこみ上げてきました。

やばい。このままでは、庄内弁は無くなってしまう。

鶴岡出身の渡辺智史さん監督の映画「よみがえりのレシピ」 http://y-recipe.net では、利便性や大量生産のために、地方にしかない在来作物が消えつつあるというお話が取り上げられています。その在来作物の種を、地方の農家が必死に守ろうとしているという話。

日本の地方にたくさんある独特で味わい深い方言も同じように、利便性のために標準語に取って代わられてしまうのではないでしょうか。
庄内弁も、きちんと庄内の人間が守らないと、そして「アクション」を起こしていかないと、やがて無くなってしまう運命にあると思うのです。

僕は、そんなのは厭なのです。

この庄内弁の素晴らしさと魅力を、日本全国へ(そしてゆくゆくは世界へ)発信していくために、そして、まずは庄内の人達にもそれを再発見して欲しいと思い、このような庄内弁ドラマを制作することに至ったわけです。それが、僕の「アクション」です。

庄内弁ドラマ「んめちゃ!」制作・撮影スタッフは、脚本・監督で主演も務める鈴木ナナ子を始めとする、新潟在住の方々が中心です。撮影・編集の田澤さん曰く「新潟市あたりにはそこまで強い方言は無いので、庄内の方言が新鮮で面白かった」とのこと。皆さん、お忙しいなか新潟からこのドラマを撮るために酒田まで遠征してくださっています。

この「んめちゃ!」の第2話を、先月酒田ロケで撮影しました。下記の写真は、酒田hopeで撮影したライブシーンの1カット。

2014/8/22(金)に、もっけだフェスの関連イベントとして酒田hopeで開催する『もっけだまづり「東北6県ろ~るショー!」~今夜はおどって、うだって“サガダクション”~』にて、この庄内弁ドラマの第1話と最新作第2話を上映します。詳しくは言えないですが、物凄いものが観れると思います。
当日は、「白崎映美&とうほぐまづりオールスターズ」のスペシャルライブや、酒田在住のバンド「naUta and town」、鶴岡在住のバンド「イナプラネチャーニン」のライブにも注目です。

酒田(さがだ)でアクションを起こすという造語「サガダクション」を旗印に、このイベントから、庄内や酒田、そして、日本の地方の新たな歴史が始まります。その歴史の1ページを、ぜひ目撃しに来てください。

8/22「もっけだまづり」
▼Facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/258157717723239/
▼もっけだまづり詳細(もっけだフェスティバルWebサイト)
http://mokkedafes.tumblr.com/post/88062831774

※2014/10/04追記:
もっけだまづりは、下は3歳から上は80歳代まで幅広い年代の約130名もの老若男女の方々にお集まりいただき、超満員&大盛況のうちに終了しました。酒田hopeの新店舗初のSOLD OUTで、動員新記録となりました!!ご来場いただきました皆様、ご出演の皆様、スタッフの皆様、本当で、もっけでした!!!
当日の写真をもっけだフェスティバルFacebookにアップしております。

庄内弁ドラマ「んめちゃ!」第2話をYouTubeにアップしました!
私も地元在住ギタリスト役で出演しております(笑)ので、ご笑覧ください。
▼【庄内弁ドラマ】んめちゃ! 第2話「おら、酒田でアクションすっぞ!」
https://www.youtube.com/watch?v=5UZ9zXF1ojE

第2話で、友情出演の白崎映美さんと主演の鈴木ナナ子さんが唄う民謡ダンスチューン「酒田でアクション! 〜時には起ごせよサガダクション〜」の音源も、iTunes StoreやOTOTOY、レコチョクなどで絶賛配信中です。売上の一部は「酒田市を音楽のまちへ」プロジェクトの活動資金にもなりますので、こちらもぜひよろしくお願いいたします!

▼楽曲配信の詳細は、以下もっけだフェスWebサイトにて。
http://mokkedafes.tumblr.com/post/88062831774

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