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総支配人から好待遇を受けちゃった(9/4上)

メトロで普段よく乗るのはどちらかといえば赤ライン。だがこの日は「同志」と緑ラインを乗りこなす1日。2路線が交わる「ブルジュマン」駅が行動範囲の中心だ。

この駅からまず目指したのは、エジプトの世界観をイメージしたショッピングモール「ワフィモール」。ピラミッド型の天井の裏側に貼られた、色鮮やかで緻密な模様のステンドグラスを目当てに来た(何枚か外れていて残念)。

このモールの地下には、エジプトやトルコ、モロッコ雑貨が所狭しと売られているスーク(市場)が広がっていて素敵(日曜日というのに客が全然おらず何とも物寂しい笑)。

フードコートも、節電しているのか全体的に薄暗くて静か。居心地が悪い感じがして、そこから少し行ったところの「レストラン+お土産屋」が集まった一角に足を踏み入れる。

するとおもむろに、白髪で恰幅の良い、青いポロシャツを身につけた白人系のおじいさんが私たちに近づいてくる。そして「どうぞ、これあげるよ」と白ごまがまぶしてある正方形の小さなクッキーを渡された。てっきり「どこかのお菓子屋のスタッフが試食を勧めてきただけだ」と思っていたが、後ほど驚くことに・・・

私たちが日本人だとわかるなり、「昔の仕事の取引先や元交際相手の関係で、日本にはとても縁があるから」と好待遇がはじまった。お惣菜コーナーにあったレバノン料理やアラビア料理から、彼おススメのものがお皿へ盛られていく(混ぜご飯2種類・ズッキーニの中にラム肉とコメを詰めてトマト煮込みした料理)。

「いくらなの?」と聞くと「一皿で84AED(約3360円)だよ」と言われ大慌て。「そんなそんな・・・私たちは学生ですから今日はいいです」と断ると「君たちは私のゲスト。無料にするよ。さあ肉か混ぜご飯、どっちがいいの?」と衝撃の返事。この世にタダほど怖いものはないと聞くじゃないか・・・

言われるがまま、お惣菜コーナーの裏にある食事スペースに通される。彼が入ってくるだけで、働いているスタッフたちの顔がこわばる。彼がアラビア語で何か指示すると、そのスタッフたちがテキパキとテーブルをセッティング。本来目に見えないはずの「権力」、このときばかりは見えていた。

ほどなくして、さっきのお皿に加えて袋型のアラビックパン、ひよこ豆料理のフムス、カナーフェというデザートがテーブルに運ばれてきた。

「いったい何が始まるの?」と困惑する私たち。「こいつら何者なんだ?」といわんばかりの視線を浴びせてくるスタッフたち。他人からの視線というものを海外でもこれほど感じることがあるのか、肩身が狭いとはこういうことか、と痛感した。

「絶品のタダ飯」を食べる私たちに彼は、「お土産だよ」と高級デーツ3粒(オレンジピール・ピスタチオ・クルミ入り)を袋に詰めて用意していた(写真)。あまりにも現実離れした夢のような話なので、席を立って店を出るまで何だかそわそわ落ち着かない。


彼から「このレストランはサウジアラビア発だよ。一番大きいのはドバイモールの中。15年前に来たときのドバイには何もなかったけど、今は中東諸国はもちろん世界中から労働者が集まる」など話を聞いて最後にすっと差し出された名刺には・・・

「General manager」つまり「総支配人」の文字が。想像を遙かに上回ってきた。

なんという不思議な出会いだろうか。一瞬だけ石油王に近づいた気すらしてくる。料金は一切要求されなかった上に、「次にレストランに来るときはいつでも連絡して」とまで。あっけにとられた。

続く





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