マイゴジ感想①

敷島の戦争は終わっていない。いや、復員兵の戦争は終わっていない。ランボーかな?

敷島だけじゃなく、復員兵や技術士官、工廠や兵器工場で働いていた戦争に関わった全ての人にとって戦争はまだ終わっていなかったからこそ、ゴジラという国家存亡の危機に戦争の延長戦のようなものを感じていたはずです。というかあのゴジラは本土決戦のメタファーだったんじゃないかと思うくらいです。そして特に復員兵は戦争の傷を負っていますから、この作品はゴジラと対峙することで日本が戦争神経症やPTSDから克服していく物語だったと思います。初代ゴジラは戦争や核兵器のイコンなのでそこは原点回帰なんだと思います。

作中では敷島が大戸島での体験からPTSDを患います。夢の中でフラッシュバックしたり、典子に「自分は生きているのか死んでいるのかわからない」と言ったり、海上でゴジラに機銃を撃つのに手が震えてためらっていたりと、敷島はゴジラに襲われたことと、特攻から逃げて生き延びてしまったことに対して死の恐怖と羞恥心に苛まれていますが、これは典型的なPTSDの症状です。PTSDの治療には心理的な安全がまず必要とされていますが、敷島は典子や明子、秋津や野田といった人々によってこの心理的な安全を獲得していきます。そして、戦争やゴジラといった自分の心的外傷の経験を語ることで、紆余曲折しながら自分の心の傷と向かい合っていきました。そのような心の準備を整えた上で、特攻とゴジラという自分を苦しめる対象と戦い勝利します。さらに、戦時中には無かった脱出装置が作られていて、それで敷島が生還するというのはカタルシスだけではなく、戦後という時代を象徴させることで、戦後民主主義の成果と価値を表したものだと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?