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神奈川県でコロナにかかるということ

2022.07.30(土)

朝から喉だけが妙に痛い。熱はない。夜にいびきでもかいていたのだろうか。念のため風邪薬を飲んでおく。

この日はお世話になっている人が格闘技の大会に出るので楽しみにしていた。肉を焼き、ビールを片手に試合の配信を見る。夢中になって全試合見てしまった。

就寝後、あまりの体の熱さと痛みで目が覚める。熱を測ると38度だった。

2022.07.31(日)

翌朝もあまり熱は下がらない。全身が痛い。こんなに前触れなく高熱が出たのは、過去にインフルエンザにかかった時だけだ。私は風邪をひいてもほとんど熱が出ない体質なので、間違いなく風邪以外の感染症にかかったと確信した。

神奈川県の「新型コロナ対策パーソナルサポート」のLINEから、サポートダイヤルに電話を掛ける。なかなかつながらない。何度かかけなおした後にようやくつながり、突然の発熱があることを伝えると、発熱外来に掛かるよう案内された。

だが、日曜日なので紹介できる病院はほとんど無いとも言われた。紹介された病院は1件だけで、自宅からかなり遠いので通うのを断念。駄目元でかけた地元の病院もまったく電話がつながらないのであきらめた。

そうこうしているうちに、同居家族も発熱し始めた。職場に「新型コロナウイルス感染症の疑いがあるのでしばらく休む」と連絡を入れる。

2022.08.01(月)

家族もサポートダイヤルに連絡して発熱外来の紹介を受けたが、どの病院も混雑していて、電話の呼び出し音すら鳴らないありさまだった。1件だけつながったが、朝9時の時点で予約がいっぱいになってしまったので、もう受け入れができないといわれる。

私のほうはオンライン診療が可能な病院に予約を入れた。こちらもかかりつけ患者以外を受け付けてくれる病院はほとんどなく、初診でも予約可能なところは1件だけだった。

就寝中、あまりの喉の痛みに何度も目が覚める。
うがいをし、のど飴をなめながらなんとかやり過ごし眠りにつく。


2022.08.02(火)

オンライン診療は期待外れだった。まずは抗原検査キットを自前で手に入れて、その結果が出ないと何もできないと言われたのだ。

最寄りの薬局何軒かに抗原検査キットの入荷を問い合わせたが、どこも品切れであった。発熱外来にも相変わらず電話がつながらないし、打つ手が全く無くなったことに呆然とする。

仕方がないのでインターネットで抗原検査キットを注文。信頼性の低い「研究用」ではあったが、神奈川県の自主療養システムでは認可を受けていない研究用キットの結果でも受け付けるとのことなので、購入を決めた。

そうこうしているうちに家族の発熱がひどくなり、39度以上まで上がってしまった。

救急相談ダイヤル(#7991)にかけると、緊急性が高いのですぐ救急車を呼ぶように指示される。
そして119へかけたところ「救急車が出払っているので1時間以上かかる可能性がある」と伝えられた。とんでもないことになってしまったと思った。

しかし、最後の頼みの綱と思った救急車だったが、私たちを余計に絶望させる結果となってしまった。

救急隊曰く、どこの医療機関も帰りの交通手段がない患者を受け付けたがらないというのだ。

仮にこのまま病院に連れていかれて、コロナ陽性と診断されたら、タクシー含め公共交通機関に乗れなくなる。
知り合いに迎えを頼むか、それができないなら歩いて帰ってもらうしかない。それが救急隊の回答だった。

私たちは遠方から越してきてそこまで間がなく、近所に友人も知人も住んでいない。職場の仲間も私の自宅から離れて住んでいるので頼めない。そして公共交通機関が発達している地域なので自家用車を持っている人も少ない。

それ以前に「コロナかもしれないから車出して」と言って引き受けてくれる友人・知人がそこまでいるものだろうか?

私たちは医療機関に掛かることは無理で、帰りの手段を考えるとデメリットが多いと察したので、救急隊には帰ってもらうように頼んだ。

すると今度は不思議なことに、なかなか帰ってくれない。「何とか知り合いに頼んで…」と同じ事ばかり繰り返すので、私も家族も立腹してしまい、ちょっと揉めそうになってしまった。口を開くだけでかなり辛い状態だったので、救急隊に同じことを何度も繰り返し話さなければいけないのが苦しかった。

救急隊としては何もせずに帰ることができないそうなので、とりあえず体温と血圧と酸素濃度を測ってもらうことになった。
「受け答えもできてるので大丈夫だと思います」と言われたが、それを聞いて私は、会話もできないレベルで衰弱していないと搬送されないのだなと思った。そういう人は自力で救急車を呼ぶ力もないから、ただ苦しみ抜くだけだろう。

この日も夜中に何度も激しい喉の痛みで目が覚める。あまり眠れない。


2022.08.03(水)

一日千秋の思いで待っていた抗原検査キットが届く。家族の検査結果は見事に陽性であった。

私のほうは陰性。だが、家族と私で全く同じ症状が現れていたので、新型コロナに感染していないことはまずありえないだろうと思った。

神奈川県は自主療養受付システムを公開している。Webで個人情報と名前を書いた検査キットの画像をアップロードすると、自主療養者として必要なサポートが受けられるというものだ。家族は早速登録を始めた。
私は念のため、抗原検査キットを再注文した。


2022.08.04(木)

必要なサポートが届く、というのは嘘っぱちである。食料の配布がされるというので何度も何度も専用ダイヤルにかけたが全くつながらない。
呼び出し音すら鳴らない。なぜナビダイヤルにしなかったのか。
幸い親族から食料を送ってもらえることになったが、こうやって他人のリソースにただ乗りするだけで何もしないのだろうと思った。何のための税金だ。

再検査の結果、私もやはり陽性であった。熱は下がったが、日替わりで様々な体調不良に苦しまされる。喉がひどく腫れてピンポン玉を飲み込んだかのような不快感がずっとあり、咳のし過ぎで肩や首がゴリゴリに凝っていた。耳にキリを突っ込まれたような痛みが走り、ずっと耳鳴りがする。会話が聞き取りづらい。

自主療養システムの登録を始めるが、本人確認書類や抗原検査キットの画像をアップロードするところで何度も引っ掛かる。アクセス集中によるエラーである。なんで役所関係のシステムは毎度毎度懲りずに脆弱なのだろうか。

2022.08.06(金)

頭痛や喉の痛みなど目に見える症状は減った。だが回復した気はあまりしない。

退屈しのぎに椅子に座って絵を描いてみる。1時間ほど経過したところで息切れと倦怠感を覚え寝込む。
食事をしていても途中で息切れしてしまいあまり食事が喉を通らない。

食事に関しては本当に困っている。新型コロナに感染してからというものの、「食」に対する関心が全く無くなってしまったのだ。最後の食事から20時間ほど経過しても何か食べようという気持ちにならず、食欲がどんなものか忘れてしまった。飲み食いするのが大好きな私だったのに。

味覚、嗅覚もおかしい。

味覚は雑になった。
バニラのアイスは「冷たい」、コーヒーは「香ばしい風味がする気がする」、カレーは「ひりひりする」としか感じない。その他の食べ物も昔に比べると味が薄いというか、ぼんやりしていて全体的においしくない。何かを口に運ぶとき「今度はおいしいだろうか」と不安になることが増えた。

嗅覚も困っている。蚊取り線香の香りがビニールを燃やしたように感じて苦痛である。以前は夏を感じて好きな香りだった。お気に入りのラベンダーのマッサージオイルも、鼻をよほど近づけないと香りを感じない。少し使うだけで部屋にラベンダーの香りが満ちるほど質が高いオイルだったのに。

息苦しさに関しても、このままでは趣味のキックボクシングに復帰できないのではないかと不安である。発熱外来に掛かれなかったことを思うと、後遺症の診察を受けられる希望はあるのだろうかと思ってしまう。


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