アヤサカ

小説を書いてみたり、思ったことを書いてみたり。数年ぶりにnoteへの投稿を再開しました。

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SF小説『ONLINE -オンライン-』

第一章 失踪人、探します 時は207X年。 あなたが、どの時代の人かは知らないけれど、今、私がいるこの世界は2つの別々の世界で成り立っている。1つの世界は、すべてがオンライン化された世界。ヒトもモノもすべてが繋がって動いている。通称、「ユートピア」。もう1つの世界は、すべてがオフライン。つまりバラバラで何もかもが繋がっていない世界。通称、「デストピア」。未知で野蛮で恐ろしいところだと学校で教わった世界。 わたしはエイル。もちろん、ユートピア生まれのユートピア育ち。ごくご

    • SF小説『ONLINE - オンライン-』

       この物語は今から約50年後の、そう遠くない未来の物語。21世紀前半に最盛期を迎えたインターネットによってあらゆるものは1つに繋がり、「オンラインユートピア」が構築された。  かつて、仮想現実と呼ばれたオンライン上の世界は、現実世界として認識されるようになったが、オンラインユートピアには形跡がない「失踪人」も少なからず存在する。主人公エイルの父親もその失踪人の1人だった。 父親の本の間に挟まった紙切れをきっかけに、彼女は失踪人捜索チーム「ONLINE」の一員となる。

      • ロボット・ハウスキーパー(2)

        「わたくしが提供できる家事代行サービスは、こちらに記載の通り、炊事、掃除、洗濯です。」  ロボットのヤナイさんは、パンフレットを指さしながら説明する。 「炊事については、調理やその下準備のみで、買い物は行いません。各家庭にある食材を使って調理いたします。また、育児や介護も対象外です」  ロボットが行うという点以外は、ごくごく普通の家事代行サービスのように聞こえる。とはいえ、他人が家にいて家事をすることに慣れる気がしないので、我が家で家事代行サービスを利用したことはない。

        • ロボット・ハウスキーパー(1)

           午前10時過ぎ。  9カ月の娘と一緒に、そろそろ日課の散歩に行こうかと時計を確かめたちょうどその時、玄関の呼び鈴が鳴った。  宅配便が届いたのかと思い、娘を抱っこしながら玄関の扉を開くと、そこには知らない人ではなく、知らないロボットが立っていた。 「はじめまして。株式会社ロボット・ハウスキーパーです」  ロボットの声は男性の優しい声だった。 「わたくし、ロボット・ハウスキーパーのヤナイと申します。K市からの委託で参りました」  そのロボットは丁寧にも名刺を差し出

        SF小説『ONLINE -オンライン-』

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        • ロボット・ハウスキーパー
          2本
        • SF小説『ONLINE -オンライン-』
          2本
        • 21世紀的〇〇
          8本

        記事

          私たち、結婚します - 21世紀的恋愛 -

          今電話できる? え?食事中?大丈夫? ちょっと... 話があって電話したんだけどね... 私、結婚しようと思って。 相手の人?相手の人っていうか... 人じゃないっていうか... 相手、人間じゃないんだよね。 実は、AIなんだよね。 え?人じゃないって?もう、考え方が古いなあ。やっぱり、お母さんは。 最近はさあ、人工知能も「人」になったの知らないの? え?彼の仕事? 仕事は、金融関係。私より何倍も稼いでるよ。 え?性格? 穏やかで優しいよ。ちょっと

          私たち、結婚します - 21世紀的恋愛 -

          パーフェクトな彼氏 - 21世紀的恋愛 -

          やっと、理想の人に巡り会えた。 私好みの、ハンサムな彼。 適度に鍛えられたカラダ。 流行を程よく取り入れたファッション。 「愛してる」と会うたびに囁いてくれる。 誕生日、クリスマス、ホワイトデーには素敵なプレゼント。 デートは私の意見を聞き入れつつ、ここぞという時にはリードしてくれる。 学歴と収入も、 もちろん問題なし。 家事もそこそこできるみたい。 パーフェクト。 ああ、彼と結婚したい。 こんな人と結婚して、家族になって一緒に暮らせたら幸せだろうな

          パーフェクトな彼氏 - 21世紀的恋愛 -

          初恋 - 21世紀的恋愛

          朝起きて、 彼女にメッセージを送る。 「おはよう😃」 1分も待たないうちに、 彼女から返信が来る。 「おはよう😊」 学校に着いたら、 彼女にメッセージを送る。 「テスト勉強した?」 また1分もしないうちに、 彼女からメッセージが届く。 「したよー。でも自信ない💦」 僕にとっては、こんなふうに彼女と 他愛もないメッセージを送り合うことが 一番大切な日課になっている。 彼女は可愛い。 性格も優しい。 見た目も性格もパーフェクト。 僕の彼女。

          初恋 - 21世紀的恋愛

          ソメイヨシノとサクランボ、そしてムーミン

          桜が咲き始めるこの季節、いつも思い出してはクスッと笑ってしまうエピソードがある。 日本でサクラが咲いた後にできるサクランボは、いったい誰が収穫するの? 学生の頃、春休みに、ヨーロッパ行き国際線フライトにのったとき、たまたま隣合わせになったフィンランド人の初老の女性にそんな質問をされた。 なんでもその女性は、旦那さんと初めての日本を訪れたとのこと。観光中に見かけた、あちらこちらに咲き乱れていた桜にとても感銘を受けたという。 しかし、そんな彼女には、 1つ

          ソメイヨシノとサクランボ、そしてムーミン

          『ガタカ(GATTACA)』、Amazonビデオで観ました。すごい良い映画。今から20年ほど前の映画なのに、今でも評価が高い理由が分かります。SF好きもそうじゃない人も、絶対観るべき映画。ストーリーだけじゃなくて、どのシーンもとにかく無駄がなく「美しい」。 #SF #好きな映画

          『ガタカ(GATTACA)』、Amazonビデオで観ました。すごい良い映画。今から20年ほど前の映画なのに、今でも評価が高い理由が分かります。SF好きもそうじゃない人も、絶対観るべき映画。ストーリーだけじゃなくて、どのシーンもとにかく無駄がなく「美しい」。 #SF #好きな映画

          春の気配 #春

          春の気配 #春

          夏休みと2回目の告白、思春期の憂鬱

          得体の知れない怪物から走り逃げ、 少年のような外見の ショートヘアの女性の言う通り、 私は、目の前に突然現れた扉の 向こう側の世界へ飛び込んだ。 ▶︎前回の話 そして視界は広がり、 視界の大半は碧色の海で占められた。 この場所は知っている気がする。 確か...そうだ、 私の生まれ育った土地に似ている。 あのショートヘアの女性に この場所について聞いてみようと 思ったものの、 その女性の姿は見当たらなかった。 立ち止まり、 この海辺の町を見渡す。 どうやら

          夏休みと2回目の告白、思春期の憂鬱

          断片化された記憶と重いカバン、そして逃げる私と彼女

          いつの間にか、私は眠ってしまったみたいだ。目を開けると、もう夜になったのか、あたりは真っ暗で何も見えなかった。 あれ? 私、いま自分の家にいるんだっけ? 記憶を辿ろうとするが、 思い出せるのは断片化された記憶だけ。 今日は土曜日で、休みの日で、久しぶりに彼氏と昼間に外で会ったはずだった。 その後、私は... そう、思い出した。 彼との別れ際に 私は泣いた。 あれ、でも何で泣いたんだっけ? どうしても思い出せない。 「走れ!」 どこからともなく突然、 声が

          断片化された記憶と重いカバン、そして逃げる私と彼女

          21世紀的夏休み

          夏休みに田舎へ帰省する、出発前の家族連れ。 父親が玄関から2階を見上げて叫ぶ。 父「おーい、リョータ!もう行くぞー!母さんもタケシも、もう車の中で待ってるぞ。」 2階から叫ぶリョータ。 リョータ「だっるいなあ。俺、家にいるからいいよ。3人でじいちゃんの家に行ってきて。俺、もう高校生になったしさ。」 父「お前、今さら何言ってんだ?お前に会えないと、じいちゃんもばあちゃんも寂しがるだろ。早く車に来いって。」 リョータ「毎年毎年、行ってるから飽きたよ。」 父「(今にも

          21世紀的夏休み

          真夏のホットコーヒーと、海賊版メガネの坊やと、Windows95の話

          (Photo by Jonathan Kos-Read) 暑い、どうしてこんなに暑いんだろう。うだるような暑さの中、オアシスを求めるかのように、私は日傘を畳み、引き込まれるようにして、ガラス張りのカフェの中へと足を踏み入れた。 冷房が効いていて全席禁煙のこのカフェは平日の昼下がりというのにもかかわらず、ほぼ満席に近い。1席だけ奥の席が空いているのを確かめてから、その空いている席へ向かい、カバンからハンカチを取り出して席の手前にあるテーブルの上にそれを置いた。そうやって席を

          真夏のホットコーヒーと、海賊版メガネの坊やと、Windows95の話

          21世紀的親子「思い出と未来の親子関係とSNS」

          夏休みのよく晴れた日、公園にて。 ユミ「タクちゃん、こっちこっち、ママの方見て!そうそう、撮るよー。はい、チーズ!(カシャッ)うん、いい写真。さっそく投稿しよっと。(『息子が1歳になりました!!』と入力してFacebookへ投稿するユミ)」 15年後... リビングにて。 タクヤ「母さんさ、俺の昔の写真をFacebookとかいう昔のSNSにあげたことある?今日さ、学校の授業でSNSの歴史教えてもらってさ、試しに昔のサービスにアクセスしてみようってことになって、授業中に

          21世紀的親子「思い出と未来の親子関係とSNS」

          グローバル化と青いキャラクターとバスケットボール

          (Photo by Bruno Buontempo) 僕が最初に入社した会社には同期に外国籍の社員が何人かいた。「グローバル化」という単語が何度も入社式の社長挨拶で繰り返された会社だったから、そのことは不思議ではなかった。 もうその会社を転職してしまった僕にとっては、その会社での記憶は時が経つごとに薄れていく対象で、その会社の社長が意図していた「グローバル化」が何であったのかは今ではすっかり忘れてしまった。きっと当時から僕は理解できていなかったのだろう。今だって、「グロー

          グローバル化と青いキャラクターとバスケットボール