「モダンラブ・東京」の感想
モダンラブ・東京とは
本家のアメリカ版が大好きで、東京を舞台にしたらどうなるんだろうと恐る恐る鑑賞して、ネタバレしない程度に感想をまとめることにした。
1. 「息子の授乳、そしていくつかの不満」
母乳だけが息子とのつながりと信じて、仕事に復帰してバリバリにこなしながらも搾乳機を手放すことなく授乳し続ける女性の話。
子供が小さかったり軽かったりすると、おっぱい飲んでる?ってまるで母親が悪いような言い方される。母乳で頑張ろうとすると、頑張りすぎだよと理解してもらえない。孤独。きっと家族がいても孤独。こういうことほど、家族や親と感情的にやり合ってしまう。
もしわたしに子供やパートナーができたときに、怒りも喜びも悲しみも全部全部隠さず表現出来たらいいなって思った。爆発しそうな悲しみを、シェアできる自分でいたい。
2. 「私が既婚者と寝て学んだ事」
セックスレスによって離婚した女性が、既婚者とアプリで出会ってセックスしてどうして不倫なんてするの?って聞きまくる話。(すごく雑な説明)
”愛の形はそれぞれ”なんてもう使い古された言い回しだ。それでも、どこかで愛の形は唯一でそこに合致しない自分、自分達は出来損ないなんだと思う部分てある。
セックスの重要性は人それぞれだし、在りたい夫婦関係も千差万別。抱えてる問題もバラバラ。そのことをわかりやすくリアルに伝えてくれる物語だった。
主人公のようにわたしも本音で対話すれば良いじゃんというタイプだけど、相手が傷つくとわかっている本音はなかなか言えないよね。それでも対話できて、セックスの重要性も同じ人に出会いたいと望むだけは望んでみる。
余談だけど、恋愛感情の絡まない肉体関係だからこそ、本来ならタブー視されるセックスについても本音で話せるあっけらかんな感じ、すごく好きなんだよね。あの空気は他人だからこそなのかな。
3. 「最悪のデートが最高になったわけ」
63歳の女性が初めてマッチングアプリでデートをする話。
久しぶりに来る原宿が様変わりして驚く様子や、昔通ったお店を探すところなどとてもリアルだった。また20代後半のアプリで初デートしたと思われる男女の会話もとてもリアルで苦笑い。
マウントをとってくる男性にピシャリと言える女性ってどのくらいいるんだろう。わたしはお酒入ってたら絶対言っちゃいそう。
「ってか、さっきからちょいちょい俺って、俺の場合はって話してますよね?笑」とか絶対言っちゃいそう。
シニア層の恋愛、ニーズないのかな。あまりテレビではやりたがらないけれど、わたしはもっと世の中に溢れてもいいし、それは希望になるとも思うな。あと、木野花さんがすごくカッコよくて、あんな女性になりたいなって思った。
4. 「冬眠中のボクの妻」
ウツになった妻を見守る夫の話。
荻上直子さんの脚本&監督作。荻上さんといえば「かもめ食堂」な訳だけど相変わらずご飯は美味しそう。そして、編み物も出てくる。これに関しては「彼らが本気で編むときは、」が大好き。最後◯◯しちゃうとこも含めて。
穏やかで、何か特効薬や大きな転換点を描くことなく、日常を流れゆく空気が描かれていく。ほんのちょっと変化したときの、そのほわっとしたときの夏帆さんが素敵だった。
今思うとわたしはウツだったことが何度かあるかもしれない。波打ち際のトドだったことがある。一人で乗り切ってしまったけれど、あんなふうに寄り添えてもらえたら、最初は罪悪感で辛いけどやっぱり幸せって思うんだろうな。
5. 「彼を信じていた十三日間」
仕事に人生を捧げてきた50代の女性が、同世代の男性と知り合い親交を深めていくけれど、男性には秘密があって、、、、という話。
完全に好みの話になるけれど、わたしはあまり黒沢清監督の作品が得意ではない。ホラーの予感と、心が不安になるカメラワークが得意でないのだ。あと、人物が俗っぽさがなさすぎて怪演に見えてしまう。
そういう意味で男性役のユースケ・サンタマリアさんはハマり役だった。淡々してるだけなのに、なんだか不協和音を感じるのだ。そこに突っ込まず、受け入れようとする永作博美さんもすごく説得力のあるお芝居だった。ちぐはぐしないで映像として成立するのは縁者の力量によるものなのだろう。
6. 「彼は私に最後のレッスンをとっておいた」
オンライン英会話で出会うアメリカ在住のイギリス人女性と日本在住の日本人男性の話。
自由気ままに英語のオンライン講師として働く主人公はとても現代的な生き方なのかもしれない。でも、オンライン英会話という現代的な場所で出会う二人には古風な空気も感じる。
会う前に電話やテレビ電話で仲を深める。いよいよ空港で出会ったときのあの感じ、すごくリアルだった。
わたしは匂いや存在感なども気になるから、オンライン上では恋には落ちない気がしているけど、あるのかなぁ?会話の相性と同じくらい抱きしめたとの感触も大事だ。
7. 「彼が奏でるふたりの調べ」
自分は何者にもなれない、夢なんてあったっけ?と思い悩む30代女性が、ふとしたきっかけで、高校生時代を思い出す話。
山田尚子監督のことは「平家物語」で知った。柔らかくも芯のある映像やふとした表情を捉える方だなと思っていた。
相手に指摘されて気づく癖ってある。”笑って気持ちを誤魔化す”それに気づくくらい近くで見てくれているって、なんだか恥ずかしいけど嬉しい。
主人公の女性が、自分の表現をしていくところがとても素敵だった。地味な一歩でも、本人にとっては清水ダイブな一瞬だったりする。そして勇気を出すとちゃんと返ってくる。そのことを再度思い出させてくれた作品だった。
まとめ
同性婚やシニアの恋愛、鬱などまだまだ日本のドラマではマイノリティとして扱われるテーマを意欲的に扱っている印象。それはつまり、まだメインテーマとしては日本のドラマでは扱えないテーマということもあり、ちょっと寂しくも思った。
演者陣も豪華で、監督陣も豪華。各監督の色もすごく出ていて、一つのシリーズで見る面白さもあった。
どの作品が好きだった??とか、この作品からどんな問いをもらった??とかそんな話をしてみたいシリーズです。ぜひ。
この記事が参加している募集
いつも温かいご支援をありがとうございます💕サポートしたいと思われるような文章をこれからも綴っていきます✨