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乳がんになった私 #21「断髪」

治療開始前に無事にウィッグを手に入れた私は、友人である美容師のYにウィッグのカットをお願いすることにした。

Yとは高校の同級生。私のバンドQaijffの撮影のヘアメイクを何度もお願いしており、そして東京の彼女の美容室にも何度も足を運んでいる。

初めてのウィッグ。絶対的信頼をおけるYに、私に似合うようカットしてほしいと思ったのだ。

実は、#13に書いた4月1日の東京ワンマンライブにもYは来てくれており、出演者全員の髪をセットしてくれた。この日のライブが終わるまでは乳がんのことを誰にも言わないと決めていたので、友人であるYに話せないでいることがかなりもどかしかったのを覚えている。

ウィッグのカットを快く引き受けてくれたYは、東京から愛知まで来てくれることになった。私が行こうと思っていたのに、ありがたすぎて泣けてくる。

そして私は、思い立ってYにもうひとつお願いをした。

「脱毛する前に、おしゃれ坊主にしたい。お願いできるかな?!」

LINEでそう伝えると、Yはウィッグも地毛のカットももちろんOK!と即引き受けてくれたのだが、「坊主!?」と返事が。

私も勢いで坊主と言ったものの、ベリーショートぐらいでも良いのかも?と思い、「坊主とまではいかず、やっぱりベリーショートにしようかな」と参考画像を送った。

ベリーショートにYも賛成だったようで、「いいね♡」と言ってくれた。


実は乳がんを公表したタイミングで、ありがたいことに東海テレビから取材の依頼をいただいていた。担当の方に、脱毛前に地毛とウィッグのカットをするのだと話したら、ぜひその現場を撮影させてほしいと連絡が来た。


そんなわけで、撮影ありでの断髪式。

そう、散髪というより、気持ち的には断髪。

日程は4月23日に決まった。

(#19で西加奈子さんの「くもをさがす」を一気読みした翌日になる)

当日、Yは1歳半の息子を連れて愛知の自宅まで来てくれた。

家の中で髪を切るので、床にシートを引き、椅子と鏡を準備し、さっそくハサミを入れていく。

バサバサバサ。迷いのない手つき、さすがY!

取材のカメラを向けられて「こんなに短くするのは初めてだよね」とY。

私はいつかベリーショートにしてみたいとは思っていたのだが、こういう理由ですることになるとは。

あっという間に出来上がり、鏡を見て私は、自然と笑顔が止まらなかった。

めっちゃいい。めっちゃ気に入った。

この時の髪色はピンクベージュで、少し根元が伸びていたため、坊主にしていたら地毛の黒髪坊主になっていたと思うのだが、ベリーショートにしたことでピンクベージュの髪が残ってとてもいいかんじになった。

続いてウィッグの方も、私の輪郭に馴染むよう、いいかんじに素早くカットしてくれた。

やっぱりYにお願いして良かった!嬉しい!幸せ!

大好きな友人に、治療前に髪を素敵にしてもらえて胸いっぱいだった。

脱毛して、今後また髪が生え揃ってきた時にこそバズカット、おしゃれ坊主にチャレンジ出来るかな?その時はまたYに相談しよう。


カットと取材を終え、その日はもう一つスペシャルな予定があった。

私は内田と豊田スタジアムへ向かった。

(#22へ続く)
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