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乳がんになった私 #10「幸せ者」

診察室を出てから、看護師さんに別室へ呼ばれた。

今後の治療の様々な副作用についてや、髪が抜けた時のためのウィッグのことなど、その他にも色々な説明を受けた。

看護師のKさん、初めてこの病院を訪れた時もKさんが担当だった。

(#4の針生検の時に先生の補助をしていた看護師さん)

私はこの看護師さんがとても好きだ。

たくさんいる看護師さんたち、その後お世話になる方々もみんな優しくて親切だが、Kさんが担当だと嬉しくなるし、安心する。

Kさん「他に聞いておきたいことはあるかな?大丈夫?なんでも言ってね。」

私「大丈夫です、ありがとうございます。」

私の心は落ち着いていた。


病院を後にし、父の待つ実家へと向かった。

母「全摘することになるとはねえ…。」

私「うん、仕方ないね。気持ち的に、再建しない方向だなあ。」

母「えっ?!そうなの…?!」

母はかなり驚いていた。

私は、全摘に対してのショックはあまり大きくなかった。手術が怖くないわけではないが、乳がんかもしれないとなった時点で全摘することになる可能性もあるよな、と前もって考えていたからかもしれない。

そして再建に関しては、私は再建をする方が自分の身体に違和感を持ちそうだなと思った。人それぞれの考え方なので、再建したい人はもちろん自分のためにするのが良いと思う。私の場合は、切った傷口と共に生きる方が自分らしいと思えそうだなと。

実家に到着し、父と母と内田と私の4人で夜ごはんを食べた。

父に、今日の話を報告。そして、内田と事実婚をしようと考えていることを伝えた。(実はだいぶ前から考えていたことなのだが)

がんに対しての話や、今後についての話、家族と前向きに色々な話が出来て、穏やかでとても良い時間を過ごせた。


幸せだなあ、と思った。


乳がんにならないで済むなら、もちろんなりたくなかった。

だけど、家族やパートナー、大切な人やものが、私の人生にはある。

私は幸せ者だ。

(#11へ続く)
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