乳がんになった私 #20「救われている存在」
抗がん剤治療と言えば、脱毛。
髪が抜けてしまう。眉毛も、まつ毛も。全身の毛が抜ける。
抗がん剤はがん細胞を攻撃すると同時に正常な細胞にもダメージを与えてしまう。分裂が活発な細胞に強く影響するようで、細胞分裂がとても盛んな毛母細胞(毛を作る細胞)は影響を受けやすく、脱毛が引き起こされるらしい。
薬の種類や組み合わせ、使用量によって脱毛しないこともあるらしいが、今回私が受ける抗がん剤は確実に脱毛すると言われた。
ところで “脱毛” と言えば、美容のための脱毛、脱毛サロンに通ったり、自宅で使用する脱毛機器もたくさん販売されている。
乳がんが発覚する以前、私もやはり脱毛サロンに通っていた。自ら望んでお金をかけて毛を失くす一方、これから治療によって起こる望まぬ脱毛…。“脱毛” について考えていたらなんだか複雑な気持ちになった。
ただ、この時点での私は髪を失うことに対してのショックや恐怖心はあまりなく、どうせならお洒落なウィッグ生活を楽しんでやる!と意気込んでいた。
きっと治療が始まってからはバタバタするだろうと思い、早めにウィッグを準備することにした。
もちろん初めての経験。ネットで調べれば色んなウィッグが出てくるが、種類や金額も様々。人工毛、人毛100%、人毛と人工毛のMIX…。実際にどんなものを購入したら良いのかなかなか判断が難しい…。
そんな私の相談にのってくれた相手がいる。
矢方美紀ちゃんだ。
(#9の最後の方に書いた、乳がんのことを発信してくれている人とは彼女のこと)
美紀ちゃんとはラジオ局で初めて挨拶を交わして以来、ライブを観に来てくれたり、仕事の現場で一緒になったり、私のソロライブにゲスト出演してもらったり、彼女のイベントに出演させてもらったり、彼女の舞台を観に行ったり、さらには内田が楽曲提供をさせてもらったりと、たくさん関わらせてもらっている。
ちなみに内田が楽曲提供したこの曲は、私もピアノでレコーディングに参加しており、ライブで美紀ちゃんと一緒に歌ったりもした。(とても良い曲なのでぜひ聴いてみてほしいっ)
私は美紀ちゃんにウィッグについて相談した。
安価なおしゃれ用ウィッグはすぐにバサバサになってしまうらしく、そして毛のない頭皮にはどうやら痛いらしい。その点、やはり医療用に作られているウィッグは頭皮に優しい設計で負担が少ないそうだ。
私は、教えてもらった店の中のひとつ、アクアドールでまずは無料試着サービスをネットで申し込んでみた。
届いた2種類のウィッグをさっそく家で被ってみたのだが、サイズ感はこれでいいのかどうかなど悩んだ。決して安い買い物ではないので、これ!と決めるのが難しかった。
名古屋に店舗があると知り、実際に行ってみることにした。
接客をしてくれた店員さん自身もウィッグを着用していたのだが、かなり自然で最初は分からなかった。被り方のコツを教わり、何種類も試着させてもらい、サイズ感も見てもらった。ウィッグだけでなく、ウィッグの中に被るキャップ、専用のシャンプーやオイル、専用の櫛なんかもあることを知り、全部まとめて購入した。
最近ではネットで買い物を済ませることが多い私だが、今回に関しては直接お店に行ってみて良かった。直接アドバイスをもらえることのありがたさ。
ちなみにそこで買ったウィッグは、人毛&人工毛ミックスの落ち着いたブラウンのボブ。
私は今まで、基本的にハイトーン、金髪やピンク系やグリーン系、パープル、ブルー…とにかく派手な髪色ばかりしてきたので、逆に落ち着いたブラウンのウィッグは新鮮だった。
無事に医療用ウィッグを購入した私は、もう一つくらいは派手なウィッグが欲しいなと思い、たまたまインスタで見つけたNEJIKOというブランドの金髪のウィッグも購入した。(こちらはネットで)
さらに、ウィッグではなくヘッドスカーフも購入した。こちらもネットで見つけたLINOLEAというブランド。
NEJIKOも、LINOLEAも、脱毛症の女性が立ち上げたブランドだった。脱毛症の方や、抗がん剤によって脱毛してしまったたくさんの方が、きっとこれらのブランドに救われているんだなあと思った。
私は無事にウィッグを購入したことを美紀ちゃんに報告した。
それからも、ことあるごとに様々な相談に乗ってもらっている。
大袈裟ではなく、私は彼女の存在にとても救われている。
乳がんのことを発信してくれて、ありがとう。
(#21へ続く)
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