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乳がんになった私 #28「髪を失う」

抗がん剤による脱毛がいつ始まるのか、毎日少しドキドキしていた。

初回の治療から2週間後くらいに脱毛が始まることが多いとは聞いていた。

ちょうど2週間後の5月16日、髪を引っ張ってみたがまだ全く抜ける様子がない。

もしかして、抜けないなんてこともある…?体質とか。いやいや、そんなはずないよな。絶対に抜けるって言われたし。でも、もしかしてのもしかして…?


そんなほんのわずかな期待というか疑いを抱いた私だったが、その翌日、しっかりと脱毛は始まった。

最初は、髪を洗った時に少し抜け毛が多いな?と思うくらいだったが、日に日に抜け毛の量が増え、どんどん加速した。

頭を触るとパラパラと髪が落ちる。シャンプーの時なんかは本当にキリがなく、流しても流しても髪が手にべったりとくっついてくる。

髪を乾かすのがこれまた大変で、ドライヤーの風で髪が散らばって仕方がない。なんとか良い方法はないかと、不織布キャップを被った上からドライヤーを当ててみたりもしたが、うまく乾かなくて苦労した。

ほとんど髪が抜けてしまえばドライヤーいらず、自然乾燥で乾くのでラクだったが、それまでが本当に大変だった。

毎日、抜けた髪をパートナーの内田に見せては「ねえ、見て見てっ!こんなに抜けた!すごいね、薬の威力…!」と驚きを伝えていた。

当時は髪が抜けていくショックはそれほど大きくなかった気がしていたのだが、今振り返ってみると、気丈に振る舞っていたところもあったように思う。

どんどん失くなっていく髪、変わっていく自分の見た目。

分かっていたことだし、仕方のないことだし、あまり気にしていないという明るいテンションで内田に話すことで、心を保っていた気がする。

内田は「髪が失くてもきみはきみだし、抜けてもなんか違和感がないな。」と言った。

うん、そうだよね。乳がんになる前もなってからも、髪があってもなくても、私は私。

(#29へ続く)
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