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乳がんになった私 #7「MRIミュージック」

針生検をした右胸の痛みは、日が経つにつれ徐々に弱まっていった。

とはいえ、度々チクチクと痛むしこり部分。元々の痛みなのか、針生検の傷が痛いのか、とにかくチクチクする度に気分は重くなる。

その週は色々な予定が入っていた。

仕事の打ち合わせ、ポッドキャスト番組の収録、週末(3/18)には私のバンドQaijffがオフィシャルサポートソングを担当するサッカーチーム名古屋グランパスの試合で、今季のサポートソング「たぎってしかたないわ」のスタジアム初演奏が決まっていた。

スタジアムで、チームスタッフの方やたくさんの人に会う。なんだか元気がないなと思われたくなかったので、意識的に明るく振る舞っていたように思う。

もちろん本番は集中してパフォーマンスできたし、試合中はサッカーに熱中していたが、やはりふとした時に心ここに在らずというか…どうしても病気のことをぼーっと考えてしまっている自分がいた。


翌週、MRIの検査を受けに再び病院へ。

造影剤を使っての検査。検査着に着替え、腕に点滴が繋がれた。

大きい音が出るとのことで耳栓を渡され、うつ伏せで検査台へ。

検査中に顔を動かすと胸部も動いてしまう可能性があるので、20分間ほど動かないように、とのこと。

そう言われるとなんだか緊張する。途中で鼻がムズムズしたりしないかと心配になった。

MRI開始。

ビービービービービー

ビーーーーーーーーーーッ

耳栓をしていても爆音!色んなリズムで色んな音が次々と鳴り響く。

絶対音感の私の耳には…

ドードードードードー

ファ#ーーーーーーーーーーッ

のように、全ての音が音階で聴こえた。

終わりがけに、なぜか少し咳が出た。動いちゃダメだと思い、大きく咳き込まないようになんとか耐えた。造影剤に対するアレルギー反応だったのかもしれないが、それほどひどくなかったのでこの時は気にしていなかった。

音とリズムを聴いていたら20分はあっという間だった。こんな楽しみ方があったとは…!(決して楽しいものではないが)

MRIを終え、この日は母と内田と3人で、がん封じ寺と言われるお寺へと向かった。

母が今回のことでこのお寺を知り、数日前には父と2人で私のためにご祈祷を受けてきてくれたらしい。今回は私本人が行ってご祈祷を受けよう、というわけだ。ちなみに私はここ数年、初詣もろくにしないくらい神社仏閣からは縁遠い日々を送っていた。

お寺に向かう道中、まだ少し咳が出続けていた。30分ほどで治ったが、今後また造影剤を使う検査の時はアレルギーかもしれないことを伝えようと思った。

がん封じ寺に着いてまず目に飛び込んできたのは、たくさんの絵馬。身体の悪いところを書き、「〇〇がんが完治しますように」「無事に手術が終わりますように」「転移がありませんように」など、願いが書かれた絵馬が数えきれないほどたくさんぶら下がっていた。全国各地から、がんの人やその家族がこのお寺に訪れているようだ。

おごそかなご祈祷を受けた後、私もこの絵馬を書いた。

右胸、乳がん。願い事は…どうしよう。

母「まだ乳がんって確定はしてないから…乳がんじゃありませんように、とか…?」

私は迷った挙句、シンプルに “健康” と書いた。

やはりここでも少ない可能性にかけて、乳がんじゃありませんように!と書いて、やっぱり乳がんだった!となるのが嫌だった。

とにかく今後の自分が健康になりますようにとお願いをした。

がん封じ寺へ行ったことで、なんだか別の角度から病気のことを実感したようで、少し複雑な気持ちになった。自分が乳がんになって、こういったお寺を訪れることになるとはなあ、と。

(#8へ続く)
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