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全ては言葉ではなかった

言葉よ
言葉未然の熱に還れ
言葉になる前の迸り
継ぎ接ぎだらけの鼓動を抱え
貧しい喘ぎの路を辿れよ

言葉のために言葉になったものの前で倒れるお前
お前自身を満たすもので在りながら
なおも求めて然るべき水のように
言葉はここにあると言えるか

沈黙の靴裏からようやっと這い出て
口端に漏れ出る息を恥じながら
ああ
橙色に火照った暗闇に薄日を迎え入れる
縺れる舌が綴る音を悟られまいとするあまり
言葉は
ああ
言葉は足元に墜落する
先程までお前の中で滾っていた熱が
今静かに弔われるのだ

言葉よ
言葉に成り果てたものは
言葉から逃げおおせたものたちを忘れゆくのか
ただここに滾るものよ
お前をありありとさせるこの震えに生きながら
確かな明るみの中で出逢えた日には
しかめつらのまま目を合わせていよう
言葉のために言葉になったりするな
言葉のために死ぬな

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「点描と稜線」として主催している詩の合評会「点描を持ち寄る」にて提出した一篇です。
合評会があったから最後まで書き切れました。
でもやっぱりまだまだ書き足りないな。
書きます。

【点描と稜線】
https://twitter.com/tenbyou

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