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不安と話す、不安と散歩する

 不安のかたまりを小分けにする。
ひとつずつと膝を突き合わせて、ひとつずつに時間と心を分ける。ひとつに取り組んでいるあいだ、他の不安とは向き合えない。向き合えないのだから、向き合わない。ひとつひとつじっと見て、考えたり、ひらめいたりしながら、一緒に移動してゆく。すこしずつ見えてくる。わかってくる。なんとなく大丈夫になる。

 ひとつの不安が大丈夫になったかろやかさをよろこびながら、残っている他の不安の隣へしゃがみこみ話をする。そのうちまた一緒に歩き出してみる。ゆっくりのびやかに、途中でひとめぼれしたり、思いつきで踊ってみたりする。不安を不安のままにしておかない。だって、つくることはたのしい。私は私が選んだすべてをなるべく愛していたい。

 つくることは、たのしい。
 だけどつくる前はまだ、つくったものはここにはない。そのことが心細くないわけじゃない。でも、まだ姿かたちが見えないそれを強く求める気持ちがちゃんとつくったものを、姿かたち、手に触れられる存在を引き寄せてゆけることを、私は私に教えてもらった。「丁寧な仕事」のギリギリラインを「できないかもしれない」を胸に抱きながら駆け抜けて作ったものたちばかりだ。白紙の上で、モニターの前でごうごう燃えていた自分を他人事のように振り返る。しかしもうすぐまたそのようなてんやわんやな日を迎えるだろう。今、今年一番の踏ん張りどころの真ん中でお茶休憩のような心地で、これを書いている。不安のかたまりが、だいぶんと小さくなったからたのしくてしょうがない。こんなこと書いておきながら発送間に合わなかったら格好悪いなあということも一応思う。思うけれど、真ん中にいるとき実は真ん中からいなくなることがすでにもうさみしい。もちろんつくり終えること、届けることができたときのよろこびは何にも代え難い。真ん中に留まっても、誰にも会えなかったらつまらないし、そのうちたのしくなくなるだろう。だから、真ん中から駆け抜けてゆく仕草を繰り返すことを生きてゆくことの真ん中に置いて走っているのかもしれない。でもそれもきっともうすぐ形を変えてゆくのだろう。あたらしくなってゆくことは、あたらしく試みること。たのしみな気持ちで、ひとつひとつ終えてゆく。生まれゆくみたいな心地で!

 絶賛制作中の「アドベントお手紙」もしかしたら追加で発注を受けられるかもしれません。クリスマスプレゼントはリクエスト制じゃなくなるかもですが、気になっていたよっていう方は続報お待ちください。


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439字

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