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あの日の手のぬくもり


先日、ほんのちょっとした人助けをした。


名付けるならば「70円の人助け」。


もう少しスマートに助けられなかったかと振り返りながらも、それが今のわたしの精一杯だったのだという結論に至った。


たった10分ほどだったけれど共に時間を過ごし、別れようとしたとき、


「あの、最後に握手だけ・・・」


と、手を差し出された。


突然の申し出に一瞬だけ戸惑ってしまったけれど、別れに名残惜しさを感じてくれたのかと思うと嬉しかった。


柔らかくてあたたかいその手を優しく握り返して、その場を後にした。


そのあと自分の用事を済ませに行ったのだけれど、その間も手のぬくもりが消えることはなかった。


生きているとどんな出来事に遭遇するか分からないものだ。


助けたのはわたしのほうだけど、良いことをして喜んでもらえたことでこちらも助けてもらった気分だ。


あの日の手のぬくもりを忘れないようにしたい。

そして、そのぬくもりをまたどこかにつなげていけたらいいな。


読んでいただき、ありがとうございました。




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綾野花南(あやのはな)
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