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朝五時の流れ星

夕食を食べ終えた頃、テレビのニュースから「しぶんぎ座流星群」が見られると聞こえてきた。今夜は新月で雲も無いので絶好の観測日和だという。極大時刻は朝の五時。1時間に30個も見えるらしい。流星群のニュースは定期的に見かけるけれど、一度も見たことはないし、見ようとしたこともない。このあたりではどうせ見られないだろうと思っていたし、真夜中まで起きていることも、夜中に起きることも苦手なので諦めていた。

でも今回は、天気の条件に加えて、自分の条件も整っていた。というのも、最近はお年寄りか赤ちゃんかのように、夜中と明け方によく目が覚めてしまっている。しかも明日は休みを取ってあるので二度寝も余裕だ。また明け方に目が覚めてしまったら、ついでだから見に出てみよう。ダウンコートと着替えをリビングに用意して、もし四時から五時半の間に目が覚めたら起きようと決めて、眠りについた。

目が覚めた。スマホを見ると朝5時45分、少しだけ予定時刻を過ぎている。5時半は過ぎているけど、せっかくだからモノは試しで起きてみるか、でも体が持ち上がらない、朦朧としている、先日会った友達がいる、ここは実家のベッド、…夢だった。もう一度ちゃんと現実のスマホを見る、四時四十五分。完璧な時刻だ。夫を起こさないように寝室を出て着替え、小銭を持って家を出る。

家の前にある一度も使ったことがない自販機であたたかいミルクティーを買って、カイロ替わりにポッケにしまった。街の明るい光が目に入らない場所を探すが、どこを見ても街灯が目に入ってしまう。LEDの煌々とした光をくぐりながら、安心安全な街と流れ星が見える街はトレードオフなのだろうかと考えてしまう。そういえば先日お話ししたお婆さんが、昔は東京でもたくさん星が見えていたと言っていたな。しばらく歩いた先の公園でようやく街灯が目に入りにくい空間を見つけた。

フェンスにもたれて顔を上げると、いきなりタワマンとタワマンの狭間に強い光が流れた。続いて、高い空にも短く光る。少し間を置いて3つ目、4つ目は長く細い光。しばらく空は静かになる。時計をみて、あと5分待って見られなかったら帰ろうと決めた直後、この日一番の大きな流れ星が視界の右隅に流れた。

流れる間に3回なんて全然間に合わなかったけど、1つだけお願い事をした。こういう時に一番にお願いするような、叶えたい大事なことが自分で分かっているというのは、幸せなことなんだと思う。

では、noteを書きながら興奮も落ち着いてきたので、二度寝をします。おやすみなさい。

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