秘密の戯言②
4時47分起床。6時30分に出れば間に合うはずだったのに乗るはずだった電車はさっき私がドライヤーをしている間に行ってしまったようだった。これだけを読んでも全くわからないと思うのだが書いてる私もわからない。東京の電車は実に難解でありこれまでに何度も迷子になっている。わかっていたから早く起きたのに。でも今ここで喚いても時間は戻らないしその難解な乗り換えをこなしてなんとか空港へ到着し飛行機へ乗らなければならない。きれいに伸ばした髪を振り乱しながら電車へ乗り込んだ。なんてったって今日は前々から楽しみにしていたSEKAINOOWARIのライブがある。
眠たい目をこすり何度も欠伸をしながら空港まで約1時間。やっぱり東京の電車は難解すぎた。なんとか出発10分前に滑り込んだが航空会社の規定により30分前までにチェックインしないと飛行機には乗れないらしい。
この顔だ。カウンターの方へ嘆いてみた。それでも約束していた飛行機には乗れない。応急処置として5,000円払えば次の便に乗せてもらえるらしい。(そもそも「30分前までにチェックインしないと乗れませんよ」なんてどこにも書いていないぞ!)その日の全財産8,000円の中から渋々5,000円を支払い次の便までの3時間半をフードコートで過ごした。加えて2時間半のフライトを経て関西国際空港で母と合流した。
ヨドバシカメラの9階で遅めの昼食を摂り大阪城ホールへ向かった。道中周りから聞こえてくる関西弁に心地よさを覚えながら席へ着く。母はSEKAINOOWARIのファンクラブへ入会するほどの熱心なファンだ。前回のライブツアーのチケットも持ち合わせていたが昨今の情勢により中止となったため実に2年半ぶりの現場にふたりで目を潤わせた。さぶいぼを立たせながら始まりを待ちついにその瞬間はきた。2時間半の宇宙旅行はあっという間だった。これがメジャーアーティストか。全身で感動し全身で悔しさを感じる。このさぶいぼや感動を自分のライブでたくさんの人に表現できないかと日々悶々としているからだ。
母は音楽好きであり、過去にはLADYGAGAのライブへひとりで参戦したり関東圏のライブでも平気で何時間も車を運転して向かうような人だ。最近はCreepy Nutsの神戸公演へも出向いていた。ちゃっかりグッズのロンTも購入していて私に自慢げに見せつけてきた。来年からMr.Childrenのツアーが始まることを告げるとすぐに検索していたし(ちなみにMr.Childrenのファンクラブにも加入している。)今回のSEKAINOOWARIのライブが終わったあともしきりにため息をついては「次はいつだろう」と呟いた。母の恋を見ているようだ。帰り道に湾岸線を走り工場夜景を見た。親子揃ってロマンチストだと思う。ラーメンを食べて実家へ帰ってからお互いの近況報告して3時ごろに寝た。あんなに凄まじい反抗期があったのに毎日ラインをしてたまに電話をしてそれでも尽きない話題を持ち合わせている。私は数年前から母を親友のように感じている。「明日は新しいお財布と帽子を買いに行きたい。でもこの様子やときっと明日はお昼までお互い寝てるやろうな。」という母の言葉を背中で聞きながら眠った。
その予言通りに昼過ぎまでしっかり寝た。もう出発しなければいけない。実家の心地よさ、母との楽しい時間、昨日の余韻を全て切り離して現実へ帰る。
関西国際空港まで1時間。また乗り換えを間違えた。そういえば母も運転中に何度も道を間違えていた。顔は似ていないけどやっぱり似たもの同士だ。「いつでも帰っておいで」と母はよく言う。私は「いつでも帰れるよ」といつも答える。「夢を叶えた娘の大きなステージを楽しみに待っていてほしい。」そう思いながらまた2時間半のフライトを終え帰路に着くのであった。
■あやなちゃん
最という名で活動中の音楽家。
10.19神戸市出身。現在は東京在住。
主にギターか鍵盤を用いての弾き語り。(詳しいプロフィールはこちら)
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