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木のあれこれ。no.7 楽器の木 part-4.木魚

楽器には昔から古今東西、様々な木材が用いられてきた。
各木材にはそれぞれ特徴があり、奏でる音も異なる。
ここではどの楽器にどんな木材が使われているのか、なぜその木材が使われるようになったのか、そしてその木材の特徴をまとめる。

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木魚

木魚は多くの寺院で用いられる、読経の際に拍子を取るために使われる仏具である。

木魚の形

魚とは言いがたい丸い形なのに、なぜ「木の魚」なのか?

元々は「魚板」(ぎょばん)などと言われるように、平らな魚の形をしていた。江戸時代初期に来日した明の高僧、隠元禅師が伝えた「開梆」(魚梆)が、木魚の原型と言われている。

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楠や桑などの木材でできており、口に煩悩の珠をくわえている。

時刻を知らせる鳴り物なので、下腹に裂け目があり、中は空洞である。魚板を叩くのは、体内から煩悩を吐き出させる、という意味合いもあったそう。

なぜ、魚の形をしているのか?
魚は目を閉じて寝ないことから、「魚のように寝る間を惜しんで、日夜修行に励むように」という修行僧への戒めとしして、魚の形をしている、と言われている。
この頃に日本人の寝ることが悪みたいな概念が生まれたのか、、

しかし、現在の「木魚」は、鈴のように丸い形をしている。

一身二頭の竜または魚・鯱(シャチ)が向き合い、珠の周りをぐるりと囲んだ丸い形で「円木魚」「団形魚」と言います。体には魚の鱗や龍の姿が彫られており、魚板と同様、口には煩悩の珠をくわえている。

いつ頃、現在のような形になったのか、詳しい歴史は不明であるが、開梆が伝来した後に形を転じ、現在一般的に「木魚」と呼ばれる丸い鈴の形になったと言われているよう。

木魚の歴史

室町時代の木魚

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室町時代の応永4年(1397年、約600年前)に作られた木魚が、山梨県の禅寺「雲光寺」にあった。雲光寺は元々真言宗のお寺で、応永2年(1395年)に禅寺として再興されたそう。少なくとも室町時代に日本に木魚があったことが分かる。

日本に木魚を普及させた僧侶「隠元」
日本に木魚が広く使われるようになったのは江戸時代に入ってから。
室町時代には日本に伝わっていたが、普及はしていなかった。それを現在のように仏具として普及させたのは中国から来た「隠元隆琦(いんげん りゅうき)」という僧侶である。
中国でも名僧として知られた隠元が日本に招かれると、多くの人物が話を聞こうと日々訪れた。あまりに多くの人が隠元のもとに集まったので、影響力が拡大しすぎることを恐れた幕府は、隠元の寺院からの外出を禁止する他、訪問客に関しても人数を制限した。
しかし一方で、その才覚はしっかり認められていたようで、当時の征夷大将軍「徳川家綱」と会見し、帰依されるようになる他、時の天皇「後水尾法皇」をはじめとする皇族から帰依されていた。
多くの権力者や権威ある人物と交流があり、多くの人々がこぞって訪れる隠元が新しい仏具を伝えたというのなら、確かに爆発的に普及したというのも分かる。また、この隠元は他にも「インゲン豆」を日本に伝えた人物とされている。

竜の姿が彫られている意味

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木魚というから魚かと思っていたが、持ち手のところが2頭の龍になっている。
これも、かっこいいからという理由ではなく、故事に基づいた理由があるそう。
鯉は急な川に逆らって進み、登りきると龍に姿を変えるとされている。この言い伝えから、木魚には龍の姿が描かれている。
つまり、単に向かいあった龍の姿ではなく、元は魚だったけれど試練を成し遂げ龍に進化した姿が木魚には刻まれているということになる。 
西洋のドラゴンというと爬虫類のトカゲの進化系なのに対して、アジアの龍は魚の鯉の進化系という考えなのが木魚を通じてわかった。そういえば、コイキングの進化系はギャラドスだった。

楽器としても使われる木魚

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仏具として扱われるもので楽器としての使用方法があるなんて知らなかった。

中国で楽器として使われた木魚
中国では清の時代に、民衆音楽の楽器として木魚が使われていた。
ちょうど明末期から清初期に活躍した隠元が日本で開いた黄檗宗(おうばくしゅう)でも、読経というよりも音楽の一種にしか聞こえない、木魚をはじめ楽器を使った「梵唄(ぼんばい)」という独自の読経がある。
音楽にしか聞こえない読経を聞いて、木魚をビートを刻むのにちょうどいい楽器だと感じた人がいてもおかしくはない。

ベトナムの打楽器「モー(Mõ)」

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古くから中国と関係の古いベトナムでは伝統的な打楽器「(Mõ)」という名前で木魚が使われています。モーは単体だけではなく、大きさを変えたものを並べてセットにしてつかわれることもある。

木魚の木の種類

木の種類は桑、楠、栓、欅などの木を使います。40年前は良く出たのは、栓です、柔らかく彫りやすいのが、作る側からの特徴です昔は桐の変わりとして使われていたそうですが、今では値段が上がりあまり使われ無くなりました。今は楠が良く出回っているようです、防虫剤の樟脳などに使われています、
独特の臭いがあります、木としては太く育つので大きい材料を取りやすく寺院などで使われる木魚によく使われています。は木質が硬く他の四種類の木と比べて彫りにくいのが、作る側からの特徴です、木目が綺麗にでて、時間がたつと黒くなってきます、それがいい感じの味になります、高級材になり、材料として値段が高くなります、また大きく真っ直ぐに育ち難く木目の揃った材料はなかなか取れません、蚕などを育て絹を作るために、蚕の食品として葉などを使います、基本的に高級品になります。欅も栓や楠と比べると硬く彫りにくい材料になります、木目が良くでます、木魚としては、需要があまりないので良くは使われません、スマートな感じに仕上がりがなります、木目は桑と比べると少し太くなります。いずれの木も絶対にそうではありません、木の育った場所、時代によって材質や色目は変わってきます、同じ木は基本的にありません。硬い木ほど同じ大きさの木魚でも音が高く甲高く硬い音になってきます。(https://fukadamokkoujo.jimdofree.com/2019/08/13/木魚の材料-材質-などについて/)

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名前の由来は、中国の古書には、蚕(かいこ)が葉を食べる神木として、桑の漢名があてられている。 日本では、蚕(かいこ)の、食う葉(くうは)から転訛(てんか)して、クワの名が生まれたという。

ヤマグワの学名「Morus bombycis」はカイコの学名である「Bombyx」に由来する。

一般的にクワは銘木とされているが、特に伊豆七島の御蔵島、三宅島で産出される「島桑」が最高級の材料として知られ、緻密な年輪と美しい木目がでることで知られるが蓄積は極めて少なく、貴重な材である。

昔からクワで湯飲などを作ると熱さが手に伝わらず、湯冷めしにくいと言われてきた。また、落とした場合も破損しづらく、曲げの適正も高く、耐久性がある為、陶磁器などと比べても、実用性の観点から見ても大変、優秀な材料だといえる。


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クスノキ(楠)の由来には諸説あり、樟脳の独特な香りから「臭(くす)し木」が語源とされている。また、樟脳を採取して殺虫剤や防虫剤などに利用されることから「薬の木」が由来であるとも伝えられている。樟脳の別名は、カンフルまたはカンファーとも呼ばれている。

クスノキの学名は「Cinnamonum camphora」であり、「Cinnamonum」はクスノキの樹皮が香料(ニッキ)に使用されるシナモンと近縁であることから、ニッキのようなという意味がある。ギリシャ語で「cinein(巻く)+amomos(申し分ない)」が語源です。「camphora」とは、アラビア語で樟脳(カンフル)を意味する。

クスノキの木材は軟らかくて加工しやく、磨くと光沢がでるという良い特徴を持っているが逆目を起こしやすく乾燥も難しい為、ゆがみやひずみなどで狂いやすいという欠点を持つ樹種でもある。

クスノキは内部に樟脳油を含む為、耐朽性、保存性には大変、優れているが、その油の影響で塗装を施した際にまばらになりやすく下処理を行わないと均一な塗装が難しいという性質も持つ。

古木には瘤杢(こぶもく)がでているものもあり、見た目が特徴的で美しいので内装材などとして珍重されている。

クスノキは日本の木を幹周で計測した巨木ランキングでは上位の7割以上を占める樹種で幹周がとても太くなる事もこの木の特徴のひとつだと言える。

クスノキは天然の樟脳を含む為、虫を寄せ付けないという特性を持つ事から、家具材として古くから利用されてきた。(タンスとか)
しかし、現在ではこの樟脳の匂いが嫌いな人が増えた為、この匂いを消す処理を行ったものが多いようだ。

比較的、刃が通りやすいという特徴からクスノキは彫刻などの材料としても使用され、内装材としても有用。


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センノキ【線木】、ハリギリ 【針桐】、ヤマギリ 【山桐】、ボウダラ、ツブとも呼ばれる。
センノキの名前の由来は現状不明。
学名の「Kalopanax」(ハリギリ属)はギリシア語で「美しい」という意味の kalos と、同じウコギ科のトチバニンジン属 Panax を合成したもの。「panax」は"pan (総て)"+"akos(治癒)"で全治万能薬の意味、「チョウセンニンジン」の薬効を表現している。

センには大きく分けてヌカセンと呼ばれる木材としての性質の良い樹種と、オニセン又はタランボセンと呼ばれる硬さが特徴の樹種の2種類に分けられる。

それぞれ長所が違う為、使用用途が異なるが狂いが少ないという特徴を持つ事から一般的にはヌカセンの方が好まれるようだ。

センの木材としての大きな特徴は比重が軽い割には強度があり、尚且つ、加工が容易だという事。

また、海外の木材でメジャーリーガーのバットの材料としても利用される「アッシュ」に色や木目などの外観はよく似ているが、ホワイトアッシュやヨーロピアンアッシュほどの強度や耐久性はない。

センは漆器の木地などに使われ、ケヤキと似た仕上がりを得る事ができる。
木目が力強い事から昔から和家具などに好んで使用されてきた。現在では主にヨーロッパへの輸出用の木材として利用されている。

(拍子木の紹介ページに飛びます)


参考:https://sencha-note.com/mokugyo/
https://fundo.jp/298205
http://www.e-yakusou.com/sou/sou207.htm
https://wood-museum.net/kuwa.php
https://greensnap.jp/article/8656
https://akasabinohimajin.web.fc2.com/mokuhon/sinmokuhon/ukogifamilies/harigirigenesis.html
https://wood-museum.net/sen.php

あとがき
木魚の図柄が龍だったことと、普通に楽器として売ってるっていうことが今回の新しい発見であった。木を彫って形作るのは非常に大変である、ましてや今のような精巧な刃物などの拙作道具がない時代では尚更である。室町時代の木魚は魚の形が彫られていない、中国から教えてもらった時はどんな形をしていたのであろう?ベトナムのものは魚っぽくなっているが、果たしてこれはベトナムオリジナルかどうか今調べている中では不明である。魚は日本オリジナルなのか、そもそも龍という生きものが鯉の進化系というのは日本オリジナルなのか。まだまだ調べて記事にしたいことは山盛りである、これだから調べ出すとキリがないのだ。

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