母の生い立ち 2
母が語りたがらなかったので何故かは分からずじまいだが、腹違いの兄たちは全員独立し、実家を継いだのは母と血の繋がりがある兄だった。戸籍上では三男とか四男になると思う。
その兄が結婚し子どもも生まれて実家は大所帯となった。叔母の立場になった母はしっかりするどころか、社会人となっても相変わらず甘やかされっぱなしの好待遇。
食べもの好き嫌いが激しい母の為に、食卓は母だけ別メニューだったと聞き驚愕した。
「え、ちょっと待って。そうは言っても好きじゃないものが出ることだってあったよね。そんな時はどうしてたの?」と尋ねると、母親か義姉(兄嫁)が作り替えてくれたと言う。手間をかけさせて悪いと思わないのかと意見しても、嫌いな物を出す方が悪いに決まっていると涼しい顔。本気で言ってるならどうかしてると呟く私に向かって決め台詞が飛び出すのだ。「しつこい」と。
「質問に答えてあげたのに何で文句を言われなきゃならないの?あなたお母さんいじめるのが好きなのよね。」
母とは会話が成立しない。異なる意見は全て自分という存在を否定されたと受けとめて怒りだすからだ。「しつこい」は会話終了の合図。
食べ物に関してもう一つ強烈なエピソードがある。お弁当を持たずに出社し、お昼時に母親が作り立てのあつあつを毎日職場まで届けていたというのだ。
「恥ずかしくなかったの?いつまでたっても親がかりでいることに」
「冷たいお弁当って不味いのよ。それに私、重い物は持たない主義だから」
「いや、質問と答えが合ってないよ。親に迷惑かけてるなあって思わなかったの?」
「迷惑も何も家族なんだもの。親が子を思って子を支えるのは当然のことよ」
どこまでも自分本位。独特な母の感性。会話をする度、私はいつも苛立っていた。どうして歯車がかみ合わないのだろうって。
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