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母の生い立ち 3

母は自分のことを語りたがらない人だった。「母の生い立ち」とタイトルをつけたものの、実は母の幼少期をほとんど知らない。尋ねても答えないどころか、聞けば不機嫌になる始末。何気ない会話をすることがとても難しい人だったので、私は常に母の顔色を窺いながら会話をした記憶が強烈に残っている。出身小学校の名前を聞いて怒られるなんて、他所の家庭ではなかなか経験しないだろう。毎日が黒ひげ危機一髪ゲーム。

母は結婚を機に東北の片田舎から東京にやってきた。父が東京の人だったからではない。(父も同郷。)そもそも都会の人に出会うことがないようなど田舎に暮らしていて、何故東京に引っ越してきたのかも知らない。

そんな語りたがらない母が、自身の母親と兄に関する話にだけは唯一饒舌になる。饒舌というより抑えがきかなくなると表現した方が適切かもしれない。とにかくこの二人が好きで好きでたまらないのだ。子供心にもその様子を異常だと感じていた私。同じ熱量で父と私について誰かに語ったことは全くなかった。

世の中には親になってはいけないタイプが存在するのは事実だ。そして私の母は間違いなくそこに分類される人だった。でも人は変われる。このままじゃいけないと気づけば人は確実に変われるはず。

では気づかなかったら?変わる必要なんて全くないと思っていたら?残念ながらそれが私の母だった。結婚して親元から離れ、子どもを産んで自分が親となる。守られてきた立場から守る立場へ変わったことすら気づけなかった。頑ななまでに変化を拒んだその人生がどれだけ私を苦しめてきたのか知る由もなく。


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