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サボテンを枯らす女

植物のある生活への憧れ

 昔からいきものの世話が苦手なわりに植物のある生活というものに憧れがあり、花の鉢を買ってきては枯らし、実家の庭にハーブを植えては野生化させてきた。中でも印象深いのは多肉植物で、月に1度くらい水をやればヨシという触れ込みの寄せ植えを買ってきたものの、その水やりができずにサボテンその他をミイラ化させた記憶がある。学習机の片隅に置かれた鉢植えを毎日目にしているのになぜか水やりができない。今日こそやらなければと焦燥感に駆られるのが嫌になって、最期には鉢ごとゴミ箱行きになってしまった。私のようなサボテンを枯らすタイプの女はもう二度と植物を買ってはならない固く心に誓ってから、たまに思い立って鉢植えを買ってきては枯らす残念な習慣からは遠ざかった。

一輪挿しを買ってみた

 コロナの自粛生活でストレスがたまり「なんか、無駄っぽくて無駄じゃない、いい感じの買い物したい!」欲に取り憑かれた私は、いい感じの生活用品を探していた。たまたま夫が茶碗を落として割ったのをいいことに、この際素敵な茶碗を買ってやろう、そして送料対策と称して無駄っぽくて無駄じゃない買い物をしてやろうと思い立った。そして東屋の花茶碗別注ストライプのついでに手に入れたのがこれである。

 前からちょっと気になってたHolemegaardのFloraベース、とりあえず無難なやつがええじゃろとmediumクリアの12cmを買ってみた。生活圏内に洒落た花屋など存在しないので、とりあえず食料の買い出しついでにイオンの生花コーナーで1本350円のやつを買って挿してみた。デルフィニウムは1本買うと結構ボリュームがあるので適当に切ってやると花束のようでそれなりに恰好がつく。

 切り花は水を替えたり切り口が痛んできたら切りなおしたりとそれなりに手間がかかるが、全く苦にならなかった。母の日と称してはカーネーションを買ってきたり、子どもが公園で摘んできた花を適当に活けてみたりして、2か月ほど花のあるちょっと優雅な生活を楽しむことができた。

植物の世話とタスク管理は似ている

 先日の記事に書いたとおり、最近家事タスクをアプリで管理することに嵌っている。タスク管理本や記事を読みながら、植物の世話からタスク管理のヒントを得られるところは多いのではないかなと感じた。

 月1回のサボテンの水やりができないのに、なぜ毎日切り花の水が替えられるのか。これはまず毎日の生活習慣の中に溶け込めているかどうかの差だと思う。夕食の皿を食洗機に放り込んでボタンを押す。一息ついてお茶を飲みたくなりティファールでお湯を沸かす。お湯が沸いている間に花が目に留まり、水を替える。こうやってスムーズに作業に移行できる。対してサボテンの水やりは前回の水やりから適切な期間を置く必要があるので、その間サボテンの水やりのことを意識しておくか、必要なときに思い出せるような仕組みを作っておく必要がある。
 また、一輪挿しはキッチンカウンターの上に置いているので、ワンアクションで水が替えられるのもよい。サボテンは水場から離れた2階の自室にあったので、鉢植えを1階までもっていくかジョウロのようなもので水をやる必要があった。ジョウロを探して水を入れて持ってきて戻すのはアクション数が多く億劫になりがちだった。

 思えば職場でタスク管理を試みて失敗したときも似たような状況だったような気がする。「〇〇の資料を作って送る」「〇〇の会議の資料作成」などタスクの粒度が高いと、必然的にタスク管理ツールに触れる機会が少なくなる。タスクを細分化してこまめにツールにアクセスするような状況があれば、少なくとも「ツールの存在自体を忘れる」ことはなくなるし、アクセスのたびに目を通すので作業の見直しもしやすくなる。職場生活の日常動作に取り込めないツールは、ツールの存在自体が脳のメモリを食うだけでデメリットのほうが大きくなっていしまうということだろう。細かいタスクに分けて書き出す作業は切り花の世話のように一見面倒なように思えるけれど、サボテンのようにざっくりした目標を並べるより脳の負担が少なくて済み、運用するぶんには楽になるということだ。

何度でも気軽にやり直していい

 また、切り花のよいところは気軽にリセットが可能なところだ。どうせ放っておいても10日もあれば枯れてしまうので、世話を多少サボって1週間で枯れたところで、また買い出しついでにつぎの花を買ってきて挿せばいい。鉢植えをカラカラにしてしまうのと違ってさほど罪悪感もない。

 私はどうもズボラなわりに完璧主義なところもあり、タスク管理だのダイエットだのに取り組んでは途中で挫折して自己肯定感を下げがちだった。実際今は天候とホルモンバランスの崩れで体調を崩してしまい、花は少しお休みしているし不要不急のタスクもあえて先送りにしている。noteで偉そうなことを書いたりしてシャキシャキの主婦を気取っているけれども、実際は横になってインターネットを徘徊しつつグダグダしているときのほうが多い。

 人間だもの調子が悪いときもあるさと割り切って、ダメな時でもあんまりクヨクヨせずに元気になったらまた始めればいいやというスタンスでやっていきたい。不調のときはそれなりにやりすごし、元気な時にリセットしてタスク管理はまた始めるということにする。根がネガティブなタイプの人類なのでなかなか実践は難しいのだけれど、少しずつできるようになっていきたい。



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