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情報ノーマライゼーション

紙、WEBで情報メディアを作る、というのは弊社の仕事なんですけれども、私の伝えたいことというのは、「いいもの、大事なこと」なんですね。

どこのごはんがおいしい、どこのレジャーが楽しい、といった情報は私でなくても書けるので、そこをとっかかりにしつつ、これを知ったことで少しでもその人の人生が前向きになるとか、生きるうえでの参考になるとか、そういう一歩踏み込んだ情報を広く分かりやすく伝える、というのが、弊社で作る情報メディアの特徴です。

「一歩踏み込んだ情報を広く分かりやすく伝える」というのは、とても難しいことだといつも感じています。

大事なことほど伝わりにくい

大事なこと、例えば福祉関連の話であれば、福祉関連の広報物はたくさんあります。何度か関わったことがありますが、万人に受け入れられるつくりになっているとは言いがたかったのです。

早い段階で編集リードでの構成提案ができないことが多く、印刷代は出るもののデザインDTPはほとんどボランティアでお願いしたい、ということが多いように感じています。

そうすると、企業では難しいのでやはり福祉作業所等、助成金が出ている施設に依頼することになります。

しかし、そういったところでプロフェッショナルとしての仕事をしてもらうのは、また難しいのだと福祉作業所の方から聞きました。「訓練」という側面もありますし、ご本人たちがその業務をもともと志していたわけではないからかもしれません。印刷会社さんで「印刷のおまけ」のように編集込みで受けて、トラブルが起こるのもよく聞きます。それで、弊社に「編集をお願いできないか」とご連絡いただくことがあるのです。

障害があってもすごい人はたくさんいるけれど

過去、重い障害があるけれども、豪快でびっくりするほど頭の回転の速いビジネスパーソンや、技術力があって人にもとても好かれるエンジニアに会ってきて、仕事能力の高さは障害の有無とは関係のないところにあると思っているのですが、したい仕事、技術の高い仕事ができるかどうかは、持っているのがどんな障害か、にもよります。

例えば精神障害の場合、「作業所に行く」ということ自体が難しかったりします。「何かを仕上げる」ことは、強い精神力を要します。それを要求すること自体が、無理があるのかもしれません。

すると、発注した側が、本当はもっとかっこよく作りたい、だから同じ金額でプロにやってもらいたい。でもプロは、提示された金額で受けると赤字になってしまう。

会社は赤字の仕事ができない

会社は、こういった仕事を受けると命取りになります。福祉というテーマだからこそ、「許されない失敗」がほかの案件以上に多いです。責任が重く、工数もかかります。するとほかの黒字の仕事が受けられなくなっていき、会社全体として赤字になっていくのです。

そうすると、本当に大事なことを伝えるために、編集を工夫し、多くの人に受け入れられるデザインの紙面づくりをお手伝いしたいと思っても、背に腹は代えられない。お断りするか、デザイン編集の費用をきちんといただくしかないのですが、後者が通ったことはありません。印刷は形があるけれども、編集デザインには形がない。予算が付きにくいのです。

(私の交渉力不足もあるでしょうけれども、そこは今後も頑張りましょう)

企業の最大の仕事は「利益を出して税金を納め、公共に使っていただくこと」。会社が成り立たなければこれができません。できないと社会に貢献していない会社になってしまいますから、「赤字の仕事も社会の役に立つために頑張る」は、よほど大きな黒字を出していて何年先でも潰れないという会社でないとやってはいけないことだと思います。

「ちょちょっと簡単」にできる仕事はない

少し似た話で選挙関連の公報物もあって、駆け出しのときに一度受けたきりです。その後も何度か打診をいただいているのですが、やはり予算がかけらないという話が多いです。議員さんも基本的には社会を良くするために体を張って働くわけですから、なんとかお手伝いをしたくても、「ほかのことにお金を使わなければいけないから、なんとか安く…」となりますと、会社としてはマイナスになりながらその方のお手伝いをすることになります。

(ちなみにウグイス嬢をやって!と言われたこともありますが、プライベートでも特定の政党をお手伝いすることはないのでこれもお断りしております…ごめんなさい…来年の統一地方選挙に向けてざわざわしはじめましたね)

「ちょちょっと簡単に」できる印刷物はない、と私は思っています。一度印刷してしまえば、修正はできない。選挙関連であれば公職選挙法もしっかり念頭に置かなければなりませんし、なおさら「簡単に」なんて無理なのです。そうすると、お友達でデザインソフトが使える人に頼んでください…と言わざるを得ない。ほかのお客様にも、「丁寧なお仕事をし、きちんとした対価をいただいて」いるので、お友達だったとしてもほとんどボランティアではできませんし、そもそも私には「ちょちょっと簡単」に作るのが無理なのです。作り出すと必死で作ってしまう。そういう脳なので手抜きができません。すると必然的にちゃんと報酬をいただかないと、会社が成り立っていかないのです。

だから、そこを解決したい

かくして、「こうしたらもっと、大事なことが伝わるのになあ」「声もかけていただいているのになあ」と思いながら、手を出すことができない案件が増えていくのです。

私が解決したいことというのはこの辺なのだとさっき、福祉作業所のポッポアップショップのようなものも見かけて頭に明文化されてきました。「いいもの、大事なこと」の情報を、当事者ではない人にも明るく、「ごはんおいしい」情報と同じ印象をもって届ける。

私は『たまきたPAPER』で、それをやりたいんだと思います。

経済ある道徳

また、そういう公共性の高い情報発信も、ちゃんと事業として受ける道も少し見えてきました。

「いいもの、大事なこと」を楽しく発信しながら、社会貢献をして、しっかり事業体としても成長していく。

「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」。私の好きな、二宮尊徳の言葉です。

「経済ある道徳」本当に難しいけれど、これからも挑んでいきたいと思います。

原田あやめ

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