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【詩】変身 ~ドクター1

変身

「そのまま少しお待ちください」
歯科医のアシスタントに言われたので
口を大きく開けたまま 
リクライニングチェアに座っていた
ライトが直接顔にあたり
眩しくて目が開けられない
驚くほど従順な自分がいる

もしこの瞬間に次元の天変地異が起こって
このまま混雑した駅にでもワープしたら
私はかなり可笑しな人だ
普段はあり得ない姿で目を閉じ 
ただ待つしかない頭には
突拍子もないことが浮かぶものなのだろうか

今の私はまるで
飼い主に誠実で利口な忠犬のようだ
いったい どんな状況で どれだけの人に対して
こんな自分でいられるだろうか
普段はまるで世界の不正に向かって
吠える番犬のようだというのに

そういえば私は人間の大人
だから
どんな犬にもなれるのか


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