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【詩】赤子

赤子

うららかな午後
物干しでは陽光を浴びながら
人形用みたいに小さな靴下が
そよ風に揺れている

泣き声が聞こえる
だんだん大きくなっていく
力いっぱい絞り出される声が私を求める
切ないほどの愛しさで響く魔法の音楽のように
古くなった壷から私を呼び出している
抱き上げると笑顔のメロディーが聞こえる

赤子はただその一瞬を
小さな手で必死に握りしめているようだ
私も今は その手に握られている
まだ自分で開くことさえできない生まれて間もない手に
毎日数えきれないほど人差し指を握ってもらう

この子は いったい
どこからやってきたのか
これからどんなものを掴んでいくのか

私は まだ きっと
見放されて
いない


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