【詩】心残り
心残り
南風が喜びを装う仄かな香りを連れて
ぬるい夏が辺りに漂う
気だるい自由が肌に染み込み
裸ぶるバカンスに蔓延する
両手でそっと包むように
ずっと大切に守ってきたものを
手放してしまう前に
もう一度しがみ付いてみれば良かった
世界の全てが
私色から逃れられないくらい
咲き誇る前の花たちを
丁寧にいとおしむがごとく
空気に散りばめられた
黄金の陽光を浴びるように幸せだったと
切ない胸で繰り返しなぞりながら
数えきれないほど
同じ時間を生きる
心残りは正体を見せないまま
思わせぶりに人生を惹き付ける
手の届かない過去になってしまう前に
あと少しだけ
ゆるりとまどろむ
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