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再スタートのアメリカ 2.0

先週1月20日に無事新しい大統領Bidenと副大統領のHarrisの就任式が行われた。去年の大統領選からこの日に至るまで、アメリカの政界はカオス続きで日々ニュースを聞くたびに、呼吸を整えてストレスを溜めない様に構えなければいけない状態だった。

アメリカは両極端な国である。選挙でも共和党は赤、民主党は青とまるでボクシングの試合の様に赤コーナーと青コーナーに分かれ、州も青か赤に塗られ、ニュース番組を見ている方も敵対心を無駄に煽られる。実際はどの州も様々なシェードの紫な筈なのに。

アメリカと言えば『自由の国』『人種多様な国』『誰でもアメリカンドリームを得るチャンスがある』という明るいイメージがあった、が、トランプが就任して以来、アメリカが隠し続けていたかった醜い部分があらゆるところで滲み出た。トランプはその症状の一つだった。

謳い文句の自由の国アメリカとは裏腹に、この国は自由とは全く反対の奴隷制度によって世界一のパワフルな国家としてのし上がった。何世代にも渡ってアフリカからの奴隷を家畜同様に扱った後、『いや、あれは醜い過去の事として忘れ去りたい』とマーケティングの上手いアメリカは積極的に人種のるつぼである明るいアメリカのイメージを発信した。ただ、もちろん政界、経済界でパワーを握るのは同じ白人のまま。中身のシステムはそう簡単に変わらない。人々は黒人差別をあからさまにはしなくなったが、差別は人々の生活の至ところに根付いていった。

オバマ大統領が初の”黒人大統領”になった頃から、特に地方に住む裕福でない白人達が、急速に変わっていく自分の国に対しての不満と不安を抱き始めた。自分たちが貧乏なのは移民や黒人が自分たちの仕事を取ってしまうからだ、という概念をどこからか植え付けられた。実際、貧富の差をどんどん広げているのはパワーを持つ白人達。彼らの怒りを自分たちに向けさせないために、パワーを持つ白人の一人であるトランプは、identity politicsを使ってこの人たちの怒りを上手く操り、自分のサポーターにした。

1月6日に起こった米国議事堂での暴動に参加した人たちも、トランプサポーターとして国中で起こった”White Power"、所謂白人至上主義者のデモ参加者たちも、残念ながらトランプの様な代々ステータスを握る白人に使い捨てにされている事には気づかない。

ということは、アメリカにはあんな暴動を起こすようなトランプサポーターがそんなに大勢居るのか!?と思うかもしれない。もちろんあのタイプは一部で、隠れてトランプに票を入れた富裕層の白人達も多い。彼らは人種差別をするような時代遅れな人間だとは思われたくないので、トランプ支持者だとは表では言わないが、自分のステータスを守るため、金持ちに有利な政策をとるトランプに票を入れた(個人的にもそういう人たちを知っている)。

この4年間でアメリカの複雑さを身に染みて学んだ。完璧からはほど遠いが、不器用ながらも前進していくこの国はやっぱり魅力的だ。

先週の大統領就任式で22歳の詩人、Amanda Gormanが平和の象徴である鳩の様にどこからともなく飛んで来て、フワッと降り立ちアメリカ国民の心に深く響く詩を謳った。分断で荒れまくった4年間だったが、そこからこういう詩人を生み出すのがまたアメリカという国の素晴らしいところだ。

"It's because being American is more than a pride we inherit
It's the past we step into
And how we repair it”

アメリカ人であるということは
受け継がれてきた誇りだけではなく
足を踏み入れるべき過去であり
いかにそれを修復するかということ

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