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ラベンダーの思い出

娘は、
予定日を2週間以上過ぎて産まれてきた。

1週間過ぎた時点で私は観察入院となり、
その後3日過ぎても産まれないので誘発剤を使うことになった。


誘発剤を使ったらすぐに陣痛が来て出産に至るのかと思ったらそんな簡単なものではなく、

結局そこから1週間も戦い続けることになった。



誘発剤1日目の話。


朝から夕方まで誘発剤を点滴。
点滴中 陣痛的な痛みが来たは来たが、
子宮口の開きが足りず
夕方の診察で
「今日はこれで終わりにしましょう」
となった。

今日産むものだと思ってた私は
悲しいやら悔しいやら


どうして産まれないんだろう…

不安で悲しくて心が真っ暗だった。

おまけに私はひとりで出産に臨んだので、
誰にもこの状況を話すことができない孤独な辛さがあった。


同室の、カーテン越しの女性は、
不安を旦那さまに話している。
それが聞こえてくる。



私にはお腹の赤ちゃんしかいなかった。
なのに、

「どうしたの?
なぜ産まれてこないの?」


答えは無かった。




精神的に弱り切った夜、

昼間に促進剤を打っていた名残の
陣痛(とは言っても出産には至らない、本番に比べたら弱いもの)が定期的にやって来る。

耐えかねてナースコール、

すると、夜中に出産に至ってもいいように、
たまたま空いていた
分娩準備室に移動させてくれた。

あまりにも辛い、
痛い、
辛い、

再びナースコール(看護師さんごめんなさい)

看護師さんは、
アロマを垂らしたコットンを持たせ、
腰をさすってくれた。

握りしめたコットンから漂うラベンダーの香りが、
ギリギリと張り詰めた私のなにかを
じわりじわり緩めようとしているのがわかった。

それでも痛い、
それでも辛い、
悲しい、

なぜ?

なぜ私はこんなところに?


ラベンダーは
少しずつだけども確かに、
痛みを和らげながら
その晩私と共にいた。


看護師さんが居なくなった後も、
私はすがる思いでその香りを嗅ぎ、

コットンを握りしめて
なんとか朝を迎えることができた。





退院後私は、
ふと
そのラベンダーのことを思い出して、
病院に電話で問い合わせをした。


メドウズ というメーカーだという回答をもらい
私は再びその香りに会うことができた。


あの孤独だった私を知っている。

その夜
ラベンダーは私の母であった。



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#アロマ #ラベンダー




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