1人で食べるお弁当

独りで食べる運動会のお弁当‥



‥とある田舎の小学校にA子と言う少女がいました。


A子の遠足のお弁当は塩おにぎりを小さな手で自分でにぎったものだけでした。


遠足のオヤツも忘れたと言って持って行きませんでした。


もちろん授業参観も一度も家族は顔を出しません。


運動会でもA子の家族は見に来ませんでした。


運動会のお弁当も1人で食べていました。


ある年はお弁当を1人で食べているのを
人に見られるのが恥ずかしく
昼食時間の間中
体育館裏に隠れて時間を
つぶしていたり

ある年は、そんなA子を気遣い担任の先生が
A子のお弁当を用意し一緒に食べてくれていました。


A子の両親は蒸発し
年老いた祖母がA子を育てていました。


年の離れた上の姉は都会に就職しA子と祖母へ仕送りをし離れて暮らしていました。


そんなA子に心の病気があらわれます。


群れから はぐれた水鳥が寂しさゆえに
自らの羽根を抜くように
A子は髪の毛を一本一本無意識のうちに
抜いてしまったのです。

もともと、目がクリッと可愛い健康的な
A子の容姿も表情も変わり果ててしまいました。


A子は その頃の記憶がありません。


精神の崩壊ギリギリのところで心を守る為
辛く淋しい記憶は消してしまったのです。


A子の心が壊れないのなら
そんな記憶なんてなくていいのです。





A子は







私の妹です。







今、携帯キーを打ちながら
悔しさで手を震わせているのは
A子の年の離れた姉の私です。


なぜ、都会に出た私は
もっとA子の学校行事や健康面に
気を配る事が出来なかったのでしょう。


無頓着な当時18の私には若さゆえ
分からない事も
今、親となり初めて
子供が運動会や遠足に
お弁当を用意出来ない状況も
環境も想像出来るようになりました。


私の当時の無神経さは
幾つになっても
くやし涙となって頬をつたいます。



その後のA子は
私だけが知っています。


心の弱かったA子も成長に伴い
髪の毛も元に戻り
人の気持ちを思いやれる優しい女性へと
成長しました。


18で結婚19で出産

今も複数育児をこなしながら
嫁ぎ先に可愛がって貰っています。

そして、私の子育てアドバイザーとして
先輩ママとして
いつも近くで応援してくれています。


今でも、いつでも仲良し姉妹です。


私は、きっとA子の事がなかったら
都会の就職先から
Uターンして
ここには居ついていなかったと思います。


A子の側にいて姉妹助け合う事が
無神経な姉だった私のひとり芝居の
相殺劇です

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