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愛道 第一章

魂と繋がる

”森の中で人が幾度も通った道が踏み固められてトレイルになるように、魂への道も繰り返し意識されることによって道筋のはっきり示されたトレイルとなる”  ジュヌヴィエーブ・ジェラール

愛道、愛の道を歩み始め自身の中にある愛を育もうとした時、もしかしたらあなたは、一体どこから進み始めたらいいのかと戸惑うかもしれません。

道はあなたご自身の内面、魂へ続く道にあります。魂に繋がれた時、それはあなたがパワースポットをご自分の内面にみつけたようなものです。パワースポット、それはあなたが自信を取り戻し進むべき道を自覚できる場所。

あなたの内面を森に例えるなら、魂は森の深い奥地にあってあなたの訪れをいつも待っています。燦然と輝く魂のある奥地までたどり着くためには、そこへの道がクリアでないと難しいものです。そこでまずこの本の第1章では、どうやって森の中のその道をクリアに保って行ったらいいのかをお話しします。

内面を見つめること、内観に慣れてきたらやがてあなたはたとえどんな状況にあっても魂につながることができるようになるでしょう。それまでは、実際にパワースポットと呼べる、そこへ行くと安心で穏やかな気持ちになれる場所をみつけておくと繋がりやすくなります。

魂に繋がるパワースポット

あなたには特定のパワースポットがありますか?パワースポットってなんでしょう?

パワースポットとは一言で言うなら、エネルギーをチャージしパワーを回復できる場所。そこは澄んで優しい空気感があり、あなたはリラックスし、落ち着き穏やかな気持ちになれるでしょう。心に静謐な時間をあげて自分らしさとを取り戻せる場所、それがパワースポットです。

私は2014年までカリフォルニア州サンフランシスコ近郊でアメリカ人の夫、グラハムと二度目の結婚生活を送っていました。彼が脳腫瘍の宣告を受けて亡くなり、一人での生活に慣れてきたある日、私は思い立って勤めていた会社を退職し、ハワイのマウイ島に単身で移住することを決めました。カリフォルニアでの暮らしは好きでしたが、動くタイミングが来たという直感があったのです。魂が、心の赴くまま行きたいところへ行きなさい、と言っているようでした。

仕事の傍見ていた賃貸のリストからある物件が目に留まり、私はその週末マウイへ飛びました。マウイ空港からレンタカーでそのプロパテイへ赴き、ゆっくり車を進めてその地に入った途端、眩く濃いグリーンと熱帯の花の鮮やかなマジェンタピンクが目に飛び込んできました。そこでは植物が陽の光を浴びて燦々と輝いて見えました。駐車して一歩出ると、貿易風が心地よく頬を撫で髪を揺らし、坂の向こうには海の碧が見えました。夢のように美しいその光景に、私は「いらっしゃい、よく来たね」と言ってもらっているように感じ、「ここに住みたい、ここに住むんだ」と強く思いました。その瞬間、私はカリフォルニアから引っ越すことを決めました。新たな人生を歩み始めたのです。その日はちょうど、グラハムが亡くなった一年目の命日でした。

あれから9年の歳月がったった今思い起こしてみると、私はあの時あの土地の癒しのエネルギーを感じたのでしょう。豊かな自然がもたらしてくれる、温かく穏やかで生気溢れる明るい光のエネルギー、それこそ正に私が求めていたものでした。当時は自覚していませんでしたが、グラハムを失った私の心は傷つき、痛みを抱えていました。

大地に触れ空を見上げる

”風と共に去りぬ”を最初に読んだのは高校生の時でした。強烈な衝撃を受け、その後映画も数え切れないほど見てDVDも持っています。数々の名シーンの中でも特に有名な前半のラストシーン、私はここで鳥肌が立ちました。

主人公、スカーレット・オハラが戦火をかいくぐって命からがら故郷、タラに帰り着く。疲れ切ったスカーレットを待っていたのは母逝去の悲報と変わり果てた父の姿でした。茫然自失のまま、荒れ果てた大地にひざまづき、空腹のあまり地面を素手でかき分けて食べられるものを探します。泥だらけの野菜くずをみつけて口に含んだスカーレットは、惨めさのあまりうずくまって嗚咽し、やがて土を握りしめたまま立ち上がって空を見上げて誓います。”神よ、私はもう二度と飢えません!” と。

スカーレットのように飢餓に見舞われたことはありませんが、私にも彼女のように心身ともに打ちひしがれた経験はあります。そんな困難にぶつかった時私は、心の中に存在する故郷のような場所、スカーレットにとってのタラのような場所に立ち戻り、地に身を投げ出して気の済むまで泣き、そしてまた新たな誓いを胸に、立ち上がってきたのだと思っています。到底無理なんじゃないか、でもやるしかない、というほど困難な状況に遭遇した時、タラ、あなたの魂の故郷に戻ってみてください。そこで大地を踏みしめて立ち、空をもう一度見上げてみてください。タラはいつどんな時にも心の中にあるふるさと、あなたの源です。そこには言葉では言い表せない安心感のようなものがあり、見失いそうになっていた魂の輝きを思い出させてくれるはずです。そしてあなたは再び立ち上がる強さを取り戻すでしょう。

タラに戻る鍵となるのは辿り着くための道、心の中のタラへ繋がる道を保っておく事です。スカーレットが燃え盛る戦火を後に自力でタラへ帰り着いたように、あなただけが辿ることのできるその道。

パワースポットへ続く道

日々の生活の中で、寛ぎ休息できる時間を意識してとっていますか?自宅の一角に特定のスポットを設けることができたら、聖なるスペースとしてそこを瞑想の場所にしてみてもいいでしょう。家の中にパワースポットを作るのです。自宅内にそういったスペースを持つことが難しければ、近所にあるお気に入りのカフェのとあるテーブルかもしれないし、図書館や本屋さんの書籍棚の陰でも、公園の楠の木や銀杏の下でも良いのです。パワースポットの場所はどこでも構いませんし、複数の箇所にあってもいいのです。大事なのは、あなたが深呼吸できマインドを静かに落ち着ける場所を持つことです。

私は数年前、マウイで沖縄の与那国島から訪れていたある女性と出会いました。ナオミというその女性は長年東京で暮らしていたそうですが20数年来の夢を叶えて与那国島に移住したそうです。島の豊かな自然と、そこに暮らす人々の温かな交流に惹かれて島での暮らしを大切に営んでいたのですが、2016年当時、米軍基地の建設計画が進んでいました。平和な島での暮らしが変わってしまうのでは、と胸を痛めたナオミは今後どうしたらいいのかわからなくなり、その答えのようなものを求めてマウイにきた、と話してくれました。

ナオミと私は、数人の友人達と一緒にある日ハイキングに出かけることにしました。ワイヘエリッジという山頂まで続く登山道は、濃い緑の森を抜け、途中眼下に渓谷とそこへ流れる水を湛えた滝が見渡せます。鶯の声が聞こえ、野生の蘭の鮮やかなフューシャピンクに目を奪われる傍ら、道沿いに自生した木にたわわに実っていたグアバをもいでその甘い香りと味を楽しみながらも、上に行くほど急勾配になっていく登山道を進むと、頂上に着く頃には息切れがするほどでした。やっとの思いで着いた頂上でベンチに腰を下ろすと、真っ青な海とそこに浮かんだモロカイ島が見え、その美しさと軽い足腰のだるさにみんな無口になってしばらく持参した飲み物とフルーツやクラッカーを頬張りながら充足感に浸りました。澄んだ空気と最高の景色、健康な体と気の合う仲間、そのリラックス感と幸福感はこの上ないものでした。

帰り道、ナオミはある一本の大木の下で立ち止まりました。そして木の幹に両手を回すと木を抱きしめるようにしたまま泣き出しました。私はそんな彼女を数歩下がったところでただ静かに見ていましたが、しばらく経ってから近づいて、後ろから彼女の背中に手を回し、黙って木の幹ごと彼女をハグしました。彼女の胸の痛みと同時に、木のエネルギーが注がれているのも感じ、私たちは温もりで満たされていきました。

数日後、マウイから与論島へ帰るという日、ナオミは私に教えてくれました。与論島での暮らしを諦めようかと考えていたと。米軍基地が建設される島での生活をこれからも続けるのか、それとも島を離れるのか、静かな時間をとって考えたくてマウイまで来たんだと。マウイで過ごすうち、何かモヤモヤしていたものを振り払うことができたと。帰路に着いた彼女の表情は、思いっきり泣いた後の少女のように、スッキリ晴れ晴れとしていました。

あの日、ハイキングの帰り道でナオミはあの大木をみつけ、心を開いて胸の内を吐露し、その痛みを涙とともに流し、木に委ねることができたんですね。

時には、ただ思う存分泣いて涙を流す。それだけのことで何かが大きく吹っ切れて、あなたの内面には余裕が生まれ新たなことを内包する余白もでき、心境も状況も変わったりする。パワースポットとは、心をむき出しにして内面を浄化するために必要な安全な場所とも言えるんです。

大切なのは、自分の心に溜まった澱のようなものにいかに早く気づいてあげられるかで、そのモヤモヤした何かを溜め込まないようにしておくことなんです。日常的にパワースポットに行くことで、あなたの内面にチェックインする時間を持つ。ドクターの検診に行くようなものですが、待ち時間もなくお金もかからず薬品の副作用もないという点で、パワースポットはドクター以上に頼りになると言えそうです。

マウイの空港を飛び立った時、ナオミは心境新たに、人生の次なるステージに向き合う準備ができていました。マウイでの旅を通して、周りの状況がどんなものであれ平穏な気持ちで俯瞰する境地に至ったのです。

私たちは皆んな、それぞれ人生という旅路を歩いています。どんな経験にも意味があり、そのどれ一つ欠けても今の自分はいない訳で、掛け替えのないものなのです。あなたが訪れる場所や出会う人は、人生という映画の中の大事な場面であり登場人物です。予測の付かないスリリングな展開、あるいは心温まる名シーンやいつまでも目に焼きつく美しい映像を醸し出すために欠かせない人であり場所なのです。

ナオミと私はマウイという太平洋に浮かぶ島で出会い数日間ともに過ごし、いくつかの美しい思い出を共有しました。そして彼女も私もそれぞれの人生をその後歩んでいます。もう二度と会うことはないかもしれない、それでも、楽しかった思い出と一緒に見た美しい景色やハグした木の感触は、私たちの魂に永遠に残るのです。

ヒーローズ・ジャーニー

世界中の神話に見られる普遍的なパターンのことを神話学者ジョセフ・キャンベルはヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)として理論付けしました。主人公が数々の試練を乗り越えて帰還するという物語の流れはハリウッド映画のストーリーの軸ともなっていたりするほど有名です。あなた自身がヒーロー或いはヒロインとして人生を旅している、物語の主人公だという意識を持ちましょう。

自身の魂と繋がるために私が日頃意識している5つの方法をご紹介します。ヒーローズ・ジャーニーを歩むあなたにもお勧めの実践法です。

  1. 一人になれる静かな時間を持つ:おしゃべりをやめて意識を内側に向けてみるとその途端、それまでいかに自分以外の物や事に意識が向いていたか、あれこれ考えていたかに改めて気づきます。              人は1日1.2万〜6万回もの思考をめぐらせていて、その9割は前日の繰り返しだとも言われています。私たちの脳は絶え間なく働き、堂々巡りをしているようなものです。意識して休ませないと働き続け、左脳優位でさらなる刺激を求めるようになります。かと言って、無理に思考を抑え込もうとするとかえってそこに意識をとらわれてしまったり、無意識のうちに自分の思ったこと、考えたことに対して批判的な目を向ける癖がついていたりします。                                         気がつくと神経が疲労困憊し、不調や異常をきたすようになりかねません。そんな忙しい思考を、まずは一歩下がった目で見てあげる余裕を持ちましょう。あなたは、ただそこにいる目撃者、というより味方として俯瞰するつもりでいればいいのです。思考に自然に寄り添っている感じ。そこから逃れたり拒否したりせず、どんな思考をもいつも見守ってあげている感じを大事にしてください。あなたの一番の敵はあなた自身のマインドかもしれないということを忘れないで、いつも優しく見守る習慣を育てていきましょう。

  2. 安全だと感じられる静かな場所、パワースポットをみつけて行く:人はDNAの中に太古の時代、自然の中で自然と共存していた頃の記憶をとどめています。豊かな自然の中にいると心地良いのはその為です。緑の草木、濃い大地の匂い、清流、澄んだ空気、そういった環境には微生物を含め無数の生命が宿っていて、あなたを安らいだ穏やかな気持ちにさせ、元気にさせてくれるでしょう。

  3. 目を閉じて空気の匂いを嗅ぐ:意識して五感を使うようにすると、思考よりも感覚が優位になってきます。その瞬間、魂へ繋がる通り道が開くのです。鼻から入ってくる空気が風となって、道の入り口にある門の扉を開く、そんなイメージで吸い込んでみてください。

  4. 風の音、鳥の声に耳を澄ます:五感のうち聴覚は、人が一生を終える時、一番最後まで残る感覚だと言います。あなたの周りにある音、自然の音に限らず全ての音は、あなたの鼓膜を通して耳に入ってくる以上に、波動として伝わってきています。そして時にはスピリットがあなたに伝えようとしているメッセージを運んできます。ハイアーセルフ、神、エンジェル、宇宙、ご先祖様ー呼び方は様々ですが、そういったスピリットはあなたに常にメッセージを届けようとしています。あなたが心を開き、ハートで聴こうとすれば聞こえるはずです。

  5. 息を身体中の一つ一つの細胞で感じる:人が息を引き取る時、最後の呼吸は吸い込む、とご存知でしたか?文字どおり、引いて命を閉じるのです。グラハムが亡くなる時、彼の呼吸はだんだん早くなって小刻みになっていきました。そして一旦呼吸が止まった、と思ったその次の瞬間、大きく息を吸い込み、それっきりでした。人は生まれた瞬間オギャーと泣いて息を吐き、亡くなる時は息を吸ってあの世へ旅立つのです。ハワイの原住民は、あいさつする時、鼻と鼻を交互に擦り合わせて互いの呼吸を交わします。呼吸には魂がこもっていると信じているからです。ハワイのハには呼吸という意味があるのです。一呼吸ごとに魂を全身にめぐらせていることを意識して感じてみましょう。細胞の一つ一つに魂が宿り、力が満ちると同時に生きていることの有難さを感じるのではないでしょうか。

実習

  1. 自然界で、あなたにしっくりくるものはなんですか?あなたが好きなもの、と言い換えてもいいでしょう。海、山、川、湖、森、滝、雪、木、花、星、石など思いつくまま書き出してみてください。____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________

  2. 旅に出るとしたら、どこに行きたいですか?思い浮かべた時に気持ちが安らぎ落ち着く場所を書いてみてください。あなたのパワースポットです。 ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________

  3. そこにいると想像しましょう。座って、深呼吸して目を瞑ってみてください。目を閉じている間に感じたことを書いてください。____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________

  4. 実習を始める前と比べると今、どんな感じがしていますか?想像上のパワースポットに旅して、何か変わった感覚や気づいたことがあったら書き出してみてください。    ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________

  5. あなたの行ってみたいと思っている場所、惹かれる場所に行ってみましょう!善は急げ。そこはどこか、いつ行くか書いてくさい。             ____________________________________________________ ____________________________________________________ ____________________________________________________

サマリー

あなたは日頃、ご自分の魂と対話していますか?直近で魂からのメッセージを聞いたのはいつでしょう?

もし魂と繋がる習慣がないのでしたら、パワースポットを見つけることをお勧めします。そこに行けば気持ちが落ち着き静かで安らぐと同時に忙しい思考が休まり、心の声に素直に耳を傾けることができる、そんな場所です。気持ちの良い場所では、感覚を研ぎ澄まして感じたいと本能的になり、思考よりも感受性、左脳よりも右脳、頭よりも心が優位になります。

パワースポットは自然の中が最適で、そこに行けば穏やかで平穏な環境に身を置くことができます。あなたにそんなパワースポットがあれば、実際そこに行くことが難しい状況下にいても、思い出し、そこに居ることを想像し、その感覚を取り戻すことができるでしょう。そしてリラックスしてまた魂と繋がり直すことができるはずです。

自分の魂と繋がろうとすること、それが愛道を歩む上での最初の一歩だと覚えておいてください。








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