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バレエ指導者のための法律入門講座

先日(2022年4月24日)、バレエ安全指導者資格ティーチャーズコース第2期において、「指導者のための法律入門ー主として損害賠償責任の観点からー」と題する講義を行いました。

以前の投稿でも触れましたが、一口に法律問題といっても多岐にわたります。ですが、今回の資格のコンセプトが安全・安心・健康なので、ここはやはり、不適切な指導のために生徒の安全や健康が損なわれた場合の法的責任、ずばり損害賠償責任を中心に扱うのが良いだろうと思い、それをメインテーマにしました。

正直なところ、バレエ安全指導者資格のティーチャーズコースの受講生の方は、真摯に生徒の安全のために熱心に学ぼうとされているので(そうでなければ、ベーシックコースを経て、さらに時間とお金をかけてティーチャーズコースに申し込むことはないと思います。)、そのような方に「不適切な指導をして生徒がけがをしてしまったら、けがの程度によっては高額な賠償責任を負う可能性がありますよ」と伝えるのは、若干失礼ではないかという気もしておりました。

ただ、そうであっても、法的な枠組みや裁判所の判断過程を知ってもらうことで、ご自身の思考の整理もできるでしょうし、もし周囲で危なっかしい指導をしてしまう人がいたときに、「賠償責任」という言葉や裁判で認められた賠償金の額を伝達してもらえたら、聞くほうも問題意識をもってくれやすいのではないかと期待したしだいです。

講義では、参考になりそうなスポーツ、ダンス、そして、ちょうど講義の前々日(4月22日)に最高裁で上告棄却決定の出たスーパー側勝訴の店内での転倒事故、そして、それと比較する形で、結論が真逆(転倒した客が勝訴)の別の転倒事故など、複数の裁判例を紹介しました。

そして、複数の裁判例から読み取れる裁判所の判決の土台となっている考え方や、裁判所が判断を導くにあたって重視したであろう事実を抽出し、バレエ教室での事故(私の創作した架空事例)に当てはめ、どのような結論になりそうか私見を申し上げつつ、さらに事案を少し変えた場合、結論が変わりそうかどうかといった検討も行いました。

このような「ある事例において、事案をどのように変えたら結論が変わるか、変わらないか」を考えるスタイルで講義をしたのは、私自身が、ロースクール3年間で受けたなかで最も感銘を受けた授業の一つがそのようなスタイルで、その授業のおかげで、法律の勉強が一気に楽しくなったからです。もちろん、その授業で行われていたソクラティックメソッドほど高度なことを行う技量は私にはありませんが、受講生のみなさんの知的好奇心をくすぐることができたのではないか、一つ一つの設例について受講生の方に主体的に考えてもらえたはず、とちょっと悦に入っております。いかがだったでしょうか。

秋のコースでまた新しい受講生の皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。



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