【文フリ出品までの記録3】実物大見本をつくる
前回、「100年前の雑誌のビジュアル/雰囲気を再現した出品物を作る」という方向性を決めました。
今回から、再現に必要な情報を集めていきます。
さしあたり、ターゲットとなる雑誌の、
紙の質感
紙の大きさ
フォントの種類
フォントの大きさ
行間・余白のとりかた
イラストのテイスト
この辺りを調べてみるつもりです。
手はじめに紙の大きさを調べてみた
まず、インターネット上に情報が転がっていそうな、紙の大きさから調査しました。
私が再現したい雑誌はЧудакというのですが、この雑誌名は「変わり者」という一般名詞でもあるので、このまま検索してもノイズ情報がたくさん出てきます。なのでЧудакといっしょに「雑誌」というワードも入れ、そして「サイズ」というワードも忘れずに入れて、検索してみました。
すると、オークションサイトがヒット。私の目当ての雑誌Чудакも出品されていました。
オークションサイトが出品物のサイズを記載してくれているおかげで、簡単に大きさが判明しました。ありがたや。
図中の「Размер: 」がサイズを表しています。
30,5X22,5 см. とありますので、30.5×22.5cmです。
(余談ですが小数点をコンマで表すこの記法には、何年経っても新鮮な衝撃を受けます。ちなみに3桁ごとの位取りはピリオド! 一万=10.000)
30.5×22.5cmのサイズ感
大きさがわかったところで、当時の紙面のデジタルアーカイブ(PDF)を元に、実物大の見本を作ってみることにしました。
多少の紙を無駄にしつつも、コンビニで無事に印刷できました。この感じ、懐かし楽しいです。大学のサークルで手書きのチラシやパンフレットを作って刷っていたときのことを思い出します。
家に帰ってからiPhoneの計測アプリで測ってみると、想定より1センチ以上小さくなっていました…
まあ仕方ありません。余白を入れてサイズ通りになるように切りぬきます。
そして、実際に持ってみます。
うん、なんだか馴染みがあるサイズ感です。
というかA4では?
…と持ってみて直感しました。
実際、30.5×22.5cmとは、縦がA4とほぼ同じで、横だけがA4より少し大きい、というサイズなのでした。
ところが不思議なことに、このちょっとだけ長い横幅が、ページをめくったときにA4と違う感覚を醸し出してきます。持ったときはA4ですが、めくると違う感じがします。
紙面が広く感じられる。とくに、見開きの見通しがいい。絵本を読んでいるような感覚にも似ています。大きなイラストがあると楽しい。
少しの差なのに面白いです。このサイズ感はぜひ手にとってみてもらいたいなと、改めて実現の思いを強くしました。
ちなみに、検索でヒットしたオークションサイトには、同時代の雑誌が他にも多数掲載されていて、どの雑誌もだいたい 縦29.5〜30.5cm、横22.5〜23.0cm の大きさに収まっていました。
当時(1920年代後半)の雑誌の、ひとつの規格だったのかもしれません。この辺りは調べたら面白そうです。
縦横ともに1センチ前後ブレがあるのも、当時の裁断技術の限界だろうかと思うと、興味深いです。
当時の雰囲気を醸し出す「詰まった」感じ
さて、実物大を手にとってみて、もうひとつ気になったのは文字の小ささです。
紙はA4より大きいのに、字が小さい。
大文字で2ミリ強、小文字だと1ミリ強の大きさしかありません。
現代の文庫本のフォントと比べると、半分くらいの大きさでした。きっと当時の読者は目が良かったんですね…
キリル文字やラテン文字ならこの大きさでもかまわないでしょうが、画数の多い漢字はつぶれてしまいそうです。
当時の雰囲気を再現したい気持ちはありますが、読めなくては元も子もないので、文字の大きさは踏襲しないほうがいいかもと感じました。
さらに、字が小さいだけでなく、行間も狭いです。前後1ミリ程度です。紙を節約して、少ないスペースにたくさんの文字を詰められるようにということでしょうか。
余白はそれぞれ1.5センチ程度。この余白も、Wordなどで「標準」としておすすめされる設定より狭くなっています。
こういう文字がみっしり詰まった感じは、現代の私たちには不慣れで読みにくく感じられますが、だからこそ、このみっしり感が、今の印刷物と違う雰囲気につながっているような気もします。字を小さくしない分、行間・余白で当時の雰囲気を出せないか、今後試行錯誤してみようと思います。
というわけで、
紙の質感
紙の大きさ → 30.5×22.5cm
フォントの種類
フォントの大きさ → 1〜2mm。無理かも
行間・余白のとりかた → 行間は前後1mm、余白は四辺1.5cm
イラストのテイスト
この辺りまで様子がつかめました。
次回・フォントについて
小さな字を拡大してみると、意外に特徴のある形をしていました。
З, Щ, Цは、字の終わりが尻尾みたいにカールしているし、Йの上は蝶ネクタイみたいです。Лはかなり細身で、印刷状態が悪いとДと見分けがつきません。
この可愛いフォントは一体なに?
私の乏しい経験では、いままでほとんど見かけた記憶がありません。少なくとも手持ちの書籍や、Macに入っているフォントブックでは見つけられませんでした。
現在は使われていないフォントなんでしょうか?
文学フリマの出品物は当然日本語ですし、このキリル文字フォントのことをくわしく知る必要はないのですが、個人的に興味があるのですこし調べてみるつもりです。
加えて次回は、「キリル文字フォントと似た雰囲気を日本語フォントで出せるのか問題」を考えたいと思います。
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