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『堀内誠一 絵の世界』館林美術館

大尊敬する堀内誠一さんの展覧会。

昨年、ベルナールビュフェ美術館でも見たので今回で2度目。
巡回展は同じ作品を違う場所で見ることもできるのがまたいい。

今回は展示室の撮影がNGだったので、
記憶を頼りに思い出しながら書いていこうと思う。

この謎のスペースがいい

まずは若い時に描いた自画像など。ピカソの青の時代を意識した作品とか、松本竣介さんに傾倒していた時代もあったみたいで、その雰囲気を持った作品などが展示されていた。

その後はほとんどが堀内さんが手がけた絵本の原画の展示で、
使っていた画材や持っていたバッグ、世界中で集めてきたお土産などが展示されていた。

堀内さんのお父様も今でいうデザイナーみたいなお仕事をされていた方みたいで、小さい頃から家に美術雑誌があった環境で育って、もうその時点で一歩秀でているよなと思ってしまう。

だけど堀内さん自身も絵が上手ということに驕らないで、靴屋さんの絵を描く時は下町の靴屋さんに取材に行く、雪の降る寒いところを題材にした絵だったら、似たような場所に取材に行く。リスを題材にした本だったら、実際にリスを飼うとか、なんとなくぱっとさら〜っと描いたような絵に見えるけど、実際は丹念に取材して描いていることに好感が持てる。それが絵をぱっと見ただけでは感じないのがまたすごい。

才能ももちろんあるんだろうけど、楽をせずに対象とじっくり向き合って描かれた絵だから伝わるものがあるのかなと思う。

子どもたちの動きとか、動植物とか描く喜びも感じるけど、『どうぶつしんぶん』なんかを見ていると生き物が好きというのが伝わってくる。

それを亡くなるまでずっと持ち続けていたのがさらにすごい。

絵本もエディトリアルの分野でもたくさん作品を残されているけど、感覚はずば抜けているとは思うけど、才能だけで片付けられないのが堀内さんの魅力。

作品によって絵のタッチも全然違うし、デザイナーなんだなと思う。

私は『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』あたりのわかりやすい作品が好みだけど、他の作品を見ていてもはっとすることが多々ある。『おひさまがいっぱい』のタッチも好き。マガジンハウスの壁画のような絵。

堀内さんがまとめた世界のイラストレーターの本。今ではネットで色々調べられるけど、その時代はどうやって情報を集めたんだろう。神保町や世界の古本屋など自分の足を使って回ったのかな?どこにも情報のないイラストレーターの人とかもこの本には載っていたりして、改めて堀内さんさすがとなりました。

『ぐるんぱのようちえん』が60年ほど前の絵本。
それが今の子どもたちにもたくさん読まれていて全く古さを感じない。

堀内さんの周りの登場人物もすごい方ばかり。
戦争というものがどういった影響を与えているのかはわからないけど、
その時代の人たちは力強く生きて、たくさんの心動かす作品を残してくれている。

今は生きれることが当たり前で、生きることに執着していない。
芸術は生きることに直結しているから、絵1枚にしても生というのを感じない作品がほとんど。昔の絵に興味があるのはこういったことなのかもしれないと書いていて感じた。

自分だけの表現で作品を作っている人たちみんな尊敬しているけど。

茂林寺近くの沼

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