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《無駄話》源氏物語がたりその3

こんばんは。
Ayaです。
今週の光るの君へは七夕合戦にてお休み。なので、今日は年始にしていた
私の偏見で語る源氏物語の女君たち
の続編です!


作者人身の投影? 空蝉

ある雨の夜、源氏は好色な友人たちから『上流貴族の女性たちはお高くとまりすぎる。かと言って、下流貴族の女性たちは話にならない。中の品(中流貴族)の女性たちはある程度くだけていて、付き合うには最も良い』という話を聞きます。今なら女性蔑視で大炎上しそうな女性評ですが、それまで上流貴族の女性(藤壺や六条御息所)としか付き合ったことのない源氏は、中流貴族の女性たちに関心をもつようになります。こうして出会ったのが、空蝉でした。

あさきゆめみしより


方違えという風習で、紀伊守という受領の屋敷に滞在することになった源氏。そのとき、たまたま紀伊守の義母も滞在していることを知ります。
彼女はもともと中納言兼衛門督という上流貴族の娘で桐壺帝への入内も噂されましたが、親が早くに亡くなってしまいます。幼い弟を養育するため、おそらく家司として出入りしていたであろう伊予介(紀伊守の父)と結婚したという経緯がありました。源氏は彼女に興味をもち、その夜半ば無理やり関係を結んでしまいます。彼女は源氏に心惹かれていたものの、身分違いの戯れの関係にすぎないのだということがわかっていていて、その後の関係を拒みます。女性に拒まれた経験の少ない源氏は彼女に執着し、弟を籠絡して再び寝所に忍び込みます。ですが、彼女は源氏の気配を感じて、薄衣(夏に布団がわり使用されていた衣類)を残して立ち去ってしまいました。その薄物がセミの抜け殻のようだったため、彼女は『空蝉』と呼ばれています。
その後、須磨からの帰京の際に、夫の任地へ下る彼女の一行と再会しました。夫の死後、継子の紀伊守から言い寄られるのを嫌い、空蝉は出家。それを知った源氏は彼女を引き取り、二条東院に住わせました。
彼女の境遇をみると、とても作者紫式部自身の境遇と重なります。父が中納言だった彼女ほどではありませんが、紫式部の家も何代か前には中納言も輩出していた家柄でした。結婚相手も親子ほど年の離れたの受領の男性で同じです。興味深いのは彼女の容姿の描き方です。二回目の訪問の際に源氏は彼女と継娘を垣間見て、『容姿は継娘のほうが優っているが、上品さはくらべものにならないくらい彼女の方が素晴らしい』と評しているのです。紫式部は自分の容姿にそれほど自信がなかったとされていますので、作者自身の投影だったのかもしれません。

薄幸の美女 夕顔

空蝉の後も、源氏の中流貴族女性巡りは終わりません。
ある日、乳母の病気見舞いに五条界隈にきた源氏。この辺りの住民は庶民がほとんどで、源氏には物珍しいものばかりです。ふと見ると、知らない白い花が咲いています。惟光に手おらせようとすると、中から女童が出てきて、「花が可哀想ですからこれを」と扇子を渡してきました。その扇子には源氏の美しさを称える歌が書かれていました。この粋な対応を気に入った源氏は彼女の元へ通うようになります。

あさきゆめみしより

儚げで柔らかな印象の彼女を気に入った源氏。身分を偽るためにつけていた仮面を外し、正体を明かします。すると、彼女は「思っていたほどではありませんね」と冗談を言います。ただ儚げなだけではない対応をさらに気にいった源氏はもっと逢瀬を楽しもうと、彼女を廃墟へ連れ出します。しかし、その邸で物怪に襲われ(作中では明らかにされていないが、一般的にこの物怪は六条御息所の生霊と解釈されている)、彼女は頓死してしまうのです。
あまりのことにショックを受けた源氏は泣くばかり。スキャンダルになるのを防ぐため、惟光が秘密裏に遺体を処理します。ただひとり連れてこられていた右近という女房から、彼女の生い立ちを教えられます。彼女は三位中将の娘で、頭中将の妾でした。ふたりの間には女の子まで生まれていましたが、頭中将の正妻から嫌がらせを受けてるようになり、姿を隠していたというのです。頭中将は源氏の義兄で友人でもあり、例の雨夜の際に忘れられない女がいるという話も聞いていました。せめて幼い娘だけでも引き取ろうとする源氏でしたが、一段落して尋ねてみると邸はもぬけの殻で、娘の行方はわからなくなってしまいました。
源氏物語の女君たちの中でも、夕顔は一二を争う人気キャラクターでしょう。怨霊に殺された儚げな美女というイメージですが、何度か読み返すうちに彼女のイメージも変わってきました。
のちに源氏は嫁いできたばかりの女三の宮を可愛らしいがぼーとしていて幼い感じと評して、改めて紫の上の素晴らしさを絶賛しています。ようするに、源氏の好みではないのです。しかし、同じような夕顔にはいであげています。なぜだろうかと読み直すと、源氏が正体を明かした際や出会いの際は機知のとんだ返しをしています。何より二人の出会いは夕顔からの逆ナン(?)が始まりで、ただ受け身な女性ではないのです。考えてみると、頭中将のもとから去った夕顔は、自分たちの生活、特に幼い娘のために源氏へ歌を送ったのでしょう。紫式部は夫の死後宮中へ出仕することで娘を養育できました。しかし、これは彼女が類まれな才能を持っていたからできたことで、夫がこどもを残してなくなると、多くの女性たちは別の男性と再婚することで自身や子どもたちの生活をしのいでいました。彼女たちも源氏物語の読者のなかにはいたでしょう。夕顔や空蝉に自分の身の上を重ねて読んでいたかもしれません。

置かれた場所で咲く 玉鬘

源氏が夕顔を行き先を告げずに連れ去ったので行き先もわからず、留守の家人たちは途方に暮れました。結局乳母は夫の任地太宰府へ当時三歳の姫も連れていくことになりました。田舎で美少女に成長した姫でしたが、地元の有力者からしつこく求婚され困っていました。さらに乳母の夫が亡くなると乳母の子どもたちまで籠絡されたため、どうにか逃げ出します。
一行が長谷寺へ参籠した際、母の元女房の右近に再会したことで、彼女の運命が変わります。早速右近が源氏に報告し、喜んだ源氏は六条院に迎えいれ、花散里の養女とします。こんな夢のような待遇に大抵の人は舞い上がってしまいますが、彼女はなんで源氏が見ず知らずの自分を厚遇してくれるのか警戒していました。源氏はその思慮深さに感心し、あの夜のことを話して、せめてもの償いとして面倒を見させてほしいというのでした。
裳着の際、源氏の計らいで実父頭中将と再会しますが、そのまま彼女を養育します。
その美貌は貴族社会で評判となり、兵部卿宮(源氏の弟)や柏木(実の弟)、はては冷泉帝からも恋文が届きます。冷泉帝に尚侍(女官だが、実質上の妃)として入内することが決まっていましたが、彼女に悲劇が起きてしまいます。

あさきゆめみしより


女房の手引きで、髭黒という貴族に襲われてしまったのです。
髭黒は東宮の叔父にあたる有力者でしたが、年もずっと上ですでに北の方(紫の上の異母姉)がいたので、源氏は問題外だと思っていたのです。しかし、その狂恋ぶりは凄まじくこのような事態となってしまったのです。内心手放したくなかった源氏でしたが、髭黒が北の方と離婚して彼女を正妻にするという条件で結婚を許します。当初は悲嘆に暮れていた彼女でしたが、次第に髭黒の愛に応じるようになり、こどももたくさん出産し、それだけでなく夫の連れ子も分け隔てなく養育して、継室としての地位を確保しました。このたくましさから、この女性は運命を意味する『玉鬘』と呼ばれています。



今回は三人取り上げました。
空蝉は紫式部自身の自画像のような気がします。彼女は自分を美しくはないが思慮深い女性と思っていたのでしょう。なので、石山寺で再会したまひろも道長を拒むのかな??と思っています。
劇中のまひろと道長の密会に使われている廃墟や夕顔の花を歌にするなど、夕顔へのオマージュがたくさんありますね。
夕顔と玉鬘は正反対の親子です。
玉鬘のストーリーは読者からのリクエストで書いた、いわばサイドストーリーだそうです。彼女の結婚は道長の娘・寛子の結婚とそっくりです。髭黒の北の方の母(式部卿宮の北の方)は紫の上を嫌っていて彼女が仕組んだに違いないと怒っていましたが、紫の上もこの後正妻の座を追われるのことになります。
相変わらずのヘンタイぶりに自分でもひいてます笑。また光るの君休みのときにやるかも‥??です。





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