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《無駄話》源氏物語がたり(前編)


明けてすぐ地震があり、更新するか迷いましたが、せっかく書いたので更新されていただきます。
少しでも早く平穏な日々になりますように。

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新年明けましておめでとうございます。
旧年中はお世話になりました。本年もよろしくおねがいいたします。

本年(2024年)のNHK大河ドラマは
紫式部の生涯を描く『光る君へ』

『光る君へ』ポスター(公式Xより)

平安時代、源氏物語大好き芸人としては楽しみでしかありません!!
源氏物語自体は出ないそうですが、便乗して、
私の偏見で『源氏物語』に登場する女君たち
を書かせていただきます。完全なる自己満企画ですが、お付き合いくだされば幸いです。


意外としたたか? 桐壺更衣と藤壺中宮


いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやんごとなき際にはあらねど、すぐれて時めき給ふありけり。

源氏物語

という有名な冒頭で始まる源氏物語。
身分の低い桐壺更衣が帝の寵愛を受けて光源氏を出産するが、妃たちからのイジメですぐ病死してしまう。帝は桐壺更衣に似ているという藤壺女御を入内させ、光源氏と親しくさせる。母の顔を覚えていない光源氏は藤壺女御を母代わりと慕ううち、それ以上の感情を抱くようになるー。

母を求める源氏と、彼に翻弄される女性たちー。
その最初に登場するのが、実母・桐壺更衣と初恋のひと・藤壺中宮です。どちらも運命に翻弄された儚げなイメージがありますが、読み返したり、当時の後宮制度を知るにつれ、印象が変わってきました。

まず、桐壺更衣。大納言の娘として生まれましたが、すでにその父は亡くなっており、後ろ盾がいない状態での入内でした。史実でも藤原定子(一条天皇皇后)の悲劇がありますが、実家の後ろ盾がない後宮での生活は厳しいものでした。
入内してから実家が没落した定子とは違い、桐壺更衣の場合、最初から困難な道になることは予想されていたでしょう。それにもかかわらず、入内を選んだ桐壺更衣の意志の強さを感じます。そんな彼女にとっての悲願は息子・光源氏が帝位につくことだったのではないでしょうか?

桐壺更衣(『あさきゆめみし』より)



一方、その源氏と禁断の恋に落ち、不義の子まで成した藤壺中宮。
内親王という最高の出身だったため、桐壺更衣と同じようなイジメにあうようなことはありませんでした。しかし、夫の帝から愛されるのは桐壺更衣の"身代わり"でしかなく、虚しくはなかったのでしょうか。だからこそ、光源氏との禁断の愛に応じてしまったのではないでしょうか。
罪の意識に苛まれていただろう彼女にとって、冷泉帝出産後も口説いてくる源氏はストーカーにすぎません。しかも発覚すれば息子の出生の秘密さえ暴露しかねないのです。彼のストーカー行為から逃れ、冷泉帝の後見としての自覚を持たせるには、出家の道しか残されていませんでした。
後ろ盾たる源氏の須磨退去後は心細かったでしょうが、左大臣(源氏の義父)の擁護を得て、息子の廃太子を免れたと考えられます。兄の式部卿宮はあまり頼りにならない存在ですので、彼女自身がしたたかに行動したと考えられます。
藤壺女院は冷泉帝の後見を源氏に託し、薨去します。冷泉帝は自らの出生の秘密に気がつきますが、源氏そして母藤壺の名誉を守るために隠し通し続けることを決意するのです。

源氏と藤壺女院(『あさきゆめみし』より)



"夢"の紫の上と"現実"の明石の君

ある日、源氏は北山の山寺で藤壺中宮にそっくりな少女を見つけます。身元を調べると、兄式部卿宮の隠し子であることがわかり、源氏はこの少女を『若紫』と名付けて養育することにします。前にも取り上げましたが、これは自身の理想の女性に育てようとするピグマリオン・コンプレックスを描いていると思われます。
幼い若紫は源氏をお兄様と慕っていましたが、正妻・葵の上の死後、突然関係を結ばされてしまいます。こうして若紫は紫の上となり、源氏の最愛の妻となるのですが、この結婚の仕方が後に禍根となるのです。
平安時代の結婚は一夫多妻制と言われますが、フリー交際が許されていたわけではありません。正式な結婚をするには、女性の両親から許可を得なくてはならなかったのです。しかし、源氏は紫の上と関係を結んだあとに彼女の実父・式部卿宮の許可を得たため、この正式な結婚の手続きを経ていなかったことになってしまったのです。要するに、"源氏第一の妻"と長年言われていた紫の上ですが、立場的には内妻でしかありませんでした。そのままであれば何の問題もありませんでしたが、女三の宮の降嫁によって、正妻格の座を失ってしまいます。源氏としては女三の宮も藤壺の姪で紫の上を育てたのをもう一度したいというのですから、紫の上にとっては呪いにほかなりません。
また紫式部の秀逸なところは、彼女にこどもを産ませませなかったところです。こどもがいない以上彼女は源氏の愛にしがみつくしかありません。
源氏に育てられ愛された紫の上は、彼の"夢"のなかに生きた儚い存在でした。ほかの女性たちへの嫉妬に苦しんだ紫の上は出家を志しますが、源氏の許しを得られず、生前は叶えることができませんでした。

紫の上の死(『あさきゆめみし』より)




"夢"に生きた紫の上と対照的なのが、明石の君です。

明石の君(『あさきゆめみし』より)


彼女の父・明石の入道は桐壺更衣のいとこにあたる高貴な出身でしたが、突然ドロップアウトして明石の受領になってしまいました。その上、年頃になった彼女を、夢のお告げで隠遁中の源氏と結婚させます。父親の意見に従うしかなかった彼女でしたが、源氏の帰京後は不安でしかたなかったでしょう。源氏は母子を捨てはしませんでしたが、やはり身分的な問題から最愛の娘を紫の上の養女にすると決めていました。断ることができずに、彼女は娘を紫の上に託します。
娘が成長し東宮に入内するとき、明石の君も女房として出仕することで、対面を果たします。娘は多くのこどもたちに恵まれ後宮での立場を盤石なものにしますが、その傍らで明石の君が支え続けます。
源氏の"夢"にすがるしかなかった紫の上と違い、母としての立場を得た明石の君は"現実"世界の幸せを得ることができたのです。

とんでもなく長くなってしまったので、次の記事に持ち越しです。
新年からぶっ飛んでですみません汗
この記事を書き出したのが昨年の11月からだったという狂気()
今年もこんな感じですが、よろしくお願いします。

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