オンライン即売会の可能性を探れ(後編)

結論、オンライン即売会は、リアルイベントの補完として定着すると思われる。尤も、pictSQUAREもリアルイベントと競合するのではなく、あくまでリアルイベントの補完と云う方針なのだろうが。

この記事を書いている時点では、1道1都3県を除いて緊急事態宣言が解除されているが、これが噂される「第2波」によって逆戻りする可能性も否定できない。尤も、完全に以前のような社会情勢に戻らない限り、リアルイベントは困難だが。
そうなった時、オンライン即売会が同人業界の救世主となることが予想される。その理由は、前述の現物の存在だ。

2020年3月末、大型連休に予定されていたコミケのキャンセルが決まった。この時、イベント団体のコミケットは、既にカタログを印刷所に入稿していたため、カタログを購入してコミケの次回以降の存続に支援と協力を求めた。
自身は、今まで購入したことは無く、今回も買わないとnoteとTwitterで宣言した。今は五輪が終了するまでの特例措置…会期延長による経費の補填…として、入場証としてのリストバンドを販売しているが、カタログは入場証の代わりにならない。わざわざそれに金を出す理由が無い。

このカタログを入稿した後に発表したのは、発売告知ギリギリのタイミングだったが、自身はカタログを入稿したタイミングで告知することにしたのだと読んだ。カタログを購入させることありきで、それは間違っていないと、今でも思っている。
そのカタログに拘り、また賛同して購入の意思を見せた…そして実際に購入した…連中の意見は、一貫して「同人活動の火を絶やさない」ためだ。

これだけネット社会で、電子書籍や音楽のネット配信が普及している中で、同人業界はダウンロード販売が比較的普及せず、現物の同人誌の需要が根強い。
そして、イベントが開かれないこの期間でも
「何時かまた開かれるイベントに備えて、原稿を制作して印刷所で本を印刷しよう。売るならBOOTHで通販しよう」
と「同志」に協力を呼び掛けるツイートも次々に見た。
「同人活動の火を絶やさない」最大のポイントは、印刷所を使って支援すると云うことだ。同人印刷に特化した、また同人印刷も手掛ける印刷業者の経営を守るには、とにかく本を印刷するしかない。
リアルイベントが再開されても印刷業者が淘汰されていれば、本を出そうにも印刷業者に入稿できず、本を出すことができない。結果としてイベントに参戦できず、イベントが消える。あくまで、通販はイベントの補完と云う立場だ。
同人業界は基本的に「手を取り合って業界を発展させる同志」の集まりだ。だから営利目的は、時に拝金主義だとして叩かれる。細かい部分は割愛するが。

冊子と云う現物主義が強い業界では、ダウンロード販売よりネット通販の方が好まれる事情が有る。その意味では、通販として現物を売買するオンライン即売会は「同人活動の火を絶やさない」観点からは有効だ。
そして、イベントが開けない社会情勢であれば、交流しつつ売買可能なネット通販として、オンライン即売会はその存在感と必要性を増してくるだろう。
そして、社会が以前のような平常を取り戻し、リアルイベントが復活した時には、遠方である、予定が合わない、と云った連中にもイベントを疑似体験させ、イベントとしても更に収益が上げられる補完的な手段としての立場で定着するだろう。

今回はpictSQUAREと云うサービスを体験した上で思ったことを書いてみたが、オンライン即売会はオタクの感情面での弱点を抱えつつも、コスパはよさげで「新しい生活様式」にもマッチしている。面白い同人活動の新たなスタイルとして定着することを期待したい。

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