BL小説レビュー:旧ドイツ軍風 空軍パイロット主従『蒼空の絆』

評価

出来事プロット ★★★☆☆
心情プロット  ★★☆☆☆
注意:合意のない性行為あり・身体欠損

作者の旧ドイツ空軍萌えが伝わってくる主従もの。

こんな人におすすめ:


・高貴な金髪お貴族様受け
・主従
・無理矢理

あらすじ:

北の大国N連邦との対立が続く東宝グランツ帝国、その北部戦線を守る空軍北部第三飛行連隊――通称『雪の部隊』に所属するエーリヒ・ヴィクトル・フォン・シェーンブルクは、『雪の女王』として名が轟くエースパイロットであり、国家的英雄のひとりでもある。歴史ある旧王国名門貴族の末裔で圧倒的な美貌を誇るエーリヒは、厳しくはあるが部隊内の信頼も篤い、理想的な指揮官だった。そんなエーリヒの司令補佐官を務めるのは、幼少の頃よりエーリヒを慕う寡黙で忠実な男・アルフレート中尉。厳しい戦況の中、戦闘の合間のささやかで穏やかな日常を支えに、部隊の皆と共に生き残るために必死だったエーリヒだったが、ある日、激しい戦闘の中、利き腕の肘から先を失う怪我を負う。そんなエーリヒに対し、アルフレートはそれまで以上に献身的な忠誠を見せるが――? (Amazon商品ページより)

レビュー:

本作は2009年6月刊行「エロとじ🖤VOL.2」収録「夜間飛行」を加筆修正した作品です。

硬質な雰囲気を纏う空軍の英雄、付き従うは寡黙で忠実な部下。だんだんと距離を縮めてはいくものの、身分の差に加え、二人とも開けっぴろげな性格ではないのでどうやって想いが通じることになるんだ? と思いながら半分以上読み進めて急展開。(この先、あらすじに触れます)

消耗戦を終わらせるため、エーリヒは便宜をはかってくれるという従兄弟に身をまかせようとする。そこにアルフレートが乗り込んできてかっさらい、乱れた様子のエーリヒを押し倒す……という展開。

どうにかして堅物ふたりの仲を一気に縮めないといけなかったのは分かりますが、これはちょっと……😓 この行為は完全にアルフレートの独断専行で、エーリヒの目的を潰しまずい立場に追い込んでますし(結局、悪影響はあまりなかったけど)、エーリヒが誰かに身を任せようとしたからといってなぜアルフレートが無理矢理していいことになるのかちょっと分かりませんでした。

エーリヒはアルフレートの想いを分かっていて、他人に体を許すことを裏切りであり後ろめたく思っているのでしょうか? ただ好意を寄せられていることでそこまでの責任が発生するものじゃないと思うのですが。アルフレートがエーリヒに尽くしてるのは、お互いに相手に尽くす約束をしたわけではなく、いわば〈勝手にやってる〉のであり、エーリヒが責任を感じることじゃないですよね? 

この自他の切り分けられて無さが、「決断力のある指揮官」「ノブレスオブリージュを体現する誇り高い英雄」像に馴染まない気がしました。アルフレートがエーリヒを責めて「酷い方だ…、誰も安易に近づけない存在なのだと思っていたのに」って、理論もちょっと……。最終的にエーリヒはアルフレートが好きだからOKだとしても、いまいち納得しずらいと感じました。

アルフレートがかっさらった後、独断を詫びて愛を告白し、エーリヒが挑発しまくってアルフレートが爆発! みたいな展開だったらエーリヒが逞しすぎてひれ伏してたと思うのですが。

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