BL小説レビュー:悪魔か神か…超越的存在と人間の恋 『神さまには誓わない』英田サキ

評価

出来事プロット ★★☆☆☆
心情プロット  ★★★☆☆

こんな人におすすめ


・神様・悪魔と人間のカップルが好き
・どこまで真摯に愛せるかの物語が好き

あらすじ

何百万年生きたかわからないほど永い時間を、神や悪魔などと呼ばれながら過ごしてきた、腹黒い悪魔のアシュトレト。アシュトレトは日本の教会で名前の似た牧師・アシュレイと出会い、親交を深める。しかし、彼はアシュトレトが気に入りの男・上総の車に轢かれ、命を落としてしまう。アシュトレトはアシュレイの5歳の一人娘のため、柄にもなく彼のかわりを果たすべく身体の中に入り込むことに。事故を気に病む上総がアシュレイの中身を知らないことをいいことに、アシュトレトは彼を誘惑し、身体の関係に持ち込むが…。(Amazon商品ページより)

コメント

人間を見下している意地悪なアシュトレトは、同じ種族のアモンが人間の羽根珠樹(はね・たまき)に恋しているのをバカにして見ています。しかし、牧師・アシュレイに成り代わったアシュトレトを上総がたびたび訪ねて来るようになり、関係が始まっていきます。

アモンと珠樹がだいぶ出張ってくるし、設定が複雑なので何かの続編なのかと思ったら、『ファラウェイ』(下記)のスピンオフとのことです。

天敵により、強大な力を手放すか、恋人を手放すかの選択を迫られ、人間など歯牙にもかけなかったアシュトレトの選択がどうなるのか、というクライマックスとなります。どんなに長い時を生きる生き物も、愛によって定命の者と同じように取り乱し、苦しみ、舞い上がり、損得勘定やプライドを忘れてしまう……というのが感動的です。

地球の反対側でも一瞬で移動できるとか、人の心が読めるという神的存在ならではのチート能力は、なんでも出来すぎてしまって普通は物語進行上じゃまになる要素だと思いますが、さすがベテランなので上手くさばいていて唸りました。

自信満々なアシュトレトが上総を誘惑するのも、積極的な受けが好きな私としてはよかったです。

気になったのは、アモンもアシュトレトも白人のイケメンの体を利用しているので、白人の見かけが好きなんだろうなと思うのですが、「神的な存在なら当然自分の体に白人を選ぶ」という価値観なのか? とか、外見とは? 人種とは? ある人が好きというのは、体と心と別に考えられるのか? 日本人(東アジア人)の見かけが好きだから体だけ使ったキャラとかいたらどうだろうか? と色々考えさせられました。

私は不死存在とか精神生命体というようなSF・ファンタジー世界の独自の生き物が大好きなのですが、定命の者(普通の人間)と同じような価値観で生きてるとかあり得なくない……? と思ってしまうので、その辺ももう少し深掘りがあってもよかったかなとは思います。


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