BL小説レビュー:オタクの好きなもの詰め合わせセット『ブライト・プリズン』


出来事プロット ★★★☆☆
心情プロット  ★★★☆☆
注意:不本意な性行為あり

隔絶された学園×美形エリート集団×生贄×禁じられた関係という、オタクの好きなもの詰め合わせセット。

こんな人におすすめ:
・隔絶された学園での謎の制度と聞くとワクワクする
・陰謀渦巻く宮廷ものとかが好き
・生贄や嫁入りものが好き
・禁じられた関係に苦悩する話が好き

龍神を信仰する宗教団体が運営する世間から隔絶された学園。生徒たちからは毎年、龍神に愛される〈神子〉候補が選ばれる。
高等部三年の薔(しょう)は、外の世界を知りたいと願い、学園を取り仕切るエリート集団である竜虎隊の隊長・常盤(ときわ)に反発していた。だが、長年自由を奪われる神子には絶対になりたくないのにも関わらず、贔屓生に選ばれてしまう。しかも特権待遇を得る神子候補の秘密の役目は、龍神のお告げを聞くために男に身を任せるというものだった。しかし、そこで常盤に意外な話を聞かされた薔は、秘密と愛憎の渦巻く教団の暗部に足を踏み入れることに……。

本作は2013年発売、レーベルは講談社ホワイトハート。学園ものであり、神の生贄ものであり、世間の常識がら隔離され管理されるディストピアっぽさ、権力と陰謀と愛憎が渦巻く宮廷劇っぽさ、そして許されざる禁断の愛という要素もあり、要素てんこ盛りとはこのことか! という豪華絢爛なシリーズ一作目です。

あまりにも「美味しいところを詰め合わせました」感があからさま過ぎやしないか? というのはホワイトハートの対象読者の年齢層を大幅に超える大人の野暮な意見でありましょう……。この学園、もとい教団で行われていることがあまりにも人間の自由を奪う横暴行為なので、もしかしてSFなのか? と思わなくもないです。

注意点として、不本意な性行為あり。よくない行為だったという認識は示されていますが、不本意な性行為を強いる構造について作品内で十分に批判的な視点が示されているかは疑問が残ります。

余談になりますが、未成年の少女向けラノベにおいて珍しくない設定や描写であっても、これが普通でいいのか? というのは常に検証が必要だと考えています。大事なのはセックスやレイプ描写の有無ではなく、それを「理由があれば仕方ない」「愛があれば許される」といった、現実で不十分な合意形成やレイプを正当化する価値観を強化しないことでしょう。


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