玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだーー言葉と共に眠る #001
鮮烈な取り組みの歌集、だと思います。
こんにちは。綾羽アキです。
やっと「言葉と共に眠る」第1回。
今回取り上げる歌集は『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』著:木下龍也・岡野大祠 です。
タイトルは作中の岡野さんの作品です。
男子高校生ふたりの7日間をふたりの歌人が短歌で描いた物語、217首のミステリー。(帯文より)
まず、装丁がとてもいい。窓にカーテンがかかっていて、窓の外はぼんやりしていて、カーテン越しに柔らかな光が射してくる写真が使われています。これだけでものすごく綺麗なのですが、実は外側のカバーがトレーシングペーパーになっていて。カバーを外すとカーテン越しの景色がはっきり見えるようになるんです。凝ってる!
実際に手に取らないとわからない、紙ならでは、それも紙質を活かした作りなのですよね。うだりと暑い日にカーテンを開けて空をチラリと覗くときの楽しさを本で再現している。
これ実際に手にとってやってみてほしい。
中身なのですが、まず歌集でミステリーをやる、という取り組みがすごく実験的で面白いと思います。木下さんと岡野さんは現代短歌でめちゃくちゃ有名な方なんですが、そのお二人が高校生として7月1日~7月7日まで歌を紡いでいて。
1章に1日が割り振られていて、7章で構成されています。
こんな感じ。
好きな短歌はいっぱいあるのですが、全体から2つ紹介します。
体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと 岡野大祠
閉じた日に君が勝手に住んでいて夏のねむりをずたずたにする 木下龍也
夏の日常の一瞬一瞬、風景や情景、感情を切り取った、瑞々しい短歌の数々が詰め込まれていて、想像したり共感したりして、楽しく読み進められます。一方で少しずつ少しずつ、物語が進んでいく不穏さ、それに伴うワクワク感があり、ページをめくり続けてしまう。
お二人とも、日常でわたしたちが普段見過ごしてしまうような一瞬を切り取って31音に落とし込んでくる方で、1つ1つの歌をじっくり味わう楽しさもあります。お二人の言葉には独自の視点と丁寧さ、そして日常への愛がある。そんなお二人の短歌が1冊にこれでもかと詰め込まれている。そしていろんな楽しみ方ができる。
ミステリー仕立てということもあり話が進むのでとても読みやすいし、お二人の視点や見ている世界の違いも楽しめます。短歌を読まない方にこそ入門としてこの歌集を勧めたい。そして短歌を読んでいる方にも、ミステリー仕立ての歌集という新しい取り組みを楽しんでほしい。
1冊1400円+税。お得か?
いちおうAmazonのページを貼っておきます。
https://www.amazon.co.jp/dp/4904292774/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_IQRaFbS2N6XVQ
現在(7月6日時点)、Amazonでは定価では買えないみたいですね。
大型書店では実際に手に取れるかと思います。hontoなども見てみてね。
ではでは。綾羽アキでした。
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