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毎週木曜日に、わたしの運営するレンタルスペースに出店してくれているまほらば珈琲。

旧知の仲である彼がここに立ってくれている日は休暇だと思っていて、彼もそれでいいと言ってくれている。

なので木曜日は店頭には立たずに2階で休んだり、気が向いたらコーヒースタンドで過ごしたり、でかけたり。

しかし不思議と木曜日はわたしを訪ねる来客が多い。
この日も2階で過ごしていたら、まほらば珈琲から来客ありと連絡が入った。

下に降りると、近所の大学に通う男子大学生がいた。
かつて彼はただの古民家だったこの場所をレンタルスペースにするDIYを手伝ってくれた。
茶の間を興味深そうに眺めて、ここは来るたびに変わってますねえと呟いた。

コーヒーをご馳走するからおいで、とコーヒースタンドの椅子に並んで座った。
久しぶりだね、と言うと、ぼく通うのって苦手なんですよ、ごめんなさいと、困ったように彼の立派な眉毛がひゅんと垂れたのが面白かった。

彼が今日ここに来た理由はわかっていた。
彼の兄からの頼まれ事だろう。

彼の兄は地元の香川県で宿付きの私設図書館を運営している。
本の貸出や返却、寄贈を遠く離れた地でも受け入れ共有、本を媒介にしてひとが回遊する漂流文庫というシステムを彼の兄は開発した。
わたしの店はその連携拠点のひとつ。



わたしの店には彼の兄の施設のパンフレットを置いている。
在庫を切らしてしまったため連絡すると、いま帰省している弟にもたせるよ、と。

そういうわけで、弟である彼がパンフレットを届けてくれたのだ。


ちょうど1年前くらいに、たまたま春休み中で暇で友だちに誘われたからという理由でわたしの店のDIYに来ていた弟から兄の話を聞き、兄や兄の施設と繋がった。

去年の11月は、地域の友だちを香川県に連れて行き兄の施設を貸切宿泊と本のラベリング研修を受けたり、今年の1月には兄と一緒に香川県小豆島の集落のとんど焼きに参加した。


不思議なもので、近所にいる弟と同じくらい香川にいる兄とも交流を持ち、弟以外の共通の知り合いも多い。

コーヒーを飲みながら、わたしの知らなかった兄弟の関係性や家族との関わり方を話してくれた。

夫婦や親子、兄弟の血縁の関わり方は千差万別。
わたし自身、血の繋がらないひとが親代わりになってくれたり、実の親は存命でも関わりは薄かったり、地縁や血縁より関係性を重視している。

ここにいたら根が生えてしまうなあ、そろそろ行きますと言う彼をまたおいでと見送った。

この日はどうも眠気が強く、うつらうつらしていると、近くのNPOで仕事中の友だちが買い出しがてら寄ってくれた。
フルマラソン後に会うのは初めてで、1週間も経っていないのに久しぶりに感じた。
相変わらず時系列が整えられていない記憶の引き出しだなあと会話をしながら思った。

この日会話をしたのはコーヒースタンドで会ったこの3人。
多いか少ないかはひとによるが、普段のわたしと比べると圧倒的に少ない。

そうか今日は休息日か、それなら積極的休養(アクティブレスト)もするかと夕方はジムに行った。

更衣室で着替えていると、となりにいた小学生がわたしの顔を不思議そうにまじまじと覗き込み、「お姉さんは何年生なの?」と聞いてきた。
32年生だよ、と適当に返すと、ふーんと手のひらを自分の頭の高さで水平に動かし身長を比べる仕草をした。彼女の手はわたしのおでこに触れた。
わたしは身長は低いものの幼い顔というわけでもない。
この子のなかで身長が成長を図る物差しなのか。

大人になれば背が高くなるわけではないよ、小さいひとも大きいひともいる。それが個性で、お姉さんは小さい自分も好きだよ、と伝えた。彼女が欲しかった答えかはわからなかったが、そっか、またねと更衣室を出て行った。
またね、か。

彼女のおかげでこの日会話をした人数を4人に更新できた。

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